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■ 破裂 久坂部羊
破裂破裂
久坂部 羊

幻冬舎 2004-11
医者は、
三人殺して初めて、
一人前になる。
帯より。

日本では、患者が未熟な研修医の練習台にならざるを得ず、たくさんの医療ミスが闇に葬られている。新聞記者である松野は、そんな「痛恨の症例」についてのノンフィクションの執筆を思いつきます。大学病院に勤務する若き麻酔科医、江崎は、そんな松野の取材に協力することにし、妨害に合い迷いながらも、証言を集めていました。

そんな折、江崎の勤務する大学で、事件は起きます。エリート外科医、香村が、手術時の医療ミスで患者を死なせてしまったのです。香村は次期教授候補であり、教授選を前に、このミスを隠そうとやっきになります。しかし、夫の死に疑問を持った、亡くなった患者の妻、枝利子は、江崎と松野の協力を得て、大学病院と、香村を相手に医療裁判を起こすことにしました。

たくさんの壁が立ちはだかる、松野のノンフィクションはどうなるのか?枝利子の起こした裁判の行方は?

という、ストーリーの小説かと思いきや、それだけではありませんでした。この本にはもっと奥行きと広がりがあります。江崎も、香村も、関係する医師は、厚生労働省のマキャベリと言われている、佐久間という官僚に監視され操られていました。佐久間は、日本の超高齢化対策として、子供を減らすのではなく、老人を減らせばいい、と、考えていました。要するに、死にたい老人は死なせてやればいいという思想を持っているのです。佐久間は、そのために、香村を利用しようとします。

佐久間は人脈を増やし、地位を手にし、世論を操り、ハードを整え、着実に計画をすすめていきます。彼は日本を変えられるのでしょうか?

・・・という感じで、かなり複雑なストーリーでした。長さの割りに主要登場人物も多く、テンポ良くどんどん事件が起きて、飽きない。目新しさはないものの、楽しく読めました。現役の医師の方が、副業として書かれたとは思えないほど、文章も読みやすかったです。

ただ、問題提起小説として読むなら・・・。

新人医師の研修制度問題。麻酔医にかかるストレスの問題。大学病院内の出世争いと派閥対立などが、患者の不利益になる、いわゆる「白い巨塔」問題。組織ぐるみの医療情報の隠蔽の問題。患者側が裁判で医療ミスを証明するのがいかに難しいかという事。寝たきり老人の介護問題と、安楽死の善悪。超高齢化社会対策。etc。

たくさんの問題を詰め込みすぎて、頭がパンクしそうになって、何もじっくり考えられなかったのが残念です。医療ミス関係で1冊、ぴんぴんぽっくり関係で1冊、そんな風に分けたほうがよかったと思います。
| か行(久坂部羊) | 23:35 | - | - |
▲ 土の中の子供 中村文則
土の中の子供土の中の子供
中村 文則

新潮社 2005-07-26

うーん。やっぱり私は、芥川賞とは相性が悪いのかもしれません。中村文則さんの「悪意の手記」という本を先日読んで、とても良かったので、「土の中の子供」も手にとって見たのですが・・・。

前半、幼児虐待のトラウマに現在も苦しむ主人公が、社会からも、過去からも、どうしようもない自分からも、ただただ逃げているように見えました。過去はともかく今は、戦ってない、立ち向かってない、見つめてすらいない。虐待された経験などない私が、こんなことを言うのはおこがましいのですが、主人公の甘さに反発を覚えてしまって・・・そのまま最後まで共感できませんでした。

彼は、死産の経験から不感症になったという、こちらもトラウマを抱えた女性と同棲としているのですが、彼女との関係においても、彼の甘えばかりが目立ちます。なんというか・・・彼が、彼女の人間性や感情を重要視せず、一緒に暮しているのにひたすら自分の不幸に集中している感じで、2人の関係が読んでいて不愉快でした。不可解でもありました。小説中での彼女の役割も、よく分かりませんでした。

それなのに、なんとなくいい感じのラストなのも・・・なんか、よくわからなかった・・・。そう、結局私は、よくわからなかったのでした(笑)。

ただ、負の方向へのものすごい迫力は感じました。他の本も読んでみようと思います。
| な行(中村文則) | 13:27 | - | - |
▲ 愛を海に還して 小手毬るい
愛を海に還して愛を海に還して
小手鞠 るい

河出書房新社 2006-06-13

ワタルという、魂の片割れのように心底愛している相手がいるのに、早瀬という別の男性にもひかれてしまう・・・そんな、なずな、という作家志望の女性の物語です。

まあ、ここでしつこく私は言っているのですが、不倫の小説は嫌いです。でも、この本には、ラストの一捻りのあまりの切なさにやられてしまって・・・。なかなか、素敵な本だった、と、思ってしまいました。

なずなの、本当ならいたはずの双子の妹のエピソード。それから、なずなの友人が共感覚を持っているというエピソード。この2つは、わたしにとってはとても印象的だったのですが、この小説の中では、ほとんど役割らしい役割がなくて、残念でした。
| か行(小手毬るい) | 12:57 | - | - |
▲ クローズド・ノート 雫井脩介
クローズド・ノートクローズド・ノート
雫井 脩介

角川書店 2006-01-31

雫井脩介さんということで、かなり終盤に入るまで、ミステリーだと思って読んでいたので、まっとうな純愛小説でびっくりでした。

このブログに、携帯連載小説が登場するのは、たぶん初めてですよね。読んでなかったわけじゃないんですけど・・・まあ、ここにはアップしてないっていうことで、そういう感じだったんです。今までは。

でもこの本を読んで、ああ、携帯連載小説も、ずっと年下の若者のためだけのものだと、馬鹿にはできないなあ、って思いました。

うん。けっこういいお話だった。

それにしては低い、この▲という評価はなんなのかと言いますと(^_^;)、かなり早い段階で展開が簡単に読めてしまうところで1点、主人公、香恵の恋のお相手、石飛さんの人間像がきちんと浮かび上がってこなかったところで1点、ストレートな純愛小説のブームはもう去ってしまったというか、個人的に飽きがきているということで1点、という風に減点していったら、こうなってしまいました。でも、本当に、いいお話だったんですよ。ええ。

前半、モチーフとして万年筆とマンドリンがしつこく出てきます。私は個人的に、文房具フェチでバイオリン弾きなので許容範囲でしたが、文房具やクラシック音楽に特に愛着がない人にとっては退屈だったんじゃないのかな?前半は、冗長で退屈な印象がありました。

でも、後半になってからは、がぜん面白くなります。どちらかというと地味な大学生、香恵が、バイト先の文房具屋さんで話すようになった 石飛さんに片想いをするラブストーリー。最終的には、もう1人の主役とも言える、伊吹という女性を交えた三角関係に発展するのですが、まったくドロドロ感がなく、爽やかです。このあたりのいきさつや、タイトルにもなっている「クローズド・ノート」についてのストーリーもとっても素敵なのですが、何を書いてもネタバレなので書きません。それに・・・あちこちのブログにここいらのあらすじは載ってるしねー(^_^;)

私が印象に残ったのは、この文章です。
私は自分のラブストーリーを彼に語ってこなかったという事だ。
私が隆の気持ちを分からないように、隆も私の気持ちは分からないのだ。
私は自分で考えているよりもずっと自分の気持ちを押し隠して生きているのかもしれない。
私はもっと前向きになって、自分のラブストーリーを少しずつ、魅力的に彼に伝えていくことが大切だという事。
自分のラブストーリーを、魅力的に語るって、私には逆立ちするより難しく感じます。でも、呼吸をするように簡単に、それができる人のことも知っているので、ちょっと、勉強させてもらおうかなあと思ったりします。
| さ行(その他の作家) | 10:10 | - | - |
● 夏の災厄 篠田節子(ウイルスパニック2006夏)
夏の災厄夏の災厄
篠田 節子

文藝春秋 1998-06

昨日、日本テレビのドラマコンプレックスで、篠田節子さんの「夏の災厄」がドラマ化されました。

東京郊外のある市で、日本脳炎によく似た伝染病が発生するという事件がおこります。前線で必死に戦う診療所の医師や看護婦たち、感染防止と原因究明に奔走する保健所の人々、保身のために情報を公開しようとしない大学病院、責任逃れのために対応が後手後手になる行政、そして恐怖におののく市民たち、といった事件に関わる人々の一人一人を丁寧に描いた群像劇です。一時はやったアウトブレイクもののパニック映画のようですが、映像的なインパクト重視の、直接的な恐怖をあおるようなものではなく、地味でリアルで、恐い一冊。まさに、日本の夏的なじめっとした恐さ(笑)

ドラマは、タイトルが「ウィルスパニック2006夏」と変えられていましたが、かなり、原作に忠実な内容で、よかったです。原作に負けないくらいリアルで、恐かった。鳥肌。ひさびさに、りょうさんの素敵な演技が見られたのも嬉しかったです。

でもやっぱり、ドラマより、原作がすごいです!ドラマはやはり時間の制約があるので、描ききれていない部分がありますからね。得体の知れない恐怖、かかわった人間一人一人の人間ドラマ、スリリングで丁寧な謎解き。ドラマを見た人にも、原作を読んでもらいたい!

私は篠田節子作品を、「夏の災厄」の前にも何冊か読んでいて、好きでした。でも、その気持ちをさらにアップさせてしまったというか、その気持ちが一線を超えてしまった(笑)のが、この「夏の災厄」という本でした。私の中で、篠田節子は、この作品で殿堂入りしたんです。

他の本に比べて、特にこの本が好き、というわけではないのですが、他の作品のように、女性の本音やドロドロの人間関係も描けて、そしてこんな日本の危機管理に問題を提起するような社会派サスペンスもしっかり描けるなんて、すごい作家さんじゃないか!って思ったんですよね。人間の悪意や嫉妬も、善意や正義も、両方リアルに描けるなんてすごい。この先生は本物だ、って思いました。本物の実力と意欲のある作家で、追いかけ続けてもきっと、がっかりさせられることはないって、感じました。「夏の災厄」は、わたしにとってそんな作品です。大好きな篠田作品の中でも、特別な1冊です。

「夏の災厄」、今の季節には、特にオススメです。
| さ行(篠田節子) | 10:02 | - | - |
■ 地に埋もれて あさのあつこ
地に埋もれて地に埋もれて
あさの あつこ

講談社 2006-03

意識を取り戻すと、自分は土の中にいて、心中していっしょに死んだはずの恋人が、自分の体の上にさらに土をかけている。

そんな、これは辛すぎるぞ・・・!という状況から始まる本書。この状況から、主人公優枝を助けるべく、「透明な旅路と」の白兎くんが、再び登場します。「透明な旅路と」にくらべると、「地に埋もれて」のほうが、物語の展開としてわかりやすく、ミステリー的な謎も、オカルト的な謎もはっきりあって、オチもついて、ずーっと面白かったです。主人公の心情も、過不足なく説明されていて、無理なく共感できたのでよかったです。もしまだ続くシリーズなのだとしたら、やっと方向性が見えてきた、という感じです。

私は、死後にも残る魂、というものを信じていないので、この本の根本的な前提条件に、どうしてもはまれなくて、恐くもなく、あまり感動もなく、読み終ってしまいました。でも、藤の描写の美しさとか、優枝の家族の物語とか、読みどころはたくさんありました。

確率的には子供より、たいてい親は先に死んでしまうから、子供は親が生きているうちに、どんなにひどい親のことでも許したほうがいいよね。自分の幸福と心の平安のためにね。
| あ行(あさのあつこ) | 11:47 | - | - |
■ 続・嫌われ松子の一生 ゴールデンタイム 山田宗樹
ゴールデンタイム―続・嫌われ松子の一生ゴールデンタイム―続・嫌われ松子の一生
山田 宗樹

幻冬舎 2006-05

あの「嫌われ松子の一生」から4年。今作は、あの時、松子の人生をたどった松子の甥・笙と、当時の笙の彼女・明日香の、現在進行形の青春小説になっています。基本的に明るくて、前向きです。爽やかです。気持ちがいいです。

「嫌われ松子の一生」の続編である、という感じは、ほとんど漂ってきません。営業的にはともかく、小説としては、その部分は必要なかったんじゃないかと思えるくらいです。もちろん、松子の人生について知ったことが、笙の人生観に与えた影響は大きかったと思うので、まったく関係なくはないんですけど。でも、この本の冒頭の4年後の段階では、笙は松子の人生を知ったことから得たことを、自分の中で消化しきれていません。だから松子についての記述が出てくると、そこだけちょっと浮いていました。

さて。笙は大学を卒業しましたが、就職活動に失敗。下北沢を中心に、フリーター生活を送っています。そんな中で出会った、演劇に人生をかける人々との交流が、彼を変えて行きます。笙が演劇を志し、1ヶ月という短い期間ではありますが、特訓を受けるシーンは面白かったです。少女趣味に走っていない分、「ガラスの仮面」より「チョコレート・コスモス」より面白かった。この部分だけ別の小説として1冊書いてほしいくらいでした。

あと3ヶ月という寿命を宣告されながらも、治療を拒否し、自分らしい人生を貫こうとする、ミックという人物との出会いを通して、彼が学んだことは大きいようです。ミックも、松子さん同様、彼の人生観を大きく変える1人になるのでしょうね。またミックの元奥さんの姿を通して、松子に対する理解を深めることが出来たりもしたようです。笙はずいぶん成長しましたね。

明日香のほうは、医師への夢を捨てきれず、大学を中退。九州の医大に入りなおして夢を追いかける毎日です。笙ともわかれて、現在は、ある地方の大病院の御曹司と交際中。明日香には、笙とは違い、自分の未来に対する夢、明確なビジョンがあるので、それが、御曹司との恋愛・結婚という人生と、折り合っていけるのかどうか、というのが見所です。明日香は、実に素敵な女性に描かれています。

ここからは、読了後の人にしかわからない感想文ですが・・・。この御曹司くん、悪い人ではないんですよね。でも、「理由がわからない。」この彼のこの言葉で、私は彼に見切りをつけました。この御曹司くん、やっぱりダメ男だわ!理由、簡単じゃん!これ以上ないくらい、わかりやすいじゃん!明日香の選択、大正解!

ちょっと残念だったことは・・・。最後のほうで、笙と明日香が再会するのですが、その部分を、私は、無意識に予想をたてながら読んでいたようなんです。「こうだったら嫌だなあ」パターンと、「こうだったらいいなあ」パターンの2種類。そうしたら、「こうだったら嫌だなあ」パターンにドンピシャ。けっこう細かいセリフまで、あててしまいました。しょぼーん。

たとえば数年後とかに、「こうだったらいいなあ」パターンの再会が、2人にあることを祈ります。
| や行(山田宗樹) | 22:47 | - | - |
■ ぼくのメジャースプーン 辻村深月
ぼくのメジャースプーンぼくのメジャースプーン
辻村 深月

講談社 2006-04-07

「ぼく」は小学校4年生。人を殺すことさえ出来る、強い「声」の超能力を持っているが、小さいころに母親に使うことを禁止されていらい、それを使わず、それについても深く考えないで生活してきた。

「ぼく」には大事なおさななじみのふみちゃんがいる。ふみちゃんは、学校のうさぎを可愛がっていて、うさぎたちの世話をすることより楽しいことはない、というくらいだ。しかし、ある日、うさぎたちが、惨殺されるという事件が起き、それを目撃したふみちゃんは、学校に来ることも、言葉をしゃべることも出来なくなってしまう。「ぼく」は、最初、自分の力をつかって、ふみちゃんの元気を取り戻そうとしたけれど、それができないことがわかって、結局、その力を、犯人に対する復讐に使うことにする。

ここまでのストーリーが、全体の4分の1くらいかなあ。そしてそのあとずーっと、ひたすら、この小説は「ぼく」と、ぼくのお母さんの知り合いで「ぼく」と同じ力を持った、「先生」とのディスカッション小説になります。200ページ以上えんえんと、罪と、罰と、反省と、償いと、責任と、そして能力の使い方に関する、超真面目な、子供らしくないディスカッション。

そうして、「ぼく」が最終的に下した、決断とは・・・?

子供が主役の超能力小説なのに、超能力を使うことについてここまで深く考えさせている小説って、それだけでめずらしいよね。力のあるものには責任があるということから、子供を全然逃げさせない。最後の決断に向けて、とことん追い詰める。

中でも、「ぼく」が加害者に復讐をしようとしているのは、うさぎのためでも、ふみちゃんのためでもなく、自分のためである、ということを認めさせられるくだりは秀逸。そして、「ぼく」自身もPTSD患者である、という点をはずさなかったのも、それと対になる、はずせないシーンでした。全体的に、心理劇としてすばらしかったです!

でもやっぱり、心理劇部分は、小説のバランスとしては長すぎ、かな。どうしてもテンポが悪くなってしまって、中だるみをおこしてはいました。終盤の展開はかなりよくて、私は好きだったので、終盤をもう少し延ばせばバランスがとれたかなあ、と、思います。あと、「子供たちは夜と遊ぶ」とのリンクが、けっこう意義あるリンクで、かなり嬉しい感じでした。

ああ、でも、辻村さん、とうとうミステリーではなくなってしまいましたね・・・。まあ、このひとの人物の描き方は、YAかジュヴナイルだろ、とは思っていたけど。でも、もうしばらく、ミステリーをやっていたほうがいい小説を書くと思ってたんだけどなあ。だって、この人からミステリーのかせをはずしてしまったら、自己愛の肥大した若者がひたすらウジウジと悩んでグルグルするだけの小説になってしまうじゃないか!

・・・と、思っていたら、やっぱりそうなってしまいましたね。今回は、主人公が子供という事と、「先生」というディスカッションの相手が存在したおかげで、それなりに読めるレベルだった(と、私は思いました)けど、このグルグル路線で辻村さんがどこまでいけるかは、微妙だと思う。グルグル路線はね、そこから卒業した人が書いてこそ、いい小説になりうるんだと思うから。

私は今でもまだ、辻村さんのファンです。辻村さんの成長に期待しています。まだまだ過渡期が続いている作家さん。次作、どっちに転ぶんだろう。ドキドキ。
| た行(辻村深月) | 08:22 | - | - |
■ Sweet Blue Age
Sweet Blue AgeSweet Blue Age
有川 浩 角田 光代 坂木 司

角川書店 2006-02-21

アンソロジーはめったに読まないのですが、今回のお目当ては、「クジラの彼」有川浩 でした。

○ クジラの彼 有川浩
あの「冬原」が普通に恋愛している、という時点で、すでに私は悶絶(笑)。ほとんど同人誌を読んでいる気分でした。

でも、それはそれとして、この小説はいい!乙女心にストライク!この遠距離恋愛は切ないねえ・・・。切ない切ない。むかーしむかーし、わからない人はわからなくていいくらい昔、JRのCMで牧瀬里穂が遠距離恋愛のCMをやっていたんですけど、あれ、あの感じ。

□ ホテルジューシー 坂木司
このお話は、癒し系でよかったなあ。背伸びをしない、主役の女の子が好きでした。そういえば坂木さんの本を、最近読んでない。読もう。

| アンソロジー | 20:44 | - | - |
■ 幸福ロケット 山本幸久
幸福ロケット幸福ロケット
山本 幸久

ポプラ社 2005-11

よかったですねー。感動できました。

下町に住む小学生、コーモリと香な子の、小さな恋の物語。イマどきっぽくない、素直で子供らしい子供たちが出てきて、泣いたり笑ったり頑張ったりする、大人のための癒し本です。

山本幸久さんらしく、文章が上手くて読みやすい。主人公香な子の、心の声には何度もくすっと笑わせてもらいました。まあ、山本幸久さんの今までの作品に比べると、「怒涛の面白さ」っていうかんじではないし、展開ものんびりしていて、なんだかだれてるなあ、という感じはしないでもないです。無駄で邪魔なエピソードが多かったり、踏み込みが足りなかったりもする。たとえば、最後の最後に町野さんが登場したのは邪魔だった。それに、香な子にはやっぱり、「私立は無理」という過酷な未来があったほうが、物語的には面白かったと思う。

でもやっぱり、よかった!ラストうるうるだったもの。コーモリ、苦労しまくるのは目に見えてるから、かっこいい男性になるでしょう。香な子も努力して、綺麗な女性になって欲しいなあ。でも、2人がまた出会って恋に落ちるなんて事は、たぶんないんだよね。初恋ってそういうものだから。

なかなかに、切ない本でした。

それから、私は鎌倉先生が好きだ!元モデルだという美人で、ジャガーに乗った、生徒思いのいい先生なんですけどね。セリフの一つ一つが最高。一番好きだったシーンを引用しておきます。
コーモリは・・・香な子をじっと見てから「おまえ、男だったらよかったのに」といった。
「どういうこと?」
「そしたらおれら親友になれたのに」
「男と女でも親友になれますよね、先生?」コーモリのお母さんは鎌倉先生に同意を求めた。でも先生ははっきりとこういった。
「あたしの経験上、ありえませんね」
コーモリのお母さんをはじめ、香な子もコーモリも先生の断定した物言いに、目をパチパチとさせるだけだった。
鎌倉先生、あなたはこれまでいったいどんな経験を積まれてきたんです?香な子は心の中で叫んだ。
そして、おっ、アカコとヒトミだ。


「幸福ロケット」出版記念 山本幸久インタビュー
http://www.poplarbeech.com/danwa/danwa_060123.html
| や行(山本幸久) | 18:53 | - | - |
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