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▲ ダブル 永井するみ
ダブルダブル
永井 するみ

双葉社 2006-09

若い女性が突然、路上に飛び出し、車に轢かれて死亡するという事件がありました。事故と他殺の両方が疑われたこの事件は、その女性がかなりの肥満で、はっきり言えばブスであったことから、「いちゃつきブス女事件」として、世間の注目を集めます。真相がわからないままに、世間から忘れられそうになったころ、すぐ近所で第2の事件がおこります。今度は、中年の男性が地下鉄の階段で転落死し、こちらも事故と他殺の両面から捜査されます。この男性は、声の高いオタク男でした。

雑誌記者の相馬多恵は、この事件の取材をすすめるうちに、1人の女性にたどり着きます。柴田野々香は、外見は小柄で可愛らしく、夫の好むパステルカラーの服を身につけ、話し方もおっとりとしていて、清楚なお嬢さん風。現在は妊娠中で、幸せの真っ只中です。彼女とこの事件の間には、どんな関わりがあるのでしょうか?

外見で人を判断してはいけない、というのは誰もが正しいと言う建前だし、人は見かけによらない、ということも、たいていの人が実感したことがあるはずです。でも、実際には常に、人は外見で判断され続けているし、自分も人を外見で判断してしまう。外見から受ける印象に感情が左右されるのは、人間としてあたりまえで、どうしようもないことなんですよねー。でも、だからこそ「外見で人を判断してはいけない」と、自分に言い聞かせ続け、理性を働かせて正常な判断をくだそうと努力するのが良識だと思うのですが、それをしない主観的で自己中心的な人間もたくさんいる。

この本では、何をしていても自分には影響のない赤の他人を、見た目や声が悪いという理由で、不愉快だと思う心理について描き続けていきます。「いなくなってくれたらスッキリするかもね〜」という程度のものから、殺したいほどの憎しみまで。だからこの本には、自覚のない傲慢さと、悪意が満ちていて、すっごく読み心地が悪かったです。その「うざい!」という気持ちが、わかってしまう自分も嫌なら、自分が周囲からそう思われている可能性も考えずにはいられなくて、読んでいてどうにも嫌な気分になる本でした。

これだけ読者を嫌な気分にさせるのですから、好きにはなれない本だけど、かなりの力がある本だと思いました。

主役で探偵役である多恵が、正義感に燃えて、被害者に同情しているような、型どおりのヒロインであれば、もっと読みやすい本になったと思います。でも多恵もまた、主観的で自己中心的な人間の一人です。ライターとしての自分の評価が低いことに焦っており、キャリアを少しでもあげるために、この事件を利用しようとしているだけの、あまり好感を持てないヒロインです。男社会で戦う多恵と、家庭に収まった野々香は、対称的でありながら、2人とも「嫌な女」の典型であって、このキャラクター配置が、読者の「嫌な気分」を増幅させます。とても永井さんらしくて、実に上手い!と、思いました。

亡くなった人たちは、周囲から「うざい」と思われていたかもしれないけれど、本当に身近にいた恋人や、家族や、同僚からは、愛され、頼りにされていたのかもしれない。その点が描かれていた事は、少しだけ救いでした。
| な行(永井するみ) | 00:21 | - | - |
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