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■ キサトア 小路幸也
キサトアキサトア
小路 幸也

理論社 2006-06

読んでみるまで知らなかったのですが、児童文学でした。児童文学らしくファンタジックな雰囲気の本でしたが、大人が読んでも、好きになれると思う。出てくる人たちがとにかく温かくて、心に残るたくさんの言葉がちりばめられた、素敵な本でした。優しい気持ちになれる一冊です。

主人公は、目が悪くて色がわからない少年、アーチ。アーチには、キサとトアという、双子の妹がいます。この双子も病気です。キサは日の出とともに起き、日の入りとともに眠ります。トアは、日の入りとともに起き、日の出とともに眠ります。自分の意志で眠りの時間をコントロールできないのです。
 キサは普通に学校に行って友だちと勉強して遊んでいられる。ほんの何時間か、普通の子より起きるのも寝るのも早いっていうだけのこと。
 日が沈まないうちに晩ご飯を食べて、葉をみがいて顔を洗って、そしてパジャマを着てベッドに眠るトアの隣に入っていって、トアが目覚めるのを待つ。
 僕もいつもそばにいる。
 家の窓から見える海に夕陽が沈みはじめると、トアがゆっくりおきだして、でもキサは少しずつ眠りだして、二人はうつらうつらしながらほんの少しだけの会話をする。
 おはようトア、おはようキサ、今日はいい天気だったよ、昨日はお月様が満月だったよ、おやすみキサ、おはようトア。
 2人はそうやってすれ違ってしまう。
 おやすみおにいちゃん、おはようキサ、おはようおにいちゃん、おはようトア。
 キサが眠ってしまったベッドを出て、夕陽が完全に沈んでしまった時間から、トアの一日が始まるんだ。
アーチもキサもトアも、病気なのですが、やはりトアが、一番かわいそうでした。でも、そのトアを常に気遣う家族や、町の人々の様子には、心温まるものがありました。

主人公はアーチですが、やはりタイトルになっている、キサとトアが、物語のキーパーソンなんですね。キサとトアという、特殊なすれ違い生活を送るしかない病気の2人を、母親のいない家庭で、父が、兄が、そして町の人々が、どのように見守り育てていくのか、そこでどんな人間が、そしてどんな人間関係が形成されていくのか、そんな物語だったんだと思います。

たとえばアーチにだって、色がわからないという障害がある。それでも、そのことを後ろ向きに考えることはいっさいなく、それを才能の一部として素晴らしい芸術作品を制作し、2人の妹を優しく守る、素敵なお兄ちゃんに成長しています。アーチは、素敵な少年でした。

さて。三人の父親、フウガさんは、水平線から日の出と日没の両方が見えるこの町が、キサとトアにもよいのでは、と考えて、この町にやってきました。フウガさんは「風のエキスパート」です。夏になると吹く「夏向嵐」(かこらし)をしずめることができます。「風のエキスパート」以外にも、色んな「エキスパート」がいるようで、町の人たちは、静かに自然と共生しています。どうやらアーチにも「エキスパート」の素質があるようです。

家族、友人、病気、自然と人間の関わり方、など、色んなテーマのつまった小説でした。読むたびに違うところが印象に残りそうなので、これは、買って手元に置いておきたいですね。
| さ行(小路幸也) | 22:33 | - | - |
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