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■ 今夜は心だけ抱いて 唯川恵
今夜は心だけ抱いて今夜は心だけ抱いて
唯川 恵

朝日新聞社 2006-03

10年前に離婚し、それからは翻訳家として、仕事に生きてきた47歳の柊子。離婚したとき娘から、祖母のほうがよい、と、拒絶されたことが忘れられず、自分には子供などいない、と、言い聞かせています。現在、8歳年下の家族持ちの男と、不倫を始めたばかりです。

家族より仕事を優先し続け、最終的には自分を捨てて出て行った母を、10年間恨み続けてきた娘、美羽。現在高校3年生になり、父・継母・異母弟という家族と、それなりの暮らしをしています。行きつけの喫茶店のウェイター、透に、ひそかに思いをよせています。

この2人が、美羽の父、亮介の海外赴任をきっかけに、ふたたび一緒に暮らすという話が浮上します。そして、その話し合いの最中、エレベーターの事故で頭をぶつけた2人は、心が入れ替わってしまったのです。

18歳の心を持ったまま、47歳の体になってしまった美羽。47歳の心を持ったまま
女子高生になってしまった柊子。2人の恋の行方は?
若いカラダと
熟れたココロ
熟れたカラダと
若いココロ

女はどっちで恋をする。
この帯とタイトルがなあ・・・。これを見ると、濃厚な恋愛小説を期待してしまいますよね・・・。でも、この小説は、違うんですよ。違うんです!恋愛小説として薄っぺらいと言いたいのではありません。ただの恋愛小説と言い切ってしまうのはもったいない本なんです!もちろん、若者の恋愛と、大人の恋愛について描かれていて興味深かったし、勉強になったし、恋愛小説ならではの素敵なシーンも切ないシーンも、醜悪なシーンもたくさんあって、良かったんですけどね。

でも、他にも読みどころがたくさんあったんです。私は、もつれた母娘の間の感情が、どんな風にほぐされていくのか、という点が、メインのあらすじだったような気がします。最初は、実年齢よりさらに精神的に幼いように見えた美羽が、ぐんぐん精神的な成長を見せる。諦めて、ひねくれて、固い鎧をまとって生きてきた柊子にも、優しさが戻ってくる。そして母と娘の特別な絆の復活。読み応えがありました。

人はそれぞれ、相手によって、違う顔を見せる。自分の前にいる時の誰かを知るだけでは、相手を理解することにはならないのかもしれません。「人の裏側なんて知らないことのほうが多い」と、柊子は言いますが、やはり誰かを理解したいと思ったら、相手が表に出さない思いや、他の人の前にいるときのその人の様子を、観察したり想像しなければならないな、と、思いました。べつにストーカーみたいなマネをしろというわけではありませんが。

もちろん、心の入れ替わりという特殊状態にどんなオチをつけるのか、というところで、ストーリーの展開も、すごく面白い本でした。ただこのタイトルや帯を見て、濃厚な「恋愛小説」を求めてこの本を読み始めるような趣味の方には、この手のストーリーは受け入れられないような気がします・・・。非現実的な設定を「子供っぽい」と言い切って、嫌うようなタイプの人だとダメでしょうねー(私の近くにいるんです。こういう人が)。ジャンルにとらわれず、面白い物語を求めている、私のような人間には、丸く収まりすぎのラストまで含めて、楽しめる本でした。この切ない余韻は、好みです。

本当は、少し設定が似ている、「秘密」東野圭吾 と、比較して感想文を書きたい気がする。でも、それをやってしまうと、「秘密」を愛するあまり、この本に対する評価が不当に辛くなってしまう気がする。なので、やめました。この本はこの本として、面白い本でした。
| や行(その他の作家) | 23:26 | - | - |
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