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■ むかしのはなし 三浦しをん
4344007417むかしのはなし
三浦 しをん
幻冬舎 2005-02-25

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「日本昔話」が、この本の中でどう語りかえられたのか、お楽しみいただけたなら嬉しい。
と、あとがきにあるが、これはちょっと言い過ぎ。語り変えたというより、インスピレーションを得た、とか、暗喩として組み込んだ、と、言ったところだと思います。

7つの作品がおさめられた短編集なのですが、途中で、あと3ヶ月で地球が隕石によって崩壊する、などという設定があったことが唐突に明らかになり、後半の作品はその一大事をめぐるストーリーになっています。

・ディスタンス
一番印象的だったのがこれです。10歳の時から、同居している14歳年上の叔父に、性的悪戯を受けてきた少女の物語です。客観的に言って、これは犯罪であり、DVですが、少女にとっては確かに恋愛で、彼女は彼との将来を思い描いています。しかし、その叔父さんという人は、単なるロリコンで、10歳の少女には魅力を感じても、大人になっていく彼女から少しづつ離れていくんです。悲しい物語です。ちなみにこの短編のもとになったのは「天女の羽衣」だそうですが…かなり苦しいというか、こじつけっぽいですねー。

・ロケットの思い出
空き巣が、子供のころ飼っていた犬との思い出を語る独白です。とてもいいお話でした。
| ま行(三浦しをん) | 11:42 | - | - |
● HEARTBEAT 小路幸也
4488017150HEARTBEAT
小路 幸也
東京創元社 2005-04-25

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ネタバレ注意!

と、一応書いておきますが、できるだけネタバレはしたくない小説です。

行方不明のかつての恋人を探す青年のストーリーと、あるお屋敷に死んだ奥様の幽霊が現れるという子供たちの噂。二つの縦軸が交互に語られる、ミステリー仕立ての小説です。ミステリ・フロンティアですが、ミステリー仕立てなだけで、ミステリーではありません。

優等生の委員長と不良少女がみつけた一億円という大金。ニューヨークの地下生活。お屋敷にでる幽霊の正体。たくさんの謎があり、解かれていきますが、それでもこれはミステリーとして評価してはいけません。これは、あえてジャンルをつけるとしたら、青春小説です。

オチが、本当にびっくりなんです。これは予想できませんでした。えーっって感じ。(わたしは、これまたオチがびっくりだった、とあるハリウッド映画を思い出しました…)

泣きたくなるような懐かしさと、切なさが残る小説。なんともいえない余韻があって、もう一度はじめから読みたくなります。
| さ行(小路幸也) | 22:25 | - | - |
● 嫌な女を語る素敵な言葉 岩井志麻子
4396632479嫌な女を語る素敵な言葉
岩井 志麻子
祥伝社 2005-03

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「恋愛ホラー」と銘打たれています。そのとおりの本です。オカルト的なものは何も出てこない、ごく普通に起こりうる出来事を描いた、恋愛小説集だというのに、一つ一つが、恐いったらない!

「嫌な女」がこれでもかというくらい出てきます。何が「嫌」かというと、性格というか、心根というか、とにかく心が醜いんです。一つの短編につき、一人ではなくて、出てくる女がそろいもそろってかなりの「嫌な女」。しかも一つ一つの物語は、短くて濃厚なので、「嫌な女」のバリエーションもかなり豊富。

自分は、ここまでひどくないはず、と、思いたいけれども、自信はもてない。自分の知っているあの人やあの人も、ここまでひどくはないはず、と、思いたい。でも…

というわけで、すっごく恐い本でした!
| あ行(その他の作家) | 22:21 | - | - |
■ 僕たちの戦争 荻原浩 
4575235016僕たちの戦争
荻原 浩
双葉社 2004-08

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居酒屋のアルバイトを首になったばかりの現代っ子、フリーターでサーファーの健太。軍国主義の日本で、特攻隊員としてお国のために命をささげようとしていた吾一。同じ年の二人が、海での事故の拍子に、時を越えて入れ替わってしまうところから、物語は始まります。読みやすくて、面白くて一気に読めました。

面白かったんですけど…ちょっと、小学校の国語の教科書を思い出してしまいました。「戦争について勉強しましょう」みたいな感じで、荻原さんにしては、ちょっと説教っぽい気がしたかな〜。

健太の立場から読んでしまうと、ただただ、SFとして弱いぞ…という感想になってしまいます。入れ替わりの理由とか必然性を説明しようとする事もなく、歴史改変とか歴史の新しい意味づけなどもなくて、健太がタイムスリップで得たものもはっきりしない。これはSFじゃないんじゃないかな…って感じ。

でも吾一の心情にひたって読むと、かなり切ない本なんですよねー。彼が、命をかけて守ろうとした国が、すっかり変わってしまったのを見たときの気持ちや、彼の最後の選択にむけての心の動きや…何もかもが、切ない。

荻原浩さんの作品としては異色だと思うけど、やっぱり「はずれはないな」と、思いました。
| あ行(荻原浩) | 22:20 | - | - |
■ スペシャリストの誇り 芽田砂湖
4125008906クラッシュ・ブレイズ スペシャリストの誇り
茅田 砂胡
中央公論新社 2005-03-26

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このシリーズを読んでいる人にしかわからない感想文。

今回は、久々の流血沙汰。レティがメインで、ルーファはあまり出てきません。前作よりかなり面白かったです。このシリーズでは、作者は金銀黒の話をこれからも書いていくのでしょうが、この世界で描くならファロットたちの話のほうが面白そうです。いっそうの事、異世界犯罪小説というジャンルにしたらどうでしょうね・・・。

というよりは。前作で完全に幻滅したので、期待しないで読んだから面白かった、というのが大きいのかも(笑。キャラはかぶってるし、理屈は身勝手だし、筋は通ってないし・・・という欠点は、何もかわってないので。

それにしても、リィの女装シーンさえあればファンが喜ぶと思ってるのか!いや・・・喜ぶんだけどね。あまりにも回数がかさんできたので、ありがたみが薄れてきたんだよねー。もうそろそろ、やめたほうがいいんじゃないかなあ。ただでさえ、このシリーズに入ってからは、彼、こぎれいになっちゃってるし。レティが隣にいると、どうしても、おりこうさんに見えちゃうし。キャラ重視のシリーズなのに、主人公のリィの魅力が、どんどん目減りしてる気がする。
| か行(茅田砂胡) | 22:54 | - | - |
● ブルータワー 石田衣良 
4198619182ブルータワー
石田 衣良
徳間書店 2004-09-16

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★★★☆☆

気をつけたけど・・・多少のネタバレあり。

ものすごく面白かった。ひさびさに、入り込んじゃいましたねー。「自分、ちょっと落ち着けよ」と思って、ちょっと休憩入れたくらい・・・。感想書くの、むずかしいなあ。

帯には、何に遠慮してるのか「ヒューマン・ファンタジー」なんていう訳のわからないジャンルが書いてありますが、これはSFです。典型的なSF。だから、他のどの石田衣良作品とも似ていないし、従来の石田衣良ファンは好きではないんじゃないかと思うような作品です。石田衣良さんと言えば「現代感覚」が売りで、今風の、都会の、若者の社会を描く人でしょう?でもこの作品の舞台は、200年後の「ブルータワー」と呼ばれる塔のある世界。作風は1960〜70年代の懐かしいSF。主人公は、脳腫瘍患者の中年男。全く石田衣良さんっぽくない。

あとがきによると、9・11事件で受けた衝撃を小説の形で残したい、という気持ちから始まり、アメリカSF黄金期のある作品へのオマージュという形で終わっているそうです。なるほど、です。

200年後の未来は、生物兵器によって大気が汚染され、タワーの中だけでしか安全を保障されていない世界です。生物兵器「黄魔」、テロ、出生率の低下など様々な問題があって、人類は絶滅の危機に瀕しています。主人公は、近未来の新宿の高層ビル内のマンションと、200年後のタワーの中を行き来しながら、200年後の未来を救うために奮闘するのです。アメリカSFというよりは、「風の谷のナウシカ」風。ナウシカ好きな人は、この本も好きだと思うなぁ。あ、あと、あさのあつこの「NO.6」も思い出しました。

未来に飛ばされた主人公と同じく、読者も未来の世界がどんな世界か最初はわからない。誰が敵で、誰が味方なのかも、なかなかはっきりしない。そんな先の展開が全然読めない中で、大事件が次々におこって、ぐいぐいストーリーに引き込まれてしまいました。それに、脇役達がとても魅力的なのです。命の危険と隣りあわせで暮らす、未来の人々は、それぞれかっこよくて、たくましくて、彼らが一人、また一人、と死んでいくたびに目頭が熱くなりました。

あと、表紙の「ブルータワー」の絵がすごく素敵。ジャケ買いしそうなくらい素敵。小説の中の「ブルータワー」は、全然魅力的な場所ではないのですが、だから余計に、泣けてくるくらい綺麗です。

私は、この本、すごく好きです。基本的に子供の頃、海外SFにどっぷりつかっていた時期ががあるので懐かしかったし、私も石田さんと同じようにSFというジャンルの衰退を嘆いているSFファンの一人だから。あとがきの、この言葉は、私の思うところでもあります。

がんばれ、負けるな、エスエフ。現実が想像のすぐあとを追いかけてくる時代、今こそSFがもつはるかな夢と未来にむかう力が求められているはずだ。

人間の悪や残酷さを見たとき、僕達はそれと同じ数だけきっとある光と優しさに目をむける必要があります。
でも、読み終わってみると★は3つなんだよねー。読んでる間は本当に楽しくて、★10こあげたい!とか思ってたのに・・・。

一つ目の☆は、どうしたって、ラストのツメが甘い。あらゆる意味で甘すぎる。SFなんだから、かなりご都合主義なのはもう仕方ない。突っ込みどころ満載だけど、あえて目をつぶります。世界の救い方が、びっくりするほど地味だったのも、わたし的には良かった気がします。でも、脳腫瘍問題とか、不倫問題とか、何より未来の世界の社会問題とか・・・そんなに簡単に解決したことにしちゃうなんて・・・そんなぁ。

まあ100歩ゆずって、そこまでは許すとしても、エピローグは絶対にいらなかった。あれが、何かの作品のオマージュなのかなぁ。だとしてもやっぱり、あのシーンはいらない。ないほうが絶対いい。これから読む人には「エピローグは読むな」と、言って回りたいくらいです。エピローグなしで終わってくれれば、希望のある余韻が残ってよかったのに。★4つにしたのに。ものすごく残念で、がっかりでした。

二つ目の☆は、どうしても中年男の妄想についていけなかった。なんであっちでもこっちでも、若い女にもてまくり、せまられまくるんだ。「からだを大事に」ってそういう意味だったんかい!全体的に青臭い、理想主義的ヒーロー小説で、それを楽しんでるのに、そこだけオヤジくさいから、ひくんだよね〜。

でも、エンターテイメントとしては面白かった。本当に、面白かったです。石田衣良ファンの方と、コアなSFファン以外の方には、オススメできます。
| あ行(石田衣良) | 22:18 | - | - |
■ 雨と夢のあとに 柳美里
4048735950雨と夢のあとに
柳 美里
角川書店 2005-04-08

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父親の死を知らないまま、父親の幽霊と暮らす、小学生の少女の物語。テーマは親子愛なのに、バタ臭くなく、ラストは予想どおりなのに、読み終えてみると満足感がある。文体のせいか、幽霊を、はかなく哀しい存在として描く描写のせいか、しんとした静けさと、透明感のある、不思議な中編。

柳美里さんには、読みづらい・くらい、というイメージがあって、あんまり好きじゃなかったんですが、この本は良かったです。また柳美里さんの作品を読んでみようかな・・・と、思いました。

でも、正直言って、ドラマのほうが数段良かった。泣けた。原作がこんなに短いのに、1クールの連ドラにしちゃったわけだから、中盤はパターン化しちゃってだれたけれど、でも、ドラマ版「雨と夢のあとに」はすごく良かったと思います。柳美里さんがプロデュースしたという主題歌も良かったしねー。

| や行(その他の作家) | 22:16 | - | - |
● くうねるところすむところ 平安寿子
4163239901くうねるところすむところ
平 安寿子
文藝春秋 2005-05-25

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出版社で副編集長をつとめていた、30歳の梨央は、一目惚れしたとび職の男性「ヒーロー」にあこがれて、工務店に再就職します。工務店の女社長は45歳の×イチ。社長令嬢で「姫」と呼ばれて育ち、婿養子をとって工務店を任せていたのですが、彼の不倫が原因で夫を離婚。なりゆきで自分が社長をつとめることになったのです。

二人の女性が、会社経営・建築現場という、少し前まで完全に男のものだった仕事に、懸命に立ち向かっていく姿が素敵です。二人とも素人だから、なにもかも全然うまくいきません。姫は、社長就任早々大胆なリストラを実行し、しすぎて深刻な人材不足に陥ります。まったくの素人である梨央が、現場監督をつとめなければならないほどの人材不足です。資金繰りもうまくいきません。二人はそれでもなぜかめげることはない。多少しょげてもちゃんと立ち直る。

二人とも「家を作る」という仕事自体に情熱を持っていたわけじゃないから、かっこいい女性を描いている、というわけではないんです。でも、持ち前のたくましさと、明るさで、前向きに仕事をしているうちに、二人は自分の仕事の意義を見つけます。そして、だんだん二人が、かっこよく見えてくるんです。

さて、この鍵山工務店の行く末は?梨央の恋の行方は?ぜひ読んで下さい。面白くて、元気が出る!
| た行(平安寿子) | 22:14 | - | - |
● サウスポー・キラー 水原秀策
479664458Xサウスポー・キラー
水原 秀策
宝島社 2005-01-27

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タイトルと表紙でわかるように、野球小説ですが、野球に詳しくない人でも楽しめます。「このミス」の大賞をとった作品です。

八百長疑惑という罠にはめられた、孤高の実力派ピッチャーが、自らの名誉と野球人生をかけて戦う物語です。彼がハードボイルドでかっこいいんです。真の敵ということになる元刑事も存在感たっぷりだし、トレーナー・監督・記者達など、脇役も個性的。現実の野球界の「あの人かな?」「あれのことかな?」というような内容も織り込まれ、女優さんとのロマンスもあって、読者にたっぷりサービスしてくれます。会話もシニカルで、スリリングで、面白いです。

とにかく、とってもかっこいい本でした。主人公がかっこいい、っていうだけではなく、ストーリーの展開から結末に至るすべてがかっこいい。謎も、真相も、キャラクターも、文章も、すべてがかっこよかった。多分男性受けする本ですが、私は女性にも勧めたいです。この小説には惚れますよ〜。

1つ残念だったのは、ルックス。ぶっちゃけ、装丁が好みではありません・・・。球場の絵の爽やかな色彩と、スコアボードをかたどったちゃっちぃ表題。中身のかっこよさとは合ってない気がします。
| ま行(その他の作家) | 22:13 | - | - |
■ 聖者は海に還る 山田宗樹
4344007638聖者は海に還る
山田 宗樹
幻冬舎 2005-03

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テーマは「カウンセリング」。ミステリーとしての、先の読めない物語の展開に、ハラハラドキドキ。ラブストーリーも織り込まれていて、テンポが良くて、一気に読みました。面白かったです。山田宗樹さんの小説の中では、かなり読みやすいほうだと思います。

とある進学校で、生徒が教室に拳銃を持ち込み担任教師を殺し、自分も自殺する、というショッキングな事件が起きます。学校側は、生徒達のショックをケアするため、そして同じような事件の再発防止のために、学校カウンセラーをおくことにします。そこにやってくるのが、天才的な才能を持つカウンセラー・亮です。物語は、亮と、この学校の養護教諭・律を中心に進んでいきます。

二人の勤める学校の物語と、プロローグで語られる「猫を殺す少年の物語」を結びつけるのが、「定岡療法」です。これは、催眠術で危険な心を封印し、犯罪を防止したりする治療法で、生徒達を勉強に集中させることにも大きな効果を発揮します。やがて、学校側は生徒達にカウンセリングを強制するようになり、律はカウンセリング自体に疑問を抱くようになり、亨は「定岡療法」を施す自分に自信が持てなくなっていきます・・・。

カウンセリングが、アメリカほどではないにしろ一般的なものになり、あちらこちらでこの言葉を聞くようになったのに、これをこんなに真っ向からテーマにした小説も珍しいんじゃないかな?ノンフィクションはたくさんあるけどね。わたしにはとても新鮮でした。

帯に「その“気持ち”は本当にあなたのものですか?」と書いてあるのですが、そういう意味で、とても恐い本でした。自分の気持ちは自分のものか?誰かにつられたり、何かに操られたりしてないか?カウンセリングなど受けなくても、時々わからなくなる事はあります。催眠術なんてかけられたらもう、絶対にわからなくなる。それでも成績をあげるため、あるいは仕事で業績をあげるため、カウンセリングを受けようと思うほど、追い詰められる・・・恐すぎです!私は絶対に催眠術なんてかけられたくないけれど、かけられたことに気付かない可能性もあるんですよね。恐い・・・。

ラストはとても切なかったです。
| や行(山田宗樹) | 22:11 | - | - |
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