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■ 冬至草 石黒達昌 
冬至草冬至草
石黒 達昌

早川書房 2006-06

□ 希望ホヤ
小児癌に苦しむ娘を治したいと、医者でも科学者でもない父親が、癌治療の研究を始めました。彼の研究がもたらした、誰にとっても予想外の結末とは?やるせないストーリーでした。

□ 冬至草
第二次世界大戦直後まで、北海道に生息していた、冬至草という植物。ウランを含んだ土壌に生息したため放射能を帯び、夜間に発光した、という記録もあります。この幻想的な植物の研究に、異常なほどの情熱を傾けた、市井の研究者の物語。異様で、壮絶です。

他に、
△ 月の・・・
□ 目をとじるまでの短い間
△ デ・ムーア事件
△ アブサルティに関する評伝

全体として、たしかにSFなのだけれど、物語のたたみ方がSF的ではないものばかり。テイストとしては、純文学っぽいです。巻末の初出一覧を見たら、「希望ホヤ」以外、文芸誌に発表されたものが多く、やっぱりなあ、という感じでした。

なんだか惜しい本なんです。もう一歩どこかが突き抜けたら、ものすごい作品が生まれそうな気がする短編ばかりなんですけど・・・。

著者は、医師として成功していらっしゃる方らしいので、理系の用語や薀蓄などは、読者に合わせて努力しておさえていらっしゃるのでしょう。それが少し窮屈で不自然な印象があります。百科事典や論文の丸写しのような専門用語の羅列で、理系の雰囲気を演出しているだけの、読者を上から見下ろしたがっているような小説よりはずっとずっとましで、好感度も高いので惜しいです。

ネタは面白いし、イメージは美しくて哀しくて、私が好きなタイプの小説なので、それを描写する文章に、もうちょっと飾りや遊びがあってもいいんじゃないかなあ、と、思いました。無駄のない淡々とした筆致ではあるのですが、あと一歩で、「静謐」とか「研ぎ澄まされた」とか、そんな雰囲気の文章になりそうなんです。

生意気な感想で、大変申し訳ない。でも、すごく、将来性に期待しています。他の作品も、きっと読みます。
| あ行(その他の作家) | 11:16 | - | - |
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