CATEGORIES
LINKS
<< ▲ 水曜日のうそ クリスチャン・グルニエ | main | ● 出口のない海 横山秀夫 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
■ 記憶汚染 林譲二
記憶汚染記憶汚染
林 譲治

早川書房 2003-10

破滅的な原発テロの教訓から、携帯情報端末による厳格な個人認証が課された近未来日本社会。土建会社社長の北畑は、奈良の弥生遺跡から謎の文字板を発見するが、なぜかそれは200年前のものと推定された。いっぽう痴呆症研究に従事する認知心理学者・秋山霧子は、人工知能の奇妙な挙動に困惑していた。2つの事象が交わったとき、人類の営為そのものを覆す驚愕の真実が明らかになる―それは新たなる破滅か、それとも。
amazon より

ずっと気になっていたのですが、やっと読めました。近未来SFなのですが、テーマは歴史ということで、個人的にはツボでした。SF好きにはオススメですが、SFに慣れていない人には、設定の説明が延々と続くのが読みにくく感じられるかもしれません。わたしは、面白かったです。恩田陸さんの「光の帝国」シリーズや、「劫尽童女」のような雰囲気。民俗系伝奇SF。さかのぼると、半村良さん系ってことになるのかな。

つっこみどころはたくさんあるんですよ。たとえばこの本の中では、携帯情報端末の普及で人々は経験を共有できるようになり、その結果、新しい世代はどんどん、他人に優しく親切になっている、という設定です。そんなことってあるのかなあ。テロ対策というしかるべき理由があるとはいえ、厳格に管理されれば社会には不満がたまるだろうし、一人一人の個人にだってストレスがかかってくると思う。逆に、他人に親切にする余裕なんてなくなって、殺伐とした社会になってしまうんじゃないのかな。

それに、わたしたちが知っている「歴史」が、真実だろうが、そうではなかろうが、過去であることに変わりはない。「歴史」がどれだけ改ざんされようと、地球の将来なんて、なるようにしかならないよ。と、思ったよ、私は・・・。

たしかに、ほんの少し前まで、戦争も奴隷も正義だったのに、今ではそれを悪と信じて糾弾してるなんて、人間の変わり身の早さには改めて驚いたけど。そしてそれでもなお、「実態は戦争」「実態は奴隷」である数々の悲劇を、くさい物にはふたをしている人類には、いつも呆れるけど。そういうのって、一部の人の情報操作だけでおこる現象じゃないと思う。きっかけではなく根本原因は、社会という大きな生物の意志か、人類という種全体が、見たくないものが見えなくなる、弱い種だということだと思います。

設定がやけに壮大な割に、物語は小さくまとまってしまったのでもったいないような気はしましたが、色々と考えさせられる部分もあって、まあまあ、いい読書ができました。
| は行(その他の作家) | 23:11 | - | - |
スポンサーサイト
| - | 23:11 | - | - |