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● 残虐記 桐野夏生 
4104667013残虐記
桐野 夏生
新潮社 2004-02-27

by G-Tools

実際にあった少女監禁事件を元にした、と、思われる、10歳の少女の監禁事件と、その事件が彼女の心に与えた影響、そして彼女のその後の人生の物語です。

成長し、小説家になったかつてのその少女が失踪するところから物語は始まります。彼女は親しい編集者にあてて、過去に自分に起きた事件を描いた小説を残しました。誰にも語った事のなかった、自分と犯人との関係、監禁中の生活の実態。それは、22年後に初めて明かされる「真実」として、読者に提供されることになります。その描写はとてもリアルです。

しかし、これは本当に「真実」なのか?という疑問は常に読者につきまといます。たとえば、作中作の中で主人公は独身をつらぬいていますが、実際の彼女には夫がいることを、読者は冒頭の「夫から編集者への手紙」で知っています。いったい何が「真実」なのか、あれか、これか、それとも?などと読者は考えをめぐらすことになります。

この本の大きなテーマとなっているのが、「想像力」というものの残酷さです。彼女は事件後、周囲の人間の「想像の愉楽」に傷つけられつつ、自分もそれを楽しみ、そこに逃げ込むことでなんとか生き抜いています。この本が上記のような複雑な入れ子構造になっていることで、読者も「想像の愉楽」を実体験することになります。読み終えたとき、読者は自分の中に、彼女が憎悪し恐怖しているものを、見出すことになるのです。

桐野夏生、恐るべし。です。

それにしても、監禁事件を含めて、全ての性犯罪の犠牲者やそのご家族には、読んで欲しくないです。きっととても傷つくと思うから。それに、おそらくそれを考えて、この本を酷評された方も多かったでしょうねー。でも、そんなこと全部わかっていて、わざと、あえて、それを描いていく。桐野夏生さんという人は、いろんな意味で、強い方ですね。
| か行(桐野夏生) | 21:59 | - | - |
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