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● 明日この手を放しても 桂望実
明日この手を放しても明日この手を放しても
桂 望実

新潮社 2007-06

19歳の時に突然失明して、裁判官になるという夢を断たれてしまった凛子。半年後に家族の太陽であった母は事故で亡くなり、やさしかった父は失踪。いい加減でだらしなくて、妹への思いやりもない兄・真司と二人だけの暮らしが始まります。両親と共に暮らしていたころは、そりの合わない同居人でしかなく、仲が良い兄弟とはとても言えなかった2人の、その後の12年間が描かれています。

章ごとに凛子と真司が交互に語り手をつとめる手法が、上手いなあ、と思いました。凛子が語り手をつとめる最初の章では、設定の悲惨さと、凛子の絶望と、兄への嫌悪感ばかりが描かれていて、硬くて暗くて読み続けるのが辛いかも、と、思ったのですが、適度なところで語り手がチェンジ。楽観的で、いい加減で、言いたいことを言いたい放題の真司の章へ。凛子ちゃんはあんな風に言ってたけど、真司にもいろいろあるんだよね、それに比べると凛子は可愛くないねえ、なんて思ったところで、また語り手がチェンジ。そんな風に、私は兄妹両方に共感しながら、2人共を応援しながら、最後まで読むことができました。

2人は2人だけの暮らしの中で、徐々に理解と信頼を深めていくことになるのですが、表面的には最後までケンカばかりです。兄弟の会話って辛辣ですよね。でもそんな風にやりあいながらも、お互いにお互いの事をちゃんと思っているところが、うん、兄弟っていいよね、と、思わせてもらいました。

2人の関係だけでなく、それぞれの成長が描かれているのも良かったです。短気で不平不満ばかりだった真司は、大人らしい行動がとれるようになり、自分の仕事に積極的に取り組むようになります。なにごとも計画を立ててから始め、計画どおりに進まなければ気がすまかった凛子が、先の事はまだわからないけど、と、言いながら、自立への第一歩を踏み出します。

いい小説でした。コスモス読んでみたい。

父親の失踪の謎が明かされなかったのはどうしてでしょう?ここにけりをつけておけば、イマイチ山場のないところがちょっと惜しいこの小説に、いいアクセントがついたと思うのですが…。
| か行(桂望実) | 23:51 | - | - |
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