 | 図書館内乱
有川 浩
メディアワークス 2006-09-11 |
堂上&郁の不器用恋愛の破壊力は、相変わらずすさまじいです。2人の会話が甘いんだ甘いんだ甘いんだー!それに、堂上ったら、郁の頭なですぎだし、優しいセリフ吐きまくりだし。これで堂上の気持ちに気がつかない郁もすばらしいけど、ばれてないと思える堂上もすばらしい。すばらしく鈍い!拍手!
それに今回は、恋愛戦線に小牧が参入していて、これがまた激甘!幼馴染の女子高生と、年の差恋愛です。そもそも小牧は、堂上よりずっと王子様的キャラクターでかっこいいことこの上ない上に、「本気で好きだから我慢してるんだよ」っつう、乙女心刺激しまくりの王道路線を、惜しげもなく照れもなく披露してくださって、その分読んでるほうが照れます。悶絶。キャー。
さて(笑)。
この本は、タイトルからわかるとおり「図書館内乱」が描かれているので、メディア良化委員会VS図書隊という単純な2極構造の対立ではなく、図書館、あるいは図書隊内部の派閥抗争が縦糸になっています。だから戦闘シーンはありませんが、理論武装の対決はなかなか楽しめます。理論武装って言うか、へ理屈って言うか・・・。
そして柴崎が、それらを全部見切っている“できる女”として登場して、今回はわりとかっこいいです。彼女があんな性格に育っちゃうまでの苦労話や、「情報部」なんて裏設定も出てきて、面白かった。郁と柴崎は両方とも、デフォルメされた“乙女”ですね。一作目では、女子受けするキャラクターばっかりの本だなあと思いましたが、今回は、柴崎&小牧の彼女の毬絵ちゃんで、男子受けもばっちりです(か?)。
エリート手塚は、とんでもない兄が登場して、家族ぐるみでどっぷりと図書館内乱に浸かっていることが明らかになります。そっかあ、お前ブラコンだったかあ。それに、マザコンだしな。彼の優秀さは今回あまり強調されていませんが、前作に比べると、彼なりの精神的成長を見せてくれていて、お姉さん的にツボでした。終盤の柴崎&手塚の会話が、個人的に超お気に入り。手塚、いい奴だな〜。かなり可哀相な設定だけど、がんばれ!
シリーズ化が決定したことで、ストーリーも長期戦の構えで、シリーズ全体の読み応えをアップさせてくれる1冊です。キャラクターそれぞれの心情や、キャラクター同士の人間模様が、より広く、より深く描かれています。1話目で前作からの流れをきちんとおさらいし、2・3・4話目でサブキャラをフューチャーしつつストーリーを進め、5話目で一応『図書館内乱』という物語をたたみつつ、ヒロインがきっちり次へひっぱる。シリーズ2作目として計算されつくした1冊で、技術賞もの。素直な良い読者の私としては、続きが待ちきれません。
少年法に絡んだ実名報道に対する問題提起とか。正義の味方なんて現実にはいなくて、綺麗事では戦えないとか。耳と胸の両方が痛い「一刀両断レビュー」事件とか。
書いておきたい事は、もっと色々あるような気がしますが、やはり、郁は明日どうするのかっていうか、どうなっちゃうのかっていうのが、1番気になります。ああ、続きを!早く続きを〜!
・両親霍乱作戦
・恋の障害
・美女の微笑み
・兄と弟
・図書館の明日はどっちだ