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■ チーム・バチスタの栄光 海堂尊
チーム・バチスタの栄光チーム・バチスタの栄光
海堂 尊

宝島社 2006-01

東城大学医学部付属病院では、心臓移植の代替手術であるバチスタ手術の専門チーム「チーム・バチスタ」を作り、次々に成功を収めていた。ところが今、三例続けて術中死が発生している。しかも次は、海外からのゲリラ少年兵士が患者ということもあり、マスコミの注目を集めている。そこで内部調査の役目を押し付けられたのが、神経内科教室の万年講師で、不定愁訴外来責任者・田口と、厚生労働省の変人役人・白鳥だった……。


新人さんとは思えないくらい読みやすい文章で、専門用語の多い医療サスペンスなのに、さらさらと読めてしまいました。面白かったです。

特に、キャラクターが魅力的でした。前半での探偵役であり語り手である田口先生は、欲のない、面倒くさがりの、淡々とした人物で、彼の心の言葉には何度もクスッと笑わさせてもらいました。パッシブ・フェーズ、つまり受動的なアプローチ、要するにひたすら関係者から話を聞くだけの田口先生なのですが、心の中では色々と突っ込みを入れてるんですよね。それが面白かったです。逆に、先制攻撃を仕掛けることで、相手の口を開かせる、アクティブ・フェーズで真相をさぐる白鳥との対照が面白かったです。いくら有能であっても、白鳥のように無神経で遠慮のない人が身近にいたら、絶対精神衛生上良くないと思うのですが、小説の主人公としてはなかなか魅力的でした。なんか、彼の言葉にいちいちスッキリしました。

まあ、メインの探偵役である白鳥が、途中から唐突に登場するのがなんとも不自然な気がしましたけど。でもそれは、この作品の欠点というよりは、私が田口先生に好感を持ってしまったから、主役を横取りされたような気がして嫌だった、という個人的な感情かもしれませんねー。
| か行(海堂尊) | 17:50 | - | - |
■ 逃避行 篠田節子
逃避行逃避行
篠田 節子

光文社 2003-12-15

50を過ぎるまでずっと、毎日毎日主婦として、家族のために働いてきた。でも、夫はいつも冷たく、娘たちは邪険。妙子にとって唯一心を通わせることのできる、信じられる存在は、愛犬のポポ。

そのポポが、隣の家の子供にいたずらをされ、反撃した結果その子を噛み殺してしまう。マスコミからのバッシング、ポポを処分しようとする家族、妙子はポポと共に逃避行を始める…。


妙子が住み着くことになった家の、前の住人であった老女のエピソードが印象的でした。見事な畑を作って、最後まで自立して生き抜いた彼女は、けして哀れではないと私も思いました。誰にでもできる事ではない、立派な生き方だと思いました。そして、そういう見方をできるようになった妙子も、素敵だと思いました。

家族とか、人生とか、ペットと人間の関係とか、色んな事を考えさせられる本でしたが、逃避行を通して妙子は「生きる」という事の本質に迫っていったような気がします。自給自足に近い生活をし、野生に返っていくポポを見ながら、彼女は「生きている」と、肌で感じ始めたんだと思います。だからこそ、あのエンディングがとても悲しいです。主婦でもなく、夫も娘も犬も持たない私ですが、どっぷりはまって主人公目線で読んでしまったため、
主人公の夫と娘の薄情さに腹が立って腹が立って、悔しくてしかたないです。もちろん夫や娘にも自分の言い分というのはあるのでしょうね。だからこそ、それがまた切ない。本当に切ない本でした。
| さ行(篠田節子) | 17:49 | - | - |
ヘヴンリー・ブルー 村山由佳
ヘヴンリー・ブルー 「天使の卵」アナザーストーリーヘヴンリー・ブルー 「天使の卵」アナザーストーリー
村山 由佳

集英社 2006-08-25

「天使の卵」映画化記念ということで出版された、アナザーストーリー。うん、映画化記念でね、という事でそういうのもありなんじゃないでしょうか、という一冊でした。個人的には、「天使の卵」と「天使の梯子」で十二分に満足していたので、この記念品は蛇足という気がどうしてもしてしまうのですが、この本はこの本で、いい本でした。「天使の卵」を読んだ時は、ただただ可哀そうな立場だった夏姫ちゃんの、そうではない部分がさらにさらに描かれていて、ああ、時がたったんだなあ、と、感無量でした。(わたしは多感な少女時代(笑)に「天使の卵」をリアルタイムくらいで読んだのでね。)
| ま行(村山由佳) | 17:39 | - | - |
■ 千年の黙(しじま) 異本源氏物語 森谷明子
千年の黙―異本源氏物語千年の黙―異本源氏物語
森谷 明子

東京創元社 2003-10

帝ご寵愛の猫、『源氏物語』幻の巻「かかやく日の宮」――ふたつの消失事件に紫式部が挑む。平安の世に生きる女性たち、そして彼女たちを取り巻く謎とその解決を鮮やかに描き上げた、大型新人による傑作王朝推理絵巻!
源氏物語をモチーフにした小説って、けっこうあるんですよね。ミステリーだけに絞っても、けっこうある。ライトノベルにだけに絞ってもけっこうあるし、少女小説だけに絞っても、たくさんあるんです。だけど

わたし世代にとっては、やはり、マンガ「あさきゆめみし」を超えるものではない、と、あらかじめ言っておいてからの感想になってしまうのですが…

うん、この小説は、けっこうよかったよ。

大作だったよ。力作だったよ。読み応えがあったよ。完成度の点から欠点を探そうとすれば、けなすこともできるけれど、そんな事をするのが野暮なくらいの、魅力のある小説だったよ!オススメ!
| ま行(森谷明子) | 12:15 | - | - |
★ リレキショ 中村航
リレキショリレキショ
中村 航

河出書房新社 2002-12

「弟と暮らすのが夢だったの」という姉さんに拾われて、彼女の弟となった19歳の「僕」の物語。

美人の姉さん、その親友の山崎さん、「僕」にラブレターをくれる浪人生。他の登場人物の過去は語られるのに、主人公である「僕」の過去が語られることは最後までないし、誰もそこにつっこみません。「僕」はまっさらな状態から、新しい生活を作りあげていき、特に困ることもありません。普通なら絶対にありえないそんな人生を、ただただ優しく描いたこの物語は、たしかに現代のおとぎ話というのがぴったりです。色んな意味でファンタジーです。

でも、本当は「僕」が背負っているのであろう過去が、小説全体に影を落としているような気がして、どこか寂しく、切ない本でもあります。この絶妙に微妙で曖昧で複雑な感じ(・・・何のこっちゃ)は、かなり好きです。

うーん、良かった!
| な行(その他の作家) | 13:50 | - | - |
■ 夜市 恒川光太郎
夜市夜市
恒川 光太郎

角川書店 2005-10-26

ホラーには興味がなくて、基本的には読まないんですけど、この小説は良かったです。伝統的というか、古典的な物語を、素敵に膨らませてくれていて、不覚にも感動してしまいました。ラストが哀しかったです・・・。
| た行(その他の作家) | 13:42 | - | - |
Φは壊れたね  森博嗣
Φは壊れたねΦは壊れたね
森 博嗣

講談社 2004-09-10

おもちゃ箱のように過剰に装飾されたマンションの一室に芸大生の宙吊り死体が!現場は密室状態。死体発見の一部始終は、室内に仕掛けられたビデオで録画されていた。タイトルは『φは壊れたね』。西之園萌絵が学生たちと事件の謎を追究する。森ミステリィ、新シリーズいよいよ開幕。
主要キャラクターが個性的で、彼らの絶妙というか微妙な会話が楽しく、すらすらと読みやすい小説。とことん謎解き重視で、見事なまでにいさぎよく「動機」の部分を切り捨てた推理小説。いつもの森ミステリィでした。いわゆる「人間が描けていない」ってやつで、小説好きには物足りない部分も多々あるとはいえ、これはこれで、謎解きがビシッと決まれば気持ちが良くて、私は好きなのですが・・・。この本に関しては、ビシッと決まったっていう感じはしませんでした。もちろん整合性はあるのですが、ああそうですか、って感じで・・・。

登場人物も、昔からのキャラクターと、新シリーズのキャラクターと、おそらくは1度かぎりの登場となるであろうゲストキャラクターが入り乱れ、つかみきれないまま終ってしまいました。正直、この小説は、単独ではあまり面白くありませんでした。

でも、森さんの本はシリーズ全体が終ってみないと面白さがわからないらしいので、シリーズ1冊目のこの本も、あとから考えれば面白いところがたくさんあるのかもしれませんね。ちらっとですが、萌絵ちゃんと犀川先生も出てきましたし、S&Mシリーズが好きな私は、続きを読まずにはいられません。

でも、森作品を初めて読む方には、この本はオススメできませんねー。ぜひ、S&Mシリーズを最初からどうぞ!って感じです。
| ま行(森博嗣) | 13:25 | - | - |
■ ねじの回転 恩田陸
ねじの回転―FEBRUARY MOMENTねじの回転―FEBRUARY MOMENT
恩田 陸

集英社 2002-12

処刑されたはずの二・二六事件の首謀者が、もう一度同じ時間をなぞって、事件を「再生」し「確定」しているシーンから物語は始まります。「再生」しなければならない史実と大きく異なる事態が発生すると、「不一致」が宣告され、時は止まり、戻り、「一致」するまで「再生」がくりかえされるのです。二・二六事件の顛末と、自分たちに待ち受けている悲劇を知っている3人の軍人は、なんとか少しでも違う結果を出したいとチャンスを狙っています。

時間遡行技術を手に入れた人類は、過去の忌まわしい歴史を改竄することができるようになりました。しかし、二・二六事件に介入した国連職員たちがしようとしているのは、改竄ではなく「確定」。誰がどんな意図で何をおこなっているのかわからない、すべてが曖昧なまま、物語は着々と進んでいきます。

王道のタイムトラベル小説の定石をきちんと踏まえた基本的なストーリーがありつつ、その上で、予想外の展開が次々から次におこる、本当に面白い小説です。この手のSF小説には必ずある、科学的な説明の部分(読んでもわからないので、私はたいてい読みとばす部分・・・)を、読みやすい造語で童話的に描いてしまっているのも、読みやすくて、上手い!と、思いました。

そして、それなのに、この小説は「硬派」なんですよね。そこがまた、いい感じなんです。この手の小説にありがちな、運命の恋人と時の流れにさえ逆らって結ばれて大感動とか、愛する人に待ち受ける辛い運命を止められなくて涙々とか、そういうエピソードはなしです。そのかわりに、二・二六事件に関わった軍人たちが、日本という国の将来とか、たくさんの部下の命を預かっている自分の指名とか、そういう真面目なことを考えている。未来からきた国連職員たちも、滅亡の危機にある人類を救いたいと、そればかり考えている。ちょっと古風で、クールで、かっこいい・・・「硬派」という言葉がぴったりの小説だと思います。私は好きです。

以前読んだときも、次に読むときは二・二六事件に関する詳しい知識を仕入れてからにしよう、と、思った記憶があるのですが、思うだけで・・・。またそれをしないままに、この本を再読してしまいました。それでも十分面白かったけど、二・二六事件をよく知っている人が読むと、もっと面白いんだと思います。次こそは!
| あ行(恩田陸) | 13:39 | - | - |
▲ つばき、時跳び 梶尾真治
つばき、時跳びつばき、時跳び
梶尾 真治

平凡社 2006-10-19

主人公は新人の時代小説作家、井納惇。新作は幕末の熊本を舞台に、長岡監物とその幼馴染の物語を描くつもりでいます。その取材もかねて井納は、祖父母の残した熊本郊外の「百椿庵」に移り住みます。「百椿庵」には昔から、女にしか見えない幽霊がいる、という噂がありました。

この幽霊が実は、幕末に実在したつばきという名の女性で、井納はタイムトラベルしてきたつばきと恋に落ち、次は井納が幕末にとんで愛をはぐくみ、そして・・・というタイムトラベル・ラブ・ロマンス。

ああ、またか。という感想に、どうしてもなってしまいます。タイトルからして「梶尾さんのいつものやつ」ということはわかっていたし、その、いつものやつが、私は好きなのですが、やっぱり新鮮味がないなあと、思ってしまいました。タイムトラベル小説としては、細かいディティールまで定番どおりで、どこかで読んだような本でした。たとえ、いつものやつであっても、味付けの部分に読み応えがあれば、新鮮味があって楽しめたと思うんですけどちょっと薄かったです。

そして2人のロマンスは、十分な長さがあるにもかかわらず、なぜかエピソードが少なくて、描写が足りない感じがしました。ふたりがここまで強く愛し合うようになっていく感情の動きが、ちっともつたわってこないので、2人の驚きにも、喜びにも、時の流れという強い障害に引き離される苦しみにも、あんまり感情移入できませんでした。

それに、幕末という時代も、熊本という土地も、長岡監物という歴史上の人物も、物語の中で役割が少なくてもったいないです。もっと時代考証をしっかりして、そういった部分でも楽しめる本であれば良かったのに、と、思います。ロマンス重視にしたために、こうなったのだとは思いますが・・・。

というわけで、全体的になんとなく物足りない印象の本でした。私にとっては、可もなく付加もなく、といったところです。タイムトラベル小説を、今までにあまり読んでいない人は、楽しめると思います。後味が良いので、オススメできます。
| か行(梶尾真治) | 13:21 | - | - |
■ ちゃれんじ? 東野圭吾
ちゃれんじ?ちゃれんじ?
東野 圭吾

実業之日本社 2004-05

東野圭吾さんが、スノーボードにちゃれんじし、はまって熱く燃えている、情熱的なエッセイ集。わたしは、中学生からスキーをやっていたんだけど、最低限の技術を身につけ、一緒にいった仲間に大きな迷惑をかけないで楽しめるようになるまでに、何年もかかったほどの運動音痴です。スキー場の冷たい空気が好きで、雪山の景色が好きで、スキーのあとの温泉が好きで、でもスキー自体がそんなに好きかどうか、というと、微妙、でした。

だからわたしが20代のころに、スキー人口と、スノーボード人口は逆転したようだったけれど、スノーボードにチャレンジする気力などすっかりなくしていました。だってそもそも運動は苦手な上に、いい年だし〜、スキーだって上手いとは口が裂けても言えないし〜、身の程知らずにもスノボーなんかに手を出したら、大怪我をして、将来後悔するに違いない!と思ったのです。

でも、東野さんは私よりもっと年上になってからスノボーを初め、練習に練習を重ねて、人に教えることができるまでに熟達してるんです。すごい!それ以外にも、「病院」だと思ってジムに通い続ける、という、私を含めて多くの人がなしえない偉業をなしとげていらっしゃいます。すごい!私も、健康のために見習わなくちゃ!

1番印象的だったのは、カーリングを体験して、大怪我を負ってしまった時の文章。誰に責任転嫁するわけでもなく、立派な大人っぽい対応をしていて、スポーツを愛する気持ちが伝わってきて、好感度大です。ますますファンになっちゃいます。
| は行(東野圭吾) | 03:37 | - | - |
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