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▲ 耳をふさいで夜を走る 石持浅海
耳をふさいで夜を走る耳をふさいで夜を走る
石持 浅海

徳間書店 2008-06-17

ネタバレあり

並木という1人の男が、たった一晩で何人もの親しい人を殺害していく様子を描いた連続殺人小説です。いくつもの殺人の場面が、丁寧に詳細に描写されていて、背筋が寒くなります。1人目を殺したのは正当防衛だった。でも、並木はそれをきっかけに、次々と人を殺していきます。殺すたびに「殺人」に対する意識が変化していきます。緊張と興奮、そして快感、最後にはそのすべてを無くして、ただ冷静に。この心理描写には読み応えがありました。エンディングも、恐怖の余韻が残って、良かったと思います。

ただ、ちょっと、並木の動機が弱いかなあと思ったりもしました。

並木は以前に、冤罪被害者を支援する団体で活動していました。そこには、特別に目をかけていた3人の被害者の少女がいました。彼女たちは、冤罪で父親が逮捕され獄中死をとげた、という過去を持っており、バッシングに傷つき世間を信じられなくなっていました。そんな彼女たちを助けたのが、並木と、心理カウンセラーのあかねでした。

少女たちは、カウンセリングを受けて回復していく段階で、人間を、自分の味方である「こちら側」と、敵である「あちら側」の2つに、完全にわけて考えるよう、並木やあかねによって誘導されます。そして、「あちら側」の人々をあっさり切り捨て、彼らの命すらどうでもいいと思うような精神構造をもつようになりました。並木は、彼女たちがその特殊な精神構造ゆえに、いつか「あちら側」の人間を殺し、大事件を起こす、それを心配しました。だから、その前に、彼女たち3人を、自分の手で殺さなければならない、と、そう決意したのです。

…これ、彼女たちの精神構造や思考回路を、なんとかして変えるようと努力するっていうのが普通で、だから殺さなければ、なんていう考えは、悠子に誘導されたとはいえ、明らかに異常だよねえ。作中で並木は自分の事を、恵まれた環境で育ったごく普通の人間で、どちらかといえば善人である、というような分析をしているんだけど…もともと普通の人じゃなかったんじゃないかなあ。

まあ、この本では、並木の動機が不自然なことなんて、たいして重要ではないと思うのでいいんですけど。気になったので一応書いておきました。
| あ行(石持浅海) | 17:55 | - | - |
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