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■ 春を嫌いになった理由 誉田哲也
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春を嫌いになった理由(わけ)
誉田 哲也
幻冬舎 2005-01

by G-Tools , 2006/04/30





フリーターの瑞希は、テレビ番組のプロデューサーである叔母の織江から、霊能者・エステラの通訳を押し付けられます。エステラは霊視を行い、スタッフはエステラの霊視どおりに白骨死体を発見します。霊能力を毛嫌いしている瑞希はエステラを信じられず、すべてがやらせなのではないか?と疑いながら、生放送の本番に臨みます。その生放送の最中に、エステラが「殺人犯がここにくる」という予言を行って、そして・・・

という瑞希の物語と並行して、日本で働くために密入国する、中国の奥地出身の兄妹の物語が描かれます。様々な困難を乗り越え、想像していたよりずっと暮らしづらい日本で、助け合って働く姿には胸を打たれます。

2つの物語が結びついたとき、すべての謎が明らかになります。なかなかこった構成で面白かったです。でも、ラストはちょっと急ぎすぎたかな?なんだか、ばたばたとたたまれてしまって、ちょっともったいなかったです。

この本は、そういう謎解き本であるだけでなく、瑞希のトラウマ克服本でもあります。彼女が霊能力というものを毛嫌いするのは、あるトラウマがあるからなのです。彼女はエステラの言葉をきっかけに、そのトラウマを卒業することができそうです。それはいいのですが、瑞希にはそっちじゃなくて別の方面で、もうちょっと成長してもらいたかった気がします。色んな意味で考えが甘く、子供っぽい人なんですよね。そして考えが甘いまま、叔母のコネで通訳の仕事につけてしまったわけで・・・最後まで、なんだか好きにはなれない主人公でした。中国人の不法労働者たちのほうが、ずっと魅力的でした。
| は行(その他の作家) | 08:59 | - | - |
■ ガール 奥田英朗
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ガール
奥田 英朗
講談社 2006-01-21

by G-Tools , 2006/04/29





30代の働く女性の心境を描いた短編集。作者が男性なのに、女性に対する夢も理想も妄想も入ってなくて、感じが良かったです。女性の本音をちゃんと描いてくれていて、登場人物の「心の中の声」には何度も共感してしまいました。著者が女性に向ける視線が、温かくて、優しくて、感じのいい本でした。

それに、作者が男性であるせいか、このテーマでは“やりすぎ”になりがちなドロドロ感がなくて、爽やかでした。まあ、ドロドロ感を捨てて爽やかにした分、リアルなストーリーにはなってないとは思います。すべての短編が、それなりにハッピーエンドですからね・・・。世の中こんなに甘くないぞ!という感じです。それに、現実の女性は、こんなにプライベートな狭い世界の事ばかり考えているわけじゃないよね。仕事の事だって、世界の事だって、それなりに考えているんだぞ!

でもまあ、女性による同じテーマのリアルなドロドロ本は、供給過剰ってほどたくさん出版されているので、このリアルじゃなさが貴重な気がします。この本のような爽快で、痛快で、元気が出る、癒し系の物語も、たまには欲しいなあ、と、思います。めったに本を読まない女友達にも、オススメしたくなる1冊。

○ ヒロくん

課長職につくことになった聖子の悩み。部下の1人である、年上の男性社員が彼女に反抗します。理由は単に、「女の指示なんて聞けるか」という事。「女房とホステスと部下しか女を知らない男」って、いるよなあ。うんうん。はいて捨てるほどいる。あいつと、あいつと、あいつ、本当に捨てたい(笑)。

自分より下の立場の女としか、っていうか自分を上にたててくれるような女としか、コミュニケーションがとれない。この1点だけをとっても、社会人としても人間としても、致命的な欠陥だと思うんですけど、本人にも社会にも、それが間違っているという認識はないんだよね。むしろ、たててやらない女が生意気である、というのが「社会の常識」。まことに腹だたしいです。

こういう男は、えてして、上下関係にとても執着があるようで、相手が男であっても、序列をつけたがりますよね。同期とは競争心をむき出しにする。上司にはへつらい、部下には威張る。対等な人間関係を結ぶって事を知らないんでしょうね。定年後に、自分に友達がいないことに気がつくタイプ。ああ、かわいそう!

○ マンション

マンションを買おう、と考え始めたことで、今まで見えなかった様々な事に気がつく、ゆかりの物語。ゆかりのファースト・プライオリティーには、ものすごく共感できました。でも、社会でこれを貫くのは本当に難しいよね!それでも、ほかの生き方はできないゆかりは、ものすごくかっこいいけど、ちょっと不器用で、可愛らしい女性だと思います。この本で、1番好きだった主人公です。

□ ガール

男性はずっとスーツを着ていればいいけれど、女性は選ぶ楽しみがある分、職場での服装が難しい。TPOと自分に似合うかどうかということ、それをおさえるだけだって大変なのに。流行に乗りすぎても、遅れても顰蹙をかう。年齢によっては着られない服、というのは暗黙のルールとしてあったりする。書店に行くと、20代向けのファッション誌は、25歳、27歳、28歳、30歳、などなど、実に細かく細分化されていてびっくりします。

こんな格好したいけど、年を考えると痛いかな・・・と、考えちゃうことよくあります。何年か前には確かに似合ったはずの服が、いつの間にか似合わなくなった、なんて経験は、女性なら誰でもあるのではないでしょうか。ファッションにはあまり興味がなく、その方面では「ガール」であったことのない私でも、この物語にはかなり共感できたので、きっとたくさんの女性の共感を呼ぶ作品だろうな、と思いました。

△ ワーキング・マザー

えーと。ワーキング・マザーに対して、会社ってこんなに優しいんでしょうか?伝家の宝刀になるの?孝子、職場に恵まれすぎ!と、思うのは私だけ?

△ ひと回り

12歳年下のかっこいい後輩の指導係を命じられた容子の物語。この話は、ちょっと面白おかしく描きすぎたかなあ、って感じ。いくらなんでも、ここまで妄想する女性はめったにいないんじゃないかな・・・。いたら、あまりに、痛いよ。
| あ行(奥田英朗) | 11:25 | - | - |
■ 四季 春 森博嗣
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四季 春
森 博嗣
講談社 2003-09

by G-Tools , 2006/04/28





「すべてがFになる」の天才科学者、真賀田四季を描いたこのシリーズ。「春」では、彼女の8歳までの少女時代を「僕」という謎の透明人間の視点でつづっています。

S&Mシリーズとも、Vシリーズとも、色んなところでつながって、この世界がグングン広がっていく感じが、すっごく楽しかったです。うわっ!この人は!とか、ん?この人はもしや・・・とか、そんなリンクがたくさんありあました。まだまだ謎は残っているので、「夏」「秋」「冬」を早く読みたいです。それに本当は、「すべてはFになる」から、全部再読したいなあ。そんな時間はいくらなんでもないけど・・・。

四季というキャラクターは、私、もともと嫌いです。知性でできることの限界は、とても浅いところにある、と、思っているからです。どんなに知性に恵まれたって、それだけで「神のような天才」などというものにはなり得ないはずです。だから四季が、世界のすべてを見下し、利用するような態度をとっているのを見るのは、不愉快です。

そもそも、小説には作家というものがいて、作家が想像しうる世界が、登場人物の能力の限界なのですから、どんな天才も神とは程遠い存在。「すべてを一瞬にして理解し、把握し、思考する才能」と言ってみたところで、その「すべて」って結局は、作家が「すべて」だと思っているもの、っていう事ですもんね。なんて狭い範囲の「すべて」なんでしょう。作家がその天才に自分を投影し、「俺って天才」というアピールを行間ににじませていたりすると、不愉快5割増しです。

でも、真賀田四季が登場すると、森さんの本は面白くなるんですよねー。だから私も、四季なんて嫌いだよと思いながらも、四季シリーズは気になってしょうがありません。嫌い嫌いも好きのうち、と申しますし、これは恋かもしれません。(違うか。)
| ま行(森博嗣) | 15:13 | - | - |
■ インディゴの夜 チョコレートビースト 加藤実秋
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インディゴの夜 チョコレートビースト
加藤 実秋
東京創元社 2006-04-11

by G-Tools , 2006/04/27





デビュー作である「インディゴの夜」がとても面白かった、加藤実秋さんの第2作。渋谷のクラブみたいなハコで、DJみたいな男の子たちが接客してくれるホストラブ「club indigo」。歌舞伎町や六本木の王道系ホストクラブとは、一味違う個性的なホストたちが集まっています。オーナーでありライターの晶が、ホストたちの手を借りて、様々な事件を解決するミステリィ短編集。期待を裏切らない面白さで、よかったです。

☆ 返報者
△ マイノリティ/マジョリティ
□ チョコレートビースト
○ 真夜中のダーリン

短編一つ一つのできで言えば、1作目よりずっと面白くなっていると思います。「返報者」ではホスト連続襲撃事件の謎を解くのですが、明らかになった犯人の気持ちを思うと、実にやるせない気がしました。「チョコレートビースト」では、若者のタトゥー文化が取り上げられていて、興味深かったし、ラストシーンではクスッと笑ってしまいました。「真夜中のダーリン」の主役、吉田吉男(もちろん源氏名です)の幸せを、私は願ってやみません。

ただ、レギュラーのキャラがあんまりたっていないように感じたんですよね。個性的なキャラクターが揃っているのに、生きていないというか・・・。それぞれの短編に登場する、ゲスト的な新キャラのことはちゃんと描いてあるのですが、1作目ではあんなに魅力的だった、レギュラーメンバーがイマイチ。1作目では、晶さん、かっこいい!って思ったのになあ。今回は、主役ではあったけど目立たなかったなあ。晶さん以外の、塩谷、ジョン太、犬マン、DJ本気、アレックス、などレギュラーメンバーの事も、もっともっと知りたいです。

というわけっで、マンネリを警戒しつつも、続編を期待しています。せめて、吉田吉男のその後だけでも知りたいです。
| か行(その他の作家) | 21:04 | - | - |
暗い日曜日 朔立木
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暗い日曜日
朔 立木
角川書店 2006-02

by G-Tools , 2006/04/26





ネタバレ警報!

ストーリー自体は、面白くなかったわけではありません。殺人事件の真相は、早い段階でわかってしまいますが、それでも面白かったです。関係者それぞれの複雑な思いが、きちんと描いてあるなあって思いました。それに主役の弁護士、リンメイ先生も、真面目で誠実ないい人キャラで、ステレオタイプではありますが、嫌いではありませんでした。

横山秀夫さんの「半落ち」を思い出しました。罪を犯したのは自分だと言いはる、容疑者の高潔な人間的魅力に、周囲の人が感じ入り、彼が犯人とは思えず、真相は他にあると信じてそれを知りたがる・・・というストーリーが似ていますよね。

でも、この本の場合、著者が魅力的に描こうとし、リンメイ先生が友情を感じるその容疑者に、私は全然魅力を感じられませんでした。全部自業自得じゃん、何人もの人を不幸にして、今さらいい人ぶってんじゃないよ、と、思ってしまいました。

だってすべての原因は、彼の不倫と優柔不断にあるんです。不倫がはじまってしまったことに関しては、百歩ゆずって許せるとしても、その後が実にいただけない。不倫相手は彼のために離婚し、子供まで生んで、彼にも離婚して欲しいと言っている。不倫はスキャンダルとして報道されてしまい、妻にも、相手の夫にも、幼い息子にもバレバレで、みんなが苦しんでいる。そんな中ですべてをうやむやにしたまま、15年も不倫を続けるなんて、もう同情の余地がありません。

「妻には悪いところはないので、離婚は言い出せない」とか「朝帰りはしても泊まってはこない事で、妻への誠意を示しているつもりだった」とか、考えている事がいちいち腹だたしい自己満足男です。

事件が起きて愛人が亡くなった後は、自分の過ちや思い違いに気づいて、つぐなおうとしているように見える彼ですが・・・。そして、そんな彼にリンメイ先生はひかれるわけですが・・・。

全財産を妻に譲って、息子の罪を肩代わりして、それで何かのつぐないになると思っているあたりが、余計にいただけない。つぐないたいのならまず、妻にはきちんと会って話をするべき。息子ともちゃんと向き合って、真実を明らかにするべき。この期におよんで、まだ逃げるか!って感じでした。

こんな男を、魅力的、と感じる主人公には、全然共感できません。読めば読むほど、なんか釈然としない本でした。
| さ行(朔立木) | 23:06 | - | - |
▲ 好きよ 柴田よしき
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好きよ
柴田 よしき
双葉社 2002-08

by G-Tools , 2006/04/25




董子の同僚だった愛果は、「好きよ」というたった一言を遺書に自殺しました。2年後、董子は愛果のものとしか思えない指紋が、FAXについているのを発見。その後、董子の身の回りには不可解な出来事が頻発するようになります。愛果の突然の自殺の理由は何だったのか?誰が、誰の事を好きだったのか?

恋愛よりのミステリィだな、と思って読みすすめていたら、だんだん様子が違ってきます。

瀬戸内海の孤島、真湯島には、恐ろしい怪物の伝説が伝えられており、シャーマン的な存在の女系家族が、その怪物を封じてきました。董子はその一族の末裔であり、真湯島にいる祖母が寝込んだことから、島の人々が彼女を探しはじめるのです。これは伝奇小説?怪奇ホラー?SF?ジャンル分けをするのは、不可能な作品でした。柴田よしきテイストが色々つまっていて、ものすごーく読み応えがあります。

愛果の短い人生と、彼女の思いは、胸に迫るものがありました。悲しいなあ。

ただ・・・。ミステリィだと思って読んでいたら、ホラーやファンタジーやSFとして処理されてしまった、というのは、苦手なパターンだったりします。それなら何でもありなんじゃん!と、思ってしまうので。
| さ行(柴田よしき) | 14:14 | - | - |
■ 赤緑黒白 森博嗣
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赤緑黒白―Red Green Black and White
森 博嗣
講談社 2005-11

by G-Tools , 2006/04/25





鮮やかな赤に塗装された死体が、深夜マンションの駐車場で発見された。死んでいた男は、赤井。彼の恋人だったという女性が「犯人が誰かは、わかっている。それを証明して欲しい」と保呂草に依頼する。そして発生した第二の事件では、死者は緑色に塗られていた。シリーズ完結編にして、新たなる始動を告げる傑作。

「BOOK」データベースより
シリーズのラストにやっとたどり着いたというのに、全然そんな余韻を味わっている気分じゃないな。心は「四季」シリーズへ飛んでいます。反則だよ〜!いや、ミステリーとしてフェアじゃないとかそういうことではなくて。出た〜!って感じでしょうか。ラストでそれが出ちゃったら、もう、何も言えない・・・。ひたすら、次が読みたい!というだけで、頭の中はいっぱい。

もう〜。商魂たくましいんだから・・・(^_^;)。
| ま行(森博嗣) | 00:46 | - | - |
▲ ウインクで乾杯 東野圭吾
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ウインクで乾杯
東野 圭吾
祥伝社 1992-05

by G-Tools , 2006/04/23

シンプルな、密室殺人事件です。時代を感じます。バブルだ!

東野さんの作品には、上昇志向の強い女性が多く出てきますが、その上昇志向というのは、たいてい「お金持ちになること」、それだけで、とてつもなくシンプル。

この本の主人公・コンパニオンの香子もその典型で、いつか高価な宝石を買える日を夢見て、玉の輿を目指し努力しています。東野さんの描く強い女性の中では、知性が感じられない珍しいタイプだけど、明るくて、甘え上手で、ちゃっかりしてて、好感の持てる女性です。昔は、こんな風に無邪気で可愛い女性も描いていたのね・・・。

香子の仲間のコンパニオンが、密室で殺害されたところから、物語が始まります。

するとすぐ、香子のマンションの隣の部屋に、担当刑事が引っ越してきて、香子に情報を流してくれるようになります。香子が以前から玉の輿、と、目をつけていた相手も、どうやら事件関係者らしく、何かと接触してきます。ご都合主義すぎ!ありえない!

でもまあ、軽くて、さらっと読める、楽しい本でした。電車の中で読むにはぴったり。
| は行(東野圭吾) | 00:28 | - | - |
■ 朽ちる散る落ちる 森博嗣
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朽ちる散る落ちる―Rot off and Drop away
森 博嗣
講談社 2005-07

by G-Tools , 2006/04/23





宇宙密室&地下密室の殺人事件。理系テイストで、会話文のテンポが良くて、地の文は詩的で、他の作品とリンクしているのが楽しい。森博嗣テイスト全開でした。
| ま行(森博嗣) | 21:27 | - | - |
▲ 陽の子雨の子 豊島ミホ
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陽の子雨の子
豊島 ミホ
講談社 2006-03-28

by G-Tools , 2006/04/22





24歳の雪枝は祖母の遺産を相続し、働かなくていい程度にはお金持ち。4年前に、15歳だった家出中の聡を拾い、それ以来2人で暮してきました。ある日雪枝が、私立の男子中学に通う夕陽という少年を家に招待するところから、物語は始まります。その日雪枝は、聡を後ろ手に縛り、押入れの中に閉じ込めました―。

青春の悩める感じや、揺れる感じは、よく出ていたんじゃないかなあ、と、思います。でも、結局、何の話だったんだ・・・。私は、よくわからなかったぞ。

夕陽のひと夏の思春期小説としては、よく出来ていたのかもしれませんが、夕陽という中学生の存在が、なんだかリアルじゃなくて・・・。男子中学生、というより、大人びた少女のような描かれ方でした。お姉さまが、夕陽に萌える小説?いや、違うよなあ。

雪枝と聡のほうの物語は、もっと何だったんだかわからなくて・・・。結局、2人の恋愛小説だったんでしょうか?2人の絆が深まった、ああ、めでたしめでたし、という物語だったのかなあ。これからも、2人は2人だけの世界で、雪枝は短歌を作って、聡はそれを見守って、そういう生活を続けるのでしょうか?

雪枝はともかく、聡の人生は本当にそれでいいのでしょうか?と、思ってしまうのは、私がおばちゃんだからでしょうか?なんだか、明るい未来を予感させるような雰囲気の結末でしたが、雰囲気だけで、実がないような・・・。

豊島ミホさんに初チャレンジ!でした。もう1冊くらい読んでみないと、好きとも嫌いともなんとも言えない感じ。もう1冊読んでみるとしたら、何がいいでしょうか?
| た行(豊島ミホ) | 13:41 | - | - |
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