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● ぐるぐる猿と歌う鳥 加納朋子
ぐるぐる猿と歌う鳥 (ミステリーランド)ぐるぐる猿と歌う鳥 (ミステリーランド)
加納 朋子

講談社 2007-07-26

小学校5年生のシンは、父親の転勤に伴って、東京から北九州に引っ越すことになりました。東京でのシンは、腕白で乱暴ないじめっ子というレッテルを貼られ、唯一の理解者であった祖母も失って、つまらない生活を送っていました。しかし、北九州でシンが暮らすことになった社宅では、同じ登校班の個性的なメンバーが、彼を徐々に受け入れてくれます。

シンという少年は、今どきの子にしては珍しいくらい、子どもらしい子どもとして描かれています。やりたい事を思いついたら、そのワクワクする気持ちを抑えきれず、行動に移さずにはいられない。危険であればある程、大人に止められれば止められるほど、やりたくなってしまう。でも、ずる賢い所はあまりないので、言い訳をするのは下手で、大人には怒られてばかり。でも、本当に素直な少年で、自分を認めてくれる大人には、相談もするし、言うこともちゃんと聞く。この本の爽やかさは、そんなシンのキャラクターに負う部分が大きいなあと思いました。彼が大人になった姿は想像できないのですが、きっと、いいパパになるんじゃないかなあと思います。

シンの仲間たちも、ひとりひとり個性的で、魅力的な子供たちでした。パックも、ココちゃんも、あやも、竹本兄弟も、完全に幸福な子供というわけではありません。それぞれに、子どもが抱えるには重すぎる苦悩を抱えており、それでも、それぞれの個性を失わず、たくましく、優しく、助け合って生きています。実はDVやネグレクトなど、深刻な社会問題を扱っているにも関わらず、彼らの満ち溢れる生命力が、この小説を暗いものにはしていませんでした。

全体としては、少年たちの冒険と友情と成長の物語ではありますが、一応ミステリーランドなので、謎解きも、軽くありました。社宅の子供たちが共有している、という秘密とは?シンの心の傷になっている、前の学校での、とある事件の真相は?5歳のころに誘拐されかけた時の、シンの思い出の中にだけいる、幻の少女の正体とは?

貼られた伏線が見事に収束して、さすがミステリー作家!と、思いました。その謎や秘密も、派手で残酷なものではなく、温かいもので、さすが加納朋子さん!と、思いました。最後まで気持よく読むことができました。ラストシーンが大好きです。

正しく「かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド」であった気がします。むかーしむかしに子どもだったわたしにとっても奥の深い題材が扱われていて、様々な事を考えさせられながら、読書の楽しみを満喫できた一冊であると共に、今現在子どもである人にも、オススメしたいなあと思える一冊。きっと子どもは子どもなりに、この本を楽しんでくれるのではないかと思います。

素敵な本でした。
| か行(加納朋子) | 09:59 | - | - |
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