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● まほろ駅前多田便利軒 三浦しをん
まほろ駅前多田便利軒まほろ駅前多田便利軒
三浦 しをん

文藝春秋 2006-03

だいぶ前(とはいえ、直木賞受賞決定後ですが)に読んで、感想も書いたのに、UPするのを忘れていました。古い文章になりましたがそのままあげちゃいます。季節ものは、季節ものである時の感想と、ブームが去った後、1人で勝手に読んだときの感想が、大きく変わることがあるので、その変化も、読書日記の楽しみの一つですよね。

この本は、まあ、あちこちで言われているように、官能的なシーンのない同性愛文学の流れをくんでいるところが魅力でしたね。ぶっちゃければ、セックスのないBLですね。

天然というかワイルドというか、どこか思考回路がぶっ壊れている変人、行天。普段は無口で無害で飄々としているけれど、実は観察力も洞察力もあり、頭はいいし、ケンカは強いし、度胸もある。

そんな彼に転がり込まれる、クールに見えるけれど実はお人よしの便利屋、多田。彼は高校時代に行天に怪我をさせてしまったという後悔を背負っていて、破天荒な行動ばかりする行天に、振り回され続ける。

それぞれに魅力的な男性二人が、便利屋として共同生活をしながら、様々な人間模様を見つめ、お互いの過去を知り、徐々に距離を近づけていく。

ってもう、BLのあらすじそのまんまじゃん!ねえ?

BLのお約束をすべて満たしていて、でもBLが苦手な人でも楽しめそうで、女子的には満点の本です。私はBLはほとんど読みませんが、女子の一員として、その魅力はわかるんです。だから、この本のそういう魅力もわかります。

でも男性にとって、それから、女性でもBLの魅力がまったくわからない、その価値観も、お約束も知らない、そういう人にとって、この本はどれくらい面白いのかなあ?

BLうんぬんをいっさい抜かして、この本の感想を書くとすれば、テーマは「親子」あるいは「家族」である、というところが切り口になるんだろうなあと思います。

行天と多田の再会を描いた最初の章では、多田は依頼人から、飼えなくなったチワワを押し付けられて、もてあましています。この件を解決するにあたり、2人は、依頼人である親ではなく、実際にチワワを可愛がっていた小学生の娘に意見を聞こうとします。このあたりのエピソードから、もうすでに「親は親、子供は子供」という2人の多少やさぐれたこだわりが感じられるような気がします。

多田が塾の送り迎えを依頼された少年は、「フランダースの犬」のどこが好きか、と尋ねられると、「ネロに親がいないところ」と、答えます。そんな彼に、多田は、「いくら期待しても、おまえの親が、おまえの望む形で愛してくれることはないだろう。・・・だけど、まだ誰かを愛するチャンスはある。与えられなかったものを、今度はちゃんと望んだ形で、おまえは新しく誰かに与えることが出来るんだ」と言います。

後半は、前半の軽快なテンポの楽しいストーリーとは打って変わって、苦悩する多田の湿っぽい過去が物語の中心になります。依頼人は、赤ちゃん取り違え事件の被害者で、その仕事をしながら多田は、亡くなった自分の子供と、別れた妻との、失った家族について考えています。かなり重いです。

軽いノリで始めておいて、後半で暗い過去とか出てきちゃって、それにより主人公の2人が絆を深めちゃったりするのは、BLのお約束ですが、普通に読んだら、まとまりのない本だなあという感想になります。大の男2人が、進歩のない共同生活を続けていきそうなラストは、BL的には素敵ですが、「親子」とか「家族」をテーマにした1冊の小説としては、踏み込みが浅いと思います。多田のセリフはどれも単なる正論で底が浅いし、行天は本当に魅力的なキャラクターでしたが、やっぱり彼の描き方もマンガ的で浅い。

面白かったんです。とっても。直木賞なんて受賞していなければ、私は一言もケチをつけないで、この本を絶賛したと思います。でも、この本が、直木賞をとったとなると、それはやっぱり納得できないよねー、と、みんなが言っている事を、私も言ってしまいます。だって・・・この作品、「砂漠」を超えていましたか?(って、「終末のフール」派の私すら、そう思うんですよ・・・。)。直木賞が作品ではなく、作家に与えられるものだとしても、あの伊坂さんをおさえて受賞するほど、文壇で三浦さんが認められているとは知らなかった。よよよ。

でも、大好きな三浦さんには文学系腐女子の代表として、ぜひこのわかりやすい路線を突っ走ってほしいし(実は、三浦さんの小説には、私には難しすぎるものもあったりします(^_^;))、この本の続編も、映像化も、期待しています。
| ま行(三浦しをん) | 09:01 | - | - |
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