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■ 九月の恋と出会うまで 松尾由美
九月の恋と出会うまで九月の恋と出会うまで
松尾 由美

新潮社 2007-02-21

引っ越したばかりの部屋で、壁の、ふさがれているはずのエアコンの穴から、男性の声が聞こえることに気がついた詩織。その声は自分を、未来にいる同じアパートの住人・平野であると名乗り、現在の自分を尾行して欲しいという奇妙な依頼をします。

その奇妙な依頼の理由が解き明かされていく部分は、実に予想外だったので、気持よく驚かされて、楽しく読めました。ただ、それ以外の部分が退屈だったので残念で…。

わたしはこの本を、SFと謎解きの部分をメインに読んでいました。だから、前半の、詩織と未来の平野さんとの交流の部分を、退屈に感じてしまいました。謎解きの前の詩織の行動にも無駄が多い気がしました。それに、登場人物の外見が魅力的であるかどうかという描写とか、ヒロイン詩織が自分は異性にもてるタイプではないと分析する描写とかが、なんだかしつこい気がして、どうにもこうにもウザイんですけど、と、思いながら読んでいました。はやくSF部分の決着をつけてくれ、って思いながら。

でも、それだとたぶん、わたしの読み方が間違っていたんでしょうねー。これはSF風味の恋愛小説として読むべきだったんですね。それだとしたら、わたしが退屈に感じた部分は、必要不可欠な描写です。2人の恋に関して言えば、ほっこりできる素敵なハッピーエンドで、ご都合主義ではありましたが、良かったなあと思いました。ハッピーエンドは好きです。

ただ、正直に言うと個人的には、詩織の恋愛感に感情移入できなかったので、恋愛小説としても、あまり好みではありません。平野さんが、賞をとったことで自信がついて、コンプレックスから解放されて、感じが変わり借金も無くなったからこそのハッピーエンド、なんですもんね。人間の本質なんて、そんなに簡単に変わるものじゃないと思うので、こんなハッピーエンドにするのなら、詩織にはぜひ、おどおどと自信無さげだった平野さんにも魅かれていてほしかったです。(ま、これは本当にわたしの好みの問題です。はい。そして、わたしはラストのなんだか強引な平野さんより、賞を取る前の平野さんのほうが好きなんです。ええ。自分の中に理想があるゆえに、自信を持てない男性というのは、とてもセクシーだと思うんですよね…って、脱線しすぎなのでもうやめますけど。)

しゃべりだすクマのぬいぐるみの件とか、真一くんのエピソードとか、個性的なアパートの住人たちとかが、設定だけは魅力的なのに、小説の中で効果的に動いていない感じも残念でした。描写は丁寧なのに、処理が雑な感じで残念。

松尾由美さんの小説だ!ということで、期待しすぎて読んだせいで、辛口の感想になってしまいましたが、楽しめなかったわけではないです。幅広い人たちに好まれるタイプの、ちょっといい小説だったとは思います。
| ま行(松尾由美) | 20:24 | - | - |
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