岡崎優は、子供の頃から父親に長距離ランナーとしての訓練を受けてきました。優の父親は自分がかなえられなかったオリンピック出場という夢を優に託して、ずっと練習に付き添っています。優はその期待に応えて、みごとに素質を開花させ、中学・高校では走るたびに記録を塗り替え、タイトルをとり、「不敗神話」を持つと言われるまでになりました。
そんな優は、より整った環境で練習すべく、S大学陸上部に入部します。そこでもひたすらストイックに練習に打ち込み、仲間を作ろうとはしません。陸上部の目標である箱根駅伝を、通過点、と言い切ってしまったことで、ますます孤立しています。そんな中で、突然、兄の死という悲劇が家族を襲います。その時に、母親が漏らした一言。その一言が、優に自分の出生に関してとある疑問を抱かせます。。。。
傲慢で鼻もちならない青年だった主人公が、自分と家族について悩み苦しむことで、少しずつ人間らしく成長していくストーリー。優がいだく「とある疑問」が、やや突飛で、興醒めしてしまった事を除けば、いい本だったと思います。陸上部の先生や、優の友人である岩本などは、優とは対照的に素敵なキャラクターで、いい言葉もいっぱいでした。
「風が強く吹いている」や「一瞬の風になれ」を先に読んでしまっていたので…。比べられてしまう時期に出版されたのはこの作品にとっては不運だったかなあと思います。これを最初に読んでいたら、全然違う評価になっていたかも。