CATEGORIES
LINKS
<< ▲ トンスラ 都築浩 | main | あなたとわたしの物語 小手毬るい >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
■ 夜の朝顔 豊島ミホ
夜の朝顔夜の朝顔
豊島 ミホ

集英社 2006-04

なんにもない田舎で暮す、センリという小学生の6年間を追った短編集。喘息の妹への複雑な思い。いじめられっこだったり、女王様だったり、親友だったりするクラスメイトたちとの微妙な距離感。好きな先生への思い。そして初恋。

子供にだって小さいながら社会はあり、その不条理に傷つき、苛立ち、無力感を味わい、複雑な人間関係に神経をすり減らして・・・。そういえば、あの頃だって、大変でしたよね。
あの頃の記憶には「しこり」が多い。楽しい事だってたくさんあったはずなのに、思い返すと、砂利を噛んだような気分になります。・・・明るい子どもでいることにせいいっぱいだったので、淋しいとか、心細いとか、腹立たしいとか、そういう気持ちを出す余裕がなく、言葉にならない形で後に残ってしまったからかもしれません。

あとがきより。
本当に、このあとがきどおりの本でした。小学生が主役だけど、大人のための本です。

豊島さんは記憶力がいいなあ、と、感心してしまいました。あのころの言葉には出来なかった気持ちを、こんなにもちゃんと覚えているなんて!

私は、小学生の時に行った遠足の場所なんて、1つも言えません。遠足に限らず、小学校前半の記憶は断片的にいくつかのシーンを覚えているだけで、基本的にありませんし、小学4年生の記憶もかなりあやしい。就学前の幼児期の記憶なんて、まったくありません。

能天気に楽しく暮していたであろう、その頃の記憶がないことを、損だ、と、思っていたけれど、よく考えてみれば、その頃はその頃なりに大変だったんでしょうね。だって、私の記憶にある小学校後半には、やっぱりこの小説に描かれたのと同種の「しこり」があるんですから。

胸がざわざわと騒ぐというか、ときには鈍く痛むくらい、苦味のある本で、好きな本、とは言えません。でも、これを書いた豊島ミホさんの感性には、かなりビビッときたかも。いいとこ突いてくるなあ!オリジナルだなあ!って感じがします。豊島ミホさんに感性の似ている作家さんを、わたしは知りません。

今までに書かれた本で、自分の過去の記憶の「しこり」を小学生時代まで出しきってしまった豊島ミホさんが、これからは、どっちの方向に進んでいくのか、次の作品の題材に、とても興味があります。

○ 入道雲が消えないように
△ ビニールの下の女の子
□ ヒナを落とす
□ 五月の虫歯
□ だって星はめぐるから
○ 先生のお気に入り
○ 夜の朝顔

「五月の虫歯」だけは、センリの世界からちょっと飛び出したような気がする作品。気がつけば、これだけ、書き下ろしなんですね。フィリピン人の母親を持つ少女の、児童虐待がテーマになっています。虐待の原因になったストレスというか、圧力の原因が容易に想像がついてしまい、本当に苦い本でした。周囲の人々の温かさが、救いではありましたが。
| た行(豊島ミホ) | 23:52 | - | - |
スポンサーサイト
| - | 23:52 | - | - |