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★ 天使の代理人 山田宗樹 
4344006194天使の代理人
山田 宗樹
幻冬舎 2004-05

by G-Tools

ファンシーなデザインの表紙と、かわいらしいタイトルに魅かれて手に取りましたが、騙されました!「生を守るための挑戦!今、1つの奇蹟が起ころうとしている!」っていう手書きのオススメカードがはられて、平積みで売ってたんです。だから、どうせ最近ブームの、死とか病気とか純愛の話で、泣かし系だと思いました。そうしたら、全然違いました。

この本は、妊娠中絶をテーマにした、ヒューマンドラマです。日本では法的規制が空洞化して、先進国としては類を見ないほどの「中絶天国」と化しているという、医療の現場の実態を暴いており、なかなか衝撃的です。最初のほうは、重くて暗くて、読み進めるのに苦労しましたが、途中からサスペンスの要素も加わって面白くなり、ぐいぐいと引き込まれました。

20年間も中絶手術にかかわってきた罪悪感から、中絶を減らすための地下組織「天使の代理人」を作った助産師が主人公です。犯罪行為であると知りつつ、たくさんの助産師や看護士が、協力者となり、妊婦達と関わっていきます。

それと平行して、もう1つの物語が語られます。同姓同名患者の取り違えという医療ミスで、待ち望んでいた胎児を中絶された奥さんの物語です。彼女がどのように悲しみから立ち直っていくのか、また、もう一人のサトウユキエさんはどんな人生を歩むのか。この2人の物語があるおかげで、この本はずいぶん読みやすくなっています。

物語の前半ではテレビ番組の討論という形で、後半ではネット上の掲示板でのやりとりで、「胎児はヒトか」「母親のライフスタイルと、胎児の命は、どちらが優先されるべきか」という問題が提示され、様々な立場の人たちが、様々な意見を言います。ほとんどの人の意見に、一理はあり(胎児は腫瘍か虫歯と同じ、という意見にはさすがに絶句しましたが・・・。)、判断は結局、読者にゆだねられています。

作中に登場する、ある編集者が、「ほんとうに訴えたいことは、できるだけ感情をおさえて、淡々と書いたほうが、迫力も出るし、読者に伝わるんです。」と、言うのですが、それを実践したような本でした。

とりあえず、物語としてのラストは爽やかですから、ぜひ、安心して読んでみてください。名作だと思います。

| や行(山田宗樹) | 22:40 | - | - |
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