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● 蒲公英草紙 恩田陸
4087747700蒲公英草紙―常野物語
恩田 陸
集英社 2005-06

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「光の帝国 常野物語」につながる物語。引き出しの家族、春田家が登場します。舞台は、20世紀がはじまったばかりの東北の農村です。

その村には槇村家という名家があり、そこには病弱で寝たきりのお嬢様・聡子様がいます。物語は、聡子様の話し相手としてお屋敷に通う、峰子、という少女によって語られます。槇村家と常野一族の関係が語られ、常野の人々の運命が語られるので、「光の帝国」ファンには必読です。でも、この本の主人公は聡子様であり、物語の中心は、聡子様という清く正しく賢い少女の、短い人生です。だから「光の帝国」を知らない人でも、和製ファンタジーとして楽しめると思います。

後半の盛り上がりがすごいです。まあ、それだけ、前半がだるかった、とも言えるのですが・・・。前半はじっくりしっとり文章を味わうように読み、峰子とともに聡子様を見つめて、後半の怒涛の展開に引き込まれる、というのが、いい読み方だったかな、と、思います。前半で描かれる当時の時代背景や、日本の風景の描写や、物語の長さのわりに多目の登場人物、一人一人の思いを、しっかり脳にきざんでおかないと、後半で感動できないんです。私のように、前半の展開があまりに遅いので斜め読み、というようなことをすると、あとで後悔します。(というわけで、再読しました・・・感動!)

最後の4ページが好きです。美しく正しく生きて、理想を語った人々は、戦争によって命を落とし、もう誰もいない。ここが「現在」であるという視点が、切なさ倍増です。

(ところで、ノーブレス・オブリッジって欧米の発想だと思っていたのですが、この頃の日本の農村に、そんな考え方ってあったのかなあ。大名と家来のような主従関係にあるわけでもない、平民同士の間で。行われていた事は同じでも、思想の原点はちょっと違うような気がするんだけど・・・うまく言えません。)
| あ行(恩田陸) | 04:03 | - | - |
● 小説以外 恩田陸
4103971061小説以外
恩田 陸
新潮社 2005-04-27

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決して楽ではない割にかわりばえしない人生の、私の最大の「逃げ場」は常に読書だった。お上品な事など言ってはいられない。疲れた体を目覚めさせ、現実から力ずくでひき離して別世界に引きずり込んでくれる、それくらい面白い本だけが私の読書。時間はありそうでないのだから、いつもわくわくする本だけを読んでいたいというのが切なる願いである。
まえがきで作者も述べているように「本」「読書」「小説」あたりに、テーマがかたよったエッセイ集。本好きには面白いと思います。私は面白かったです。上に引用した作者の言葉には、共感しつつ、苦笑しましたし。だってちょっと痛いよね、この言葉。

それから。自分が「海外ミステリー」というジャンルにうとすぎる、ということに気がついたので、少し手を出してみようかなあ、と思いました。私は「海外ミステリー」は古典しか読んでいないのです。小学生のときにホームズのシリーズとルパンのシリーズを読んで、あとは、クリスティと、エラリー・クイーンを読んだくらいなんです。恩田さんが紹介してくださっている「海外ミステリー」には、面白そうなものがたくさんありました。
| あ行(恩田陸) | 23:59 | - | - |
● 象と耳鳴り 恩田陸
4396631588象と耳鳴り
恩田 陸
祥伝社 1999-10

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再読。

引退した元判事・関根多佳雄が活躍する、推理短編集です。「六番目の小夜子」の関根秋くんのご家族総出演といった感じです。秋くん本人は、出てきませんが。

ただの推理小説として評価すれば、中途半端、という感想になってしまいます。謎が解けているようで、解けてない。解けたかと思うと、そうじゃないかもしれないと言われる、といった感じで、すっきりさせてはくれないのです。でもこの癖のある後味というか、眩暈のするような感覚が、ファンにはたまらない。そんな短編集です。

その中では、多佳雄の息子・春が活躍する「待合室の冒険」はすっきり感がありました。娘・夏の出てくる「机上の論理」もシニカルで面白かったです。

一番印象的だったのは、「海にゐるのは人魚ではない」。多佳雄がふと耳にした二人の小学生の会話から、ある心中事件の真実を暴くストーリーです。これは中原中也の有名な詩を小道具に使った、上手な描き方で、独特の雰囲気があって、凄惨な事件ですが、よかったです。

「象と耳鳴り」も、短いのに奥の深い小説で、再読なのに、さらに再読してしまいました。

「給水塔」は、いつもの恩田陸さんだなあ、と、ほっとさせてくれた作品。もちろん殺人事件がおこっているので、ほっとするようなストーリーではありませんが。

1人の探偵役が謎を解く短編集であるにもかかわらず、いろんなテイストの推理小説がつまっています。さすが、です。
| あ行(恩田陸) | 17:20 | - | - |
● 夜のピクニック 恩田陸
4103971053夜のピクニック
恩田 陸
新潮社 2004-07-31

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★★★★☆

私は恩田陸さんのファンですし、この作品は本屋さん大賞受賞作品でもありますし、恩田陸作品のあちこちのランキング投票でも上位ですし、面白いのはわかっていました。読むのをずっと楽しみにしていました。

だからこそ、あえて、どこの書評も誰のブログも読まずに感想を書いてみます。

ある高校の「歩行祭」という行事を描いた、青春ロードノベルズです。80キロの距離をただひたすら歩きます。それぞれが、それぞれの思惑を抱えてこの行事に参加し、ちょっとした事件が起こったり、秘密が明らかになったり、誤解が解けて友情が深まったりします。

すごく良かった!期待を裏切らない面白さでした。読後感も爽やかで、素敵な本です。恋愛メインにならなかったところも、私好みでした。それに、小説として完成度も高かったと思う。恩田陸さんの作品にたびたび感じる、尻切れとんぼ感や、大風呂敷たためなかった感がなくて、きちんと仕上がった作品だと思いました。高校生活のたった一晩の行事を描いただけで、彼らの高校3年間を、また主役クラスの二人の人生を描ききったというのはすごい!実力発揮ですねー。

それから、私は主役の一人である貴子さんに、自分の性格が似ている気がして、そのあたりも面白かったです。感じたことが意識の表層に上ってきて、表情に表れるまでに時差があるんだよね。それでよく「やさしい」とか「寛大」とか誤解されるんだけど、実はちゃんと、怒ったり、憎んだりしてるんですよねー…いつも遅いんだけど(笑

気に入らない点をあえてあげるとすれば、杏奈さんはともかく、順弥くんはうざい。本の中で邪魔な存在でした。杏奈さんには、おまじないに何か他の手を使ってほしかったです。なーんて思っているのに、ラストシーンが順弥くんだし…。

でも、この本に、自分の高校生活を重ねられる人って、そんなにたくさんいるのかな?と、ちょっと疑問に思いました。私にとっては、これはテレビドラマのようにリアリティのない、爽やかすぎる、憧れではあっても、ありえない青春です。

地方の、共学の、トップクラスの学力の進学校に通った女性には、自分の事のように感じられるのかもしれない。でも、そうじゃない人にはどうなんだろう?とりあえず単純なところから言うと、高校生の男の子って、こんな感じじゃないよね…。女の子たちにわりとリアリティがあるのに、男の子のキャラクターがみんな「少女漫画に出てくる憧れの先輩」みたいで、なんだかなあ…と思っちゃいました。

それに、この本に出てくる高校生は、みんな経済的な余裕のある家に生まれて、刺激や危険の多い都会で育ったわけでもなくて、基本的に育ちのいい感じがする。みんな勉強ができて、大学を私立にするか国立にするかくらいしか、次の選択肢がない。なんだかんだ言っても「いい子」で、世間知らずで頭でっかち。家庭と学校と、狭い地元の町と、それだけで完結しているような、閉じられた高校生活のイメージを行間から感じました。それは少なくとも、私の高校生活とは、まったく重なりませんでした。

高校生活ってもっとバラバラしてた気がする。恋愛にかける人、バイトを優先する人、スポーツや音楽にかける人、受験生、それに人生投げちゃっている人(笑)と、本当にバラバラ。それでも、とりあえず同じ建物に押し込められた同士、仲良くしたり喧嘩したりはしてて…悪く言えば、すれていたし、良く言えば、大人だった。

あえて重ねるとしたら、中学時代と、大学の文学サークル内、かなあ。中学は公立だったのでみんな受験を意識していて、「その前に思い出を作りたい」という追われるような雰囲気があって、学校行事は大イベントでした。学校行事をどの友達とすごすか、が、大問題だったりもしました。「恋に恋を」してる人もいたし、修学旅行で誰かが告白するらしいなんて噂で盛り上がりました。それこそ、都市伝説だとばかり思っていた、「中絶費用をカンパする」というのが現実になったのも、中学時代です。

大学の文学サークルには、高校時代にトップクラスの進学校にいたような人たちが集まってきていたので、この作品のキャラクター達に、雰囲気がかぶる気がするのも、当然かと。(当然、そこでは、私は浮きまくってましたよ〜っ笑。)

というわけで、個人的な「ノスタルジー」とかはあんまり感じなかったんですけど、恩田さんらしいノスタルジックな雰囲気は好きだった。そして、ストーリーが面白かった。まあ、これだけ不満があるのに、★は1つしか減っていない、というあたりで、どんなに私がこの本を好きか、面白かったかがわかるだろう、というものです。っていうか、この文章の長さでわかりますよね。

遅ればせながら、エンターテイメントとしてはオススメです。
| あ行(恩田陸) | 11:49 | - | - |
■ Q&A 恩田陸
4344006232Q&A
恩田 陸
幻冬舎 2004-06-11

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タイトルから、質問と答えだけで物語が進行する、という形式ばかりに、注目してしまいそうでしたが、よく考えたらそんなに目新しくはないですよね。「多くの人の視点から証言を集めて、真相に近づく」という形式は、「ユージニア」でも使われていましたし、東野圭吾さんの「白夜行」や、宮部みゆきさんの「理由」もそうですよね。

事故の異常さが明らかになっていく前半は、時間を忘れて読みました。あるショッピングモールで、死者69名、負傷者116名という重大死傷事故が起こったというのに、事故原因がさっぱりわからないのです。物語は、事故の数ヶ月後、関係者へのインタビューという形で進んでいきます。一つ一つの証言が粒揃いの短編小説で、手に汗を握りました。すごいです。

こうなれば当然、後半で、事故の真相や、インタビュアーの正体や目的が明かされるんだ!と期待しますよね?ところがそうはならないんですよねー。後半の展開の意外さ、結末のしりきれとんぼ感。まさに恩田陸ワールド。先が読めません。

この後半には、賛否両論あると思います。うーん、ミステリー好きなら確実に否と答えるでしょうね。私も、ちょっと待て、と、思いました。だって、謎が謎を読んで謎だらけなのに、小説は別の次元で終わってしまうんですから…。

でも、その辺りも含めて、とてもリアルな小説なんだと思いました。だから、これはこれで、あり、なんでしょう。私たちは、ショッキングな事故や事件のニュースを聞いて、マスコミに踊らされ一時騒ぐけれど、真実は知らないまま、平気でいる事が多い。よっぽど大きな事件がおこれば、犯人が逮捕されるまで、くらいは興味を持つけれど、その後の長く続く裁判や、その事件が及ぼした大小様々な影響までは、知らないままで暮らしていく。この本は、そういう私たちの現実を、そのまま描いた本でした。そういう意味では恐い本でした。ある意味ホラーです。
| あ行(恩田陸) | 15:55 | - | - |
● ユージニア 恩田陸
404873573Xユージニア
恩田 陸
角川書店 2005-02-03

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ネタバレあり。

まず装丁にひき付けられます。表紙も綺麗ですが、内部のデザインもとても凝っています。違う大きさのページ。様々な角度で、微妙に斜めに印刷された文字列。それが、この本全体に漂う不安感にとても合っていて、どうしても欲しくなってしまう本です。

ある夏に起こった大量毒殺事件。そしてその10年後に出版された、事件に関する「フィクションでもノンフィクションでもない」本の存在。それに関わった人たちが、古い記憶を回想するという形でストーリーは進んでいきます。どうやら誰かのインタビューに答えているようです。その事件の第一発見者となった3人兄妹、生き残ったお手伝いさんの娘、遺書を残して自殺した犯人の友人、事件を担当した刑事。他にも意外な関係者が次々に登場し、それぞれの視点で事件を語ります。みんな「記事になった程度のことしか知らない」と言うのですが、些細な自分だけの記憶を持っています。そこから、時の流れに消し去られつつある、事件の真相が徐々に浮かび上がってきます。

1つの事件を色んな人の視点で描き、真実を浮かび上がらせる、という手法は、昔からあったし、ここ数年、はやっているような気もします。でも、この本ほどたくさんの人の視点を使ったものを、私は初めて読みました。数え方が難しいのですが、たぶん…13人、あるいは14人、だと思います。多いです。よく書き分け、よくまとめたなあと、思います。

事件の中心人物だろうと思われる「盲目の少女」からは、語られるべき事(というか読者が知りたい事)は、結局語られずに終わります。物語に余韻を残す、見事な演出だと思います。百日紅をめぐるトリックに関しては弱すぎる、としか言いようがないのですが、そんなことは欠点でもなんでもないですね。

すごく面白かったです。夏になったらもう一度読みます。
| あ行(恩田陸) | 21:22 | - | - |
● 黄昏の百合の骨 恩田陸
4062123320黄昏の百合の骨
恩田 陸
講談社 2004-03

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『三月は深き紅の淵を』『麦の海に沈む果実』『図書室の海』、それから『殺人鬼の放課後ミステリ・アンソロジー2』の中の「水晶の夜、翡翠の朝」にリンクしている作品です。(他の作品にもリンクしているかもしれません。)これらの作品をすでに読んだ人には、ぜひオススメです。特に、『麦の海に沈む果実』が好きな人は絶対に読まないと。続編ですから。

最近多作だったわりに、わたし的にはイマイチ、な感じだった恩田陸作品ですが、久しぶりにこれは好きでした。まずタイトルが好き。装丁も素敵。今回は図書館で借りて読んだのですが、ハードカバーで買っちゃおうかなあ。

主人公は『麦の海に沈む果実』の理瀬です。中学生の頃より賢く、現実的に、そしてよりブラックになっています。美人で物静かで頭が良くて生まれついての悪女。でもまだ高校生で「憧れの従兄弟」や「気になる男の子」がいたりする。とても、魅力的な主人公です。理瀬のキャラクターといい、ストーリーといい、タイトルといい、道具立てといい、「アンニュイ」という言葉がピッタリです。

理瀬が「魔女の家」と噂される洋館に、祖母の遺言に従ってやってくるところから物語は始まります。遺言は「自分が死んでも、理瀬が半年以上住まない限り、家は処分してはならない」というものです。この家にはそれぞれいわくのありそうな、理瀬の二人の叔母が住んでおり、祖母の一周忌には、理瀬の従兄弟である稔と亘もやってきます(「図書室の海」の稔と亘です)。

理瀬が、2人の叔母や同級生の朋子と繰り広げる、女同士の心理戦。祖母の残した奇妙な遺言の意味や、百合の匂いのたえない洋館に残されたジュピターという言葉の謎。行方不明の少年と愚かで残酷な少女の恋物語。見所は満載です。

この本を単独で読むと、いくらかとまどう部分もあるとは思います。何人かの人間の言動が意味不明だったり、思わせぶりに登場する「理瀬の父」や「ヨハン」という人物(「殺人鬼の放課後」に出てくる)について何の説明もなかったり、日本の田舎町で起きているはずの事件に、なぜかヨーロッパの巨大組織などが出てきてしまったりするので。でも、とりあえず、この本単独でも、ミステリー&ホラーとしてしっかり完成していました。それに、シリーズとしてはまだまだ続きそうです。

恩田陸さんの作品に関して、私はよく、大風呂敷広げすぎてたためなかった感じ、と偉そうに批評するのですが、(実はこの本に関してもそう思っていますが)こんな風にいくつかの作品がリンクしたり、続編が書かれたりして、いつか綺麗に収束するのかもしれません。私はその日を待ってしまうと思います。恩田陸さんの「大風呂敷」は、それだけ魅力的ですし、それを収束させるだけの力がある作家さんだとも思っていますから。



そういえば『三月は深き紅の淵を』と『黒と茶の幻想』もリンクしてるんだよね。短編集はあっちこっちでリンクしまくって、もう何が何やら。私が好きな作家さんには、そういう方が多いようです。思いついたことをどこかで全部説明したいという欲求にかられるのか、自分のキャラクターを全部同じ世界で遊ばせたいのか。新井素子さんもそうだし、茅田砂湖さんもそうだし、榎木洋子さんもそうですね。ファンに色んな楽しみを提供してくれるという点では嬉しいのですが、そのせいで一つ一つの作品の完成度が下がってしまう時には悲しくなります。少なくともこの『黄昏の百合の骨』は、大丈夫な感じ・・・と、思いました。
| あ行(恩田陸) | 18:41 | - | - |
▲ 禁じられた楽園 恩田陸 
4198618461禁じられた楽園
恩田 陸
徳間書店 2004-04-21

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恩田陸さんは、好きな作家の一人で、特に彼女の想像力、紙の上に無から世界を作り出す能力には、いつも感動するのですが、この本は・・・少し、期待はずれでした。一部、律子たちがインスタレーションを乗り越えていく描写のあたりに、恩田陸さんらしさが出ていて、その部分は手に汗を握ってドキドキしながら読んだのですが。読み終えてみると、その部分に多くのページを割いたことが、小説全体からすると無駄になっている、というか逆に悪く作用している気がする。悲しいです。

この作品は、最近のジャパニーズホラー映画の下手な真似としか思えない、と・・・と、言ってしまったら言いすぎでしょうか。10年前にこの本が出ていたら、違う良い感想を持ったかもしれません。でも、今読むと、色んな映画を切りばりしたみたいな本だなあという印象を受けてしまいます。残念。
| あ行(恩田陸) | 02:00 | - | - |
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