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■ プリズムの瞳 菅浩江
プリズムの瞳プリズムの瞳
菅 浩江

東京創元社 2007-10

「永遠の森」「五人姉妹」の流れをくむ、抒情SF短編集。前述の2冊には及びませんが、優しく、切なく、美しい物語でした。うん、良かったです。

かつては最先端機種として、期待を一身に集めていた人型ロボット、ピイ・シリーズ。しかし、現在ではその役割を終え、無用の「残存種(レリクト)」と呼ばれ、絵を描きながら各地を放浪しています。

血液の病気の恋人との仲に悩む女性。自分のした研究の結果、多くの人の命を奪う事になり、贖罪の日々を送る老人。今の自分にも周囲の大人たちにも漠然とした不満を抱え、居場所を探し、暴力をふるう少年達。子どもの頃に世話をしてくれたロボットとの、温かい思い出を大事にしている女性。

ピイには感情がないので、ピイと出会う様々な人たちは、ピイと会話をすることで、結局、自分の内面にある感情を見つめ直すことになります。それは多くの場合、自己中心的で、目をそむけたくなるような醜いものですが、そこを掘り下げるのではなく、温かく包むのが菅さんの小説ですよね。どの短編も、後味は悪くありませんでした。

正直、前半を読んでいる間は、ピイたちがなぜ全員画家になっているのかが納得できず、そこにずっとひっかかってしまっていました。だって、ピイたちは、もともとはそれぞれに異なった分野のプロフェッショナルロボットだったはずなのに、どうしてすべてのロボットが画家に?芸術なんて、ロボットが一番向いていない分野だと思われるのに、どうして?無益で無害な作業なら他にもいくらでもあるだろうに、どうして?などと、ぐずぐず思ってしまって。でも、後半、フィー・シリーズについての言及が始まってからは、かなり読みやすくなり、どんどん引きこまれました。そして、ラストで制作者、与謝野博士の、ピイ・シリーズの存在意義は何なのかが明らかになると、なるほどー、って納得できました。

表紙にもなっている、ピイと共に放浪する年をとらない少女、という構図は、絵的に菅さんらしく美しいですよね。そこがもうちょっと、生きていたらなあ。与謝野博士の人生をもっともっと描いて欲しかったなあ。そうしたら、文句ないんだけどなあ。

近々「永遠の森」「五人姉妹」を再読して、その感想を、このブログに追加したいものです。

・収録作品
「レリクト・クリムゾン」
「クラウディ・グレイ」
「ミッドナイト・ブルー」
「シュガー・ピンク」
「メモラブル・シルバー」
「ミラーリング・ブラック」
「エバー・グリーン」
「トワイライト・パープル」
「サティスファイド・クリア」

完全なる蛇足ですが…。ピイ、ぴーちゃん、ピーさん、と言われれば、私はつい、ジャニーズ山下智久君を連想してしまうので、その連想がこの本を読むにあたって自分の脳内で邪魔でした(笑)。

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| さ行(菅浩江) | 09:57 | - | - |
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