角田光代さんの本は、どれだかもう忘れたけど、以前に1冊読んでいて、でも私には合わないようだったので敬遠していました。でも、この本が直木賞を取った時に、読んどかなくちゃかなあ〜と、思って、図書館予約して・・・来たのが昨日!もう、予約した事すら忘れていました。
でも、読んで良かった、かな。この本は、結構好きでした。
本屋さんでは、「負け犬と勝ち犬 女同士の友情の行方は?」というようなあおりPOPを見た記憶がありますが、この本はそれが一番のテーマではありませんね。そんな風に軽い感じの本でもないし。
そもそも、主人公・勝ち犬の小夜子は、子供を連れて公園を渡り歩く毎日に、いじめられっこだった子供時代を思い出すばかりの、暗い登場です。夫や姑とのコミュニケーションもうまくいかず、子育てには自身がなく、勝ってる感はまったくありません。一方の負け犬であるところの女社長・葵は、気さくで友達も多く、自由奔放に、明るく登場します。
この2人の現在の物語と、葵の高校時代のナナコという少女との物語が交互に語られていくのですが、私は、葵&ナナコの物語のほうが印象的でした。葵の独白が、勉強になりました!って感じで。
私は女子のグループというのがとても苦手な学生でした。グループの構成とか、メンバーの動きとか、力関係とかをまったく理解できず、どこで笑ったらいのかもわからなかったし、次に誰をいじめる事になっても理由がわからなかった。マイペースにやりたい事をやっていたので、いじめられる事はなかったけど、それは運が良かっただけです。ナナコのように、他の場所に大事なものがあるから、と、開き直れるわけでもなく、葵のように、いじめにあわないために必死になる事もなく・・・小学校でも、大学でも、職場でも、いまだに女社会の常識に鈍感なままです。でも、仕事がら理解したいという気持ちはあって、だから、勉強になりました!読んでよかった。という感想になります。
この本で主人公・小夜子が繰り返し自問するのは、「なんのために私たちは年を重ねるんだろう」です。この問いに対して小夜子が出す答えは、前向きで、好きでした。小夜子にはとても好感を持てました。
でも、葵のほうは、学生時代と現在とのギャップを、小説が埋め切れていない、という気がします。どうしてもともとは小夜子とよく似たタイプだった葵が、ナナコに似たものになってしまったのでしょうか。説明に説得力が足りない気がしました。結局は、3人とも似たもの同士、という結論になるのでしょうか。それとも、すべての人が似たもの同士、と言いたいのかな?もちろん、ナナコのその後も気になりますし。
確かにいい本でした。女の友情もので、しかも重い話わりに、恋愛が絡まないせいか、とても爽やかな読後感。
でも、直木賞をとるほどの作品かなあ・・・うーん。それに、女性心理を鋭く描く作家として桐野夏生さんと並べられている書評を読みましたが・・・全然質が違うし、比べ物にならないような・・・(ああ、これは個人の好みですね。)