CATEGORIES
LINKS
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
■ 氷壁 井上靖 
4101063109氷壁
井上 靖
新潮社 1963-11

by G-Tools

再読。

奥穂高の難所に挑んだ小坂乙彦の滑落死。パートナーだった魚津恭太は、小阪の技術を信頼しており、滑落の原因は、ザイルが切れた事だと考えています。しかし、その最新のザイルは「切れるはずがない」との見解が出されており、小坂が自殺したのではないか、あるいは、魚津がザイルを切ったのではないか、など、様々な憶測が魚津の周りを飛び交い、彼を苦しめます。

生き残った魚津と、小坂の恋人であった人妻・美那子、美那子の夫・八代、魚津を慕う小坂の妹・かおるの恋愛模様、それから小坂と魚津の友情、この2つを描いています。冒険小説でもミステリーでもなく、人間模様を描いた文学でした。ドラマを見ている人のためにネタバレはしません。

初版が、昭和三十八年発行、ということで、時代設定は古いです。登山の技術などに関しては、私にはわからない範囲なので、古さは気になりませんでしたが、女性の描写がすごく古く感じました。登場する美那子という女性は、登場する男性みんなに愛される役なのですが、内に情熱を秘めているものの、言葉が丁寧で、夫に従順で、家をしっかり守って、奥ゆかしくて。こんな女性もいたんだなあ、って感じです。美那子よりは若くて、積極的で行動的な役のかおるにしても、やはり、ひかえめで真面目で、やまとなでしこ、って感じです。

男性のほうは、小坂と魚津の固い友情など、最近出版された真保裕一さんの山岳小説「灰色の北壁」とあまり印象が変わりませんでした。(現実の男の友情の事はわかりませんが・・・)。八代や、小坂の上司の、家では偉そうでわがままなところ、部下の事をけっこう思っていて、でも説教が長いところなども、現代でも多いよなあ、こういう男、という印象。

この数十年で一番変わったのは、女性なのかもしれません。

NHKが現在、玉木宏&山本太郎でドラマ化しています。はまって見ています。美那子=鶴田真由という配役は、この原作を読むと、ますますぴったりだなあ・・・と、思いました。

ドラマ版と、小説版は、大筋もディティールも全然違います。まるっきり別物として楽しむことができます。両方とも、良質だと思います。
| あ行(その他の作家) | 17:19 | - | - |
■ 上高地の切り裂きジャック 島田荘司 
4061824570上高地の切り裂きジャック
島田 荘司
講談社 2005-11

by G-Tools

2作収録の中編集。

・上高地の切り裂きジャック
撮影を終え、横浜へ帰ったはずの女優が、撮影のまだ続く上高地の林の中で、死体となって発見されます。腹を切り裂かれ、内臓を取り出され、そこに石をつめられた無残な姿で。関係者にはすべて、アリバイがありました・・・。

・山手の幽霊
封印された地下シェルターから、餓死した男の死体が発見されます。彼はどこからシェルターに入り、なぜ死ななければならなかったのか?シェルターが封印された後も、外で目撃されていた男の姿は、幽霊か?これが2作目。

さすが島田荘司。技あり!って感じで、ミステリアスというか、猟奇というか、尋常でない事件の演出はビシッと決まっています。特に、2作目の「山手の幽霊」のほうは、とても島田荘司らしい作品だという気がしました。

でも島田さんにしては軽いです。読みやすいし、こういう本から、新しいファンも獲得して欲しいと思いますが・・・ちょっと物足りないなあ、と、思ってしまいました。普通の本格推理でした。どうしても島田さんには、普通以上を期待してしまって、申し訳ない感じです。十分、面白かったんですけど。

表題作の、蛆虫の大きさから死後経過時間がわかるっていうネタは、2時間ドラマの「法医学教室の事件簿」でも見たし、他の小説でも見たことがある(と思う)。あんまり想像したくない映像なんだけどなあ。
| さ行(その他の作家) | 11:45 | - | - |
▲ フェティッシュ 西澤保彦 
4087753530フェティッシュ
西澤 保彦
集英社 2005-10

by G-Tools

これはものに狂う人と
人を狂わせる物の
愛の物語なのである。
ほんとだよ
これが帯のあおりです。ほんとですか(笑)?

あんまりだったら読むのをやめよう、と、覚悟して読み始めた割には、エグくもグロくもありませんでした。でもまあ、そっち方面から感想を書けば、わかりたくない世界だなあ、いう感じです。愛というより、やっぱり病気だよー。一般的に「俺って○○フェチなんだ」「私って○○フェチ」なんていうのとは、レベルが違うんだもの。ある意味、みなさん、幸せそうではありましたが。

構成は、面白かったです。連続殺人事件を、複数の「フェティッシュ」な人々の視点で追っていきます。きちんと、目次や章タイトルが工夫されていて、わかりづらさはありません。事件の陰に見え隠れする、謎の美少年「クルミ」の秘密。彼に運命を狂わされる、たくさんの「フェティッシュ」な人々の末路。そして、次第に明らかになる連続殺人事件の全貌。

一番、西澤さんらしいなあ、と思ったのは、「クルミ」の特異体質や、超自然的な魅力に関して、謎解きがない事です。現象としては説明されるけど、理由も理屈も、なし。つけようと思えば、理屈をつけられないことはないと思うんですけど・・・。それをしないところが西澤さんですね。この作品では、「クルミ」の存在が、西澤世界のルールであって、説明の必要はないんでしょう。

だからこの本は、ミステリーじゃなくて、サイコホラー。人にオススメはできませんが、私なりに楽しめる部分はありました。
| な行(その他の作家) | 16:13 | - | - |
■ 私という運命について 白石一文
4048736078私という運命について
白石 一文
角川書店 2005-04-26

by G-Tools

人は、ほんとうにみずからの意志で自分の人生を選び取ることができるのだろうか―。恋愛、仕事、結婚、出産、家族、死・・・大手企業に勤務するキャリア女性の29歳から40歳までの10年を、社会的な出来事を交えて描いています。

「運命」の不可思議とその意味が、繰り返し問いかけられます。「運命」については、私はアンチ運命論者なので、失笑ものの描写が多かったんですが、「人生」については、考えさせられる事が、たくさんある本でした。四つの章で構成されているのですが、それぞれに小道具として出てくる「手紙」が興味深く、先を読もうという気になります。
選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもないのです。未来など何一つ決まってはいません。
運命というのは、たとえ瞬時に察知したとしても受け入れるだけでは足りず、めぐり合ったそれを我が手に掴み取り、必死の思いで守り通してこそ初めて自らのものとなるのだ。
前半部分は、どこにでもいそうな独身OLの心情を描いています。「運命」という響きから想像するような、ドラマティックな展開はありません。恋愛や仕事に、何かを求めたり、何かを諦めたり、結婚に踏み切れなかったり、・・・本当にどこにでもあるような物語です。

働く女性の考え方も、気持ちも、行動も、びっくりするほどリアルなのに、「共感してください」オーラをまったく感じなくて、読みやすかったです。恋愛に対する姿勢や、恋人に対する心情も、男の人が書いたとは思えないくらい、上手い。というよりは、著者が男性(しかも大人)だからこそ、上手いのかもしれません。客観的で、抑えるところが抑えられた文章だったから、読みやすかったんだと思います。

著者の持論というか、いまどきの若者に対する苛立ちのような主張には、共感できる部分もありました。純平や、亜紀や、達哉に対してするお説教の中に、そして、康のセリフや、四つの手紙の中に。正論だと思うし、私も賛成です、と、言えます。

さて。後半に入ると、いきなり展開がドラマティックになってきます。朝の連続テレビ小説か、昼メロ的な波乱万丈です。そして、前半の上手さが嘘のように、この小説、腹立たしくなってくるんです。
男は否応なしに男同士の競争を強いられるが、女は女同士で争うこともないし、また男と争う必要もない。男と女はパートナーにはなり得ても、本来ライバルにはなり得ない。要するに女性はいかなる競争からも自立していられるのだ。そこが女性の最大の強みなのではなかろうか。
こんな文章は、女を敵に回すよねー。わかっていて書いたなら、勇気ある!

それに、主役の亜紀ですが、男性に好まれるタイプの、都合のいい女性に変わっていきます。っていうか、キャラクター設定的には、もともとそうだったんでしょうね。でも前半は「理性が勝ってしまって、恋にのめりこめない女」という側面が強調されていたので、目立ちませんでした。後半になって「運命」を掴んでから、「男に都合のいい女」の部分がどんどん目立ってきます。

美人で、スタイルが良くて、料理が上手で、貯金もしっかりしていて、バリバリ仕事をする才能もある。けれど恋人に頼まれたり、彼が病気になったりすれば、お金も仕事も生活も、すべてを捨てて彼を支える。愛する人の子供を産んで育てて、次の世代へ繋げていくことが、私の最大の幸せだ。

これが、後半の亜紀です。ここまで理想的ではなくても、こういう考えの女性もいるとは思います。でも、出てくる脇役の女性が、みんな結婚して子供を生む事が幸せだと亜紀に力説し、最後に亜紀もこの「運命」にたどりつくのですから、著者の頭の中、古いっ!と、思わずにはいられません。

それに後半に入ってすぐ、ラストまでのだいたいの展開が読めてしまうのもどうかと・・・。長い小説で、あと200ページはあるのに。

誉めてるんだか、けなしてるんだか、わからない感想文になってしまいましたが・・・。この本の私の評価は、全体として高いです。文章も構成も綺麗にまとまってて、読みやすいし、読み応えもある本でした。

でも、好きじゃない。
| さ行(その他の作家) | 22:05 | - | - |
● おまかせハウスの人々 菅浩江 
4062131498おまかせハウスの人々
菅 浩江
講談社 2005-11

by G-Tools

「せつなさの名手」とも評されている菅浩江さん。私は大好きで、もっと人気があってもいいと思うのですが、あまり知名度は高くないようです・・・。SFが苦手な方でも、日常の謎系ミステリーなどを読まれる方には、受け入れられる世界ではないかと思うのですが・・・。傾向的には、松尾由美さんに近いな、と、私は思っています。

・純也の事例
さすが、菅浩江、という感じの感動作。期間限定のモニターになって、人間の子供のようにロボットを育てる・・・つまり、ロボットに人間らしさを教える仕事についた夕香。感情が乏しく、表情も殆ど変化しない純也に、夕香は母親として愛情を注ぎ続けます。いずれ、別れが来ることがわかっているので、その愛情がとても切ないです。純也もその名前の通り、純粋で、有香をひたすら信じて、有香から学ぼうとしています。2人の間にいつしか生まれたものは・・・。

実は、子育てに悩む、現在のお母さんの話と、心情的に変わるところはなく、リアルです。

・ナノマシン・ソリチュード
人間の身体の中に入り込み、医療行為を行う、極小の機械が使われるようになりました。そして、自分のために、目に見えないところで、必死で働いてくれるこのナノマシンに、孤独を癒されている人々がいました・・・。

他のストーリーのテーマが「家族」であるのに対し、この作品のテーマは「孤独」かもしれません。この物語の登場人物も、「孤独」に悩む現代人そのもので、新しいテクノロジーをディティールに使っているだけ。キャラがリアルで、かなり痛い物語でした。

・おまかせハウスの人々
家事労働のいっさいを家がやってくれるという、画期的な家を販売する営業マンと、モデルケースになった3件の家に住む人々を描きます。ある家では、家事も買い物も必要のない家に若者が引きこもり、ある家の姑さんは、家事をさぼる嫁を見て苛立ちを募らせます。「おまかせハウス」は近い将来、確実に可能になる技術でしょう。その技術をどう生かすかは、それを使う私たち一人一人の肩にかかっているのですね。

・・・という正統派のメッセージを、私はこの作品から受け取りました。

・麦笛紀行
これは、空気の読めないサラリーマンの悩み。

・フード病
これは、台所問題で対立する、嫁と小姑のバトル。

というわけで、6編の短編全部において、科学の進歩はスパイスにすぎず、日常生活を一生懸命がんばる、ごく普通の人々の心情を、淡々と描いたという感じです。SFファンには、甘い、退屈、と、言われそうな気がしないでもありません。だから、好みが分かれる本だと思います。それから、女性向けだなあとも思います。

私は好きです。オススメです。
| さ行(菅浩江) | 23:56 | - | - |
● ヒットラーのむすめ ジャッキー・フレンチ 
4790231496ヒットラーのむすめ
ジャッキー フレンチ Jackie French さくま ゆみこ
鈴木出版 2004-12

by G-Tools

もしもヒットラーに娘がいたら・・・。現代のオーストラリアの少年・マークは、一緒にバスを待つ間にいつもする、お話ゲームの中で、友達のアンナから、ヒットラーの娘の話を聞きます。ゲームの中でハイジと名づけられたその少女の運命が、マークは気になって仕方ありません。何日もかけて、ハイジの話を聞くうちに、マークはいろいろな事を考えます。

もし自分がヒットラーの子どもだったら? 戦争や虐殺を止められただろうか? もし自分の父親が悪いことをしていたら、自分はどうするべきなのか?自分以外のみんなが間違ったことをしていたら、どうやって正しい事を見分ければいいのだろう?

マークの周囲の大人たちが、ちゃんとした答えを出せないところが、自然ではありましたが・・・。一応大人の1人で、しかも先生と呼ばれることの多い私にとっては、胸の痛む部分でもありました。

最初は、物語の滑り出しが、ちょっと不自然な気がしたんです。アンナの言う事が唐突すぎて。でも、すべてがわかってみると、自然でしたね。ラストがいい!

王道の児童文学なので、ちょっと説教くさい感じはしますが、それを上回るストーリーの面白さと、奥深さ。戦争を過去のものであると、子供たちに感じさせない様々な演出。よく練られた、すごい本だと思います。
 
第52回産経児童出版文化賞のJR賞を受賞。

この記事を採点する
| 海外 | 23:41 | - | - |
▲ 月は幽咽のデバイス 森博嗣 
4061821091月は幽咽のデバイス
森 博嗣
講談社 2000-01

by G-Tools

薔薇屋敷、あるいは月夜邸と呼ばれるその屋敷には、狼男が住んでいるという噂があった。大勢の人々が出席しているパーティの途中、密室だったはずのオーディオルームで起きた殺人事件。紅子が看破した事件の意外な真相とは!?

トリックのスケールが大きくて、非現実的で、ルパンか、島田荘司みたい。つまりは、古いのか・・・。えーと、古典的、なんだよね。

紅子&林&七夏の三角関係は、新事実も動きもなく、女性二人のドロドロとした心情だけがつづられて・・・もうおなかいっぱい。もたれてきました。

逆に、紫子&練無と、新人の素直くんの会話は楽しいです。でも、事件の中での役割はほとんど無いに等しい。そして、保呂草の影も薄い。

こういうトリックとストーリーなら、保呂草の暗躍をもっとクローズアップして、ドキドキハラハラの冒険ものっぽく描いたほうが面白かったんじゃないのかな・・・と、思います。それこそ、アルセーヌ・ルパンのシリーズのように。でもまあ、Vシリーズだから、紅子さんが主役で、探偵をやらなくちゃいけないのは、絶対なんだろうなあ。しょうがないか。
| ま行(森博嗣) | 15:17 | - | - |
白夜行 東野圭吾 [ドラマ化] 2-3
1話づつ感想を書くつもりなんて全然なかったんですけど・・・。いつの間にか、書かずにはいられなくなっている。というわけで、第3話の感想です。

ストーリーが、完全に原作から離れてきました。なので、別物別物別物、と言い聞かせる必要も、あまりなくなってきました。

そうしたら、意外なことに。最初はあんなに違和感があった主役2人のキャラクター造形が、だんだん、原作から受けたイメージに近くなってきているんですよねー。

第3話前半では、隙がありすぎるヘタレ亮司にあきれるばかりだったのですが、見終わってみると、なるほどーって感じ。こうやって少しずつ強くなって、あの、クールでダークな亮司になっていくのかあ、と。今週も、山田孝之の演技は良かった。すべての良心を捨てたシーンの表情は、ブラックホールのようでした。

そして、予告編を見ると、来週の雪穂は、ちゃんと鬼畜になっている(笑)。雪穂はこんな、可哀想キャラじゃない、と思い続けてきたのですが、来週あたりからは安心して見られそうです。

そして、ストーリーが原作とは違うので、純粋に、次回の放送が楽しみになってきました。「海賊になるのが夢」とか「バトラーになる」とか、ドラマオリジナルのディティールには、失笑ポイントが多いのがたまに傷ですが・・・。でも、亮司とお母さんのシーンは、良かった。

来週はどうなるのかな?
| 雑文 | 08:20 | - | - |
● 神様ゲーム 麻耶雄嵩 
4062705761神様ゲーム
麻耶 雄嵩
講談社 2005-07-07

by G-Tools

ネタバレあり。

感想を一言で言うと、 「ひどい」。

小説のレベルがひどいわけではなくて、むしろ高いんですけど。なんだか、極悪非道な小説なの。これがミステリーランドから出ているというのは、講談社の神経を疑っちゃうの。

誕生日のプレゼントのロボットを喜び、ケーキを丸ごと1つ食べるのが、将来の夢。そんな子供らしい子供、小学四年生の芳雄が主人公です。少年探偵団、秘密基地、友情の誓い、淡い初恋、などなどジュブナイルらしいディティールで物語は始ります。子供たちが、町でおきた猫殺し事件の犯人を追う!というところまでは、まあいいんです。猫殺し事件は陰惨ではありますが、人が死ぬよりは衝撃が小さいわけで、ちゃんと子供向けの本を書いているんだな、と、思いました。

でも、もちろん、麻耶さんがそんな常識的な本を書くわけがなかったんですよねー。

やっぱり殺人事件はおきるんです。それはまあいいとして、この、被害者の選定が鬼畜。「天空の誓い」なるものをかわした芳雄の大親友が、ケンカをした翌日、仲直りをできないまま、殺害されます。(これだけだって、子供向けの本なら十分1冊できるネタですよねー。でもこれは、私の感想「ひどい」の中には入っていません。)

さあ、この殺人事件の犯人は?というのが、物語の本筋です。謎解きは、芳雄のクラスメートの自称「神様」がやってくれてしまうのですが、子供たちの冒険小説として楽しめない事もありません。

でも、終盤がひどい。加害者の選定は、被害者の選定よりさらに鬼畜だし、動機はエグイの一言。しかも「神様」が、頼めば犯人を教えてくれるし、「天誅」も下してくれるんですよね。その「天誅」の描写なんて、殺人事件の描写より凄惨。とても子供には読ませられません。

そして、一見、完璧に見えるロジックによって犯人が限定された・・・はずだったのに、あのラスト。あんまりです。ここが一番ひどい!あんまりです!子供に読ませると「読書」が嫌いになるんじゃ・・・。

後味悪すぎ。

でも、よく考えると、伏線は、なかったわけじゃないんだよね。本格ミステリーとしては別に破綻してないの。

何もかも神様まかせの芳雄も、悪いといえば悪いしね。「神様」が本物かどうかもわからない。すべては偶然ということもありえるわけで、犯人は別の人で、芳雄は長生きするかもしれない。だから、これから成長していく芳雄が、「神様」をいつまで信じ続けるのか、という事に興味があります。信じ続けるにしろ、そうでないにしろ、芳雄がどんな風に生きていくのか(あるいはいかないのか・・・)興味がつきません。

というわけで、大人の感想としては、さすが麻耶さんだ、ひどい!ということになります。(手放しで誉めてるわけじゃないんだけど、一応誉めてる。きっと次作も読んでしまうだろう。)
| ま行(その他の作家) | 13:08 | - | - |
● 灰色の北壁 真保裕一
4062128020灰色の北壁
真保 裕一
講談社 2005-03-18

by G-Tools

山岳ミステリーの中編集。NHKのドラマ「氷壁」を見ていたら、タイトルだけは知っていたこの本を読んでみたくなりました。

・黒部の羆
大学の山岳サークルで、お互いをライバル視していた2人が遭難します。「羆」と呼ばれる元山岳警備隊の男性が、彼らを助けに向かいます。山男たちの信頼や、葛藤について、じっくり描かれています。この本の中で一番迫力のある作品。謎は何もないのに、ラストでどんでん返しが味わえます。びっくりです。

・灰色の北壁
世界のクライマーから「ホワイト・タワー」と呼ばれ、恐れられた山、カスール・ベーラ。死と背中合わせのその北壁の、単独登頂に成功した男がいました。しかし、彼が山頂で撮影した記録写真は合成ではないかという疑惑が、あるノンフィクション作品によって提示され、彼は糾弾されることになります。彼が沈黙を守り続ける理由とは?

お涙ちょうだいではないけれど、感動的な作品でした。

・雪の慰霊碑
息子を雪山で亡くした父親は、息子が命を落とした山に、死を覚悟して登ります。その真意は?彼の甥と、亡くなった息子の婚約者が登場します。それぞれの思いが切ないです。

ミステリー的には「灰色の北壁」がオススメ。ヒューマンドラマとしては「黒部の羆」がお気に入りです。
| さ行(真保裕一 ) | 23:36 | - | - |
| 1/5PAGES | >>