2013.08.16 Friday
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ミラージュの罠―クラッシュ・ブレイズ (C・NOVELSファンタジア) 茅田 砂胡 中央公論新社 2007-07 |
「きみはいったい何なんだ?」慣れているように見えた。銃の扱いも、暴力も、あの異様な状況にも。少年はダグラスを見つめて微笑した。「賭けをしようか。この連中の仲間がまたダグラスを誘拐しにやって来る」心底ぞっとした。悪夢がやっと終わったのに、すかさず次の悪夢を強引に見せられている。そんな気分がする。「だったらなおさら警察に…!」「保護を求める?却下。それだと、また狙われるっていう賭けが成立しなくなる」開いた口がふさがらない。それが仮にも誘拐されそうになった被害者に言う台詞か。リィのことを「モンドリアン」と呼ぶ少年は何者かに狙われていた。しかもその奇妙な事件はまだ終わっていない。むしろここからが始まりだった。
ランナーあさの あつこ 幻冬舎 2007-06 |
長距離走者として将来を嘱望された高校一年生の加納碧李は、複雑な境遇の妹を案じ、陸上部を退部することを決意した。だがそれは、たった一度レースに負けただけで走ることが恐怖となってしまった自分への言い訳だった。走ることから、逃げた。逃げたままでは前に進めない。碧李は、再びスタートラインを目指そうとする―。(帯より)帯の内容紹介はもちろん間違ってないんだけど、どちらかというと、ランナーとしての碧李の物語より、兄として、また、息子としての碧李の物語のほうが、分量も多いし、インパクトも強かったです。陸上競技にはあまり深く踏み込んでいないので、そちらに期待してしまうと物足りなさを感じるかも。でも、碧李のあせりや苛立ちや無力感が、すごく伝わってくるので、王道の青春小説として、いい小説を読んだなあ、と、思います。帯に書かれているように「バッテリーを超えた」かどうかはわかりませんが、短い中にあさのあつこさんらしさがギュッとつまった一冊でした。あさのさんの本の中では、読みやすかったし、好きなほうです。