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● 廃用身 久坂部羊
廃用身廃用身
久坂部 羊

幻冬舎 2003-05

もう、誰に最初に薦められたのかわからなくなってしまったくらい、色んな人に薦めていただいていて、やっと読めました、「廃用身」。廃用身とは、麻痺し、直る見込みのない手足のことです。介護する側にとっては、重く邪魔なものですし、本人にとっても、動く部分のリハビリの邪魔をしたり、無駄に体重を増やしたり、ないほうがまし、と、思えることがあるようなものだそうです。

そういう手足を切り落としてしまうことで、患者のQOLを上げ、介護者の負担も減らそうとした医師がいました。漆原医師は、それをAケアと呼び、自分の勤めるデイケア施設で、その治療を始めます。最初の患者は、両足と片腕が麻痺した大柄な男性でした。彼は、両足を切り落としたことで40圓曚病僚鼎減り、残った足の付け根の部分だけで自力歩行し、車椅子にも自分で乗れるようになり、重い床擦れが直り、精神的にも見違えるほど明るくなりました。この治療法には、いいところばかりのように見えました。やがて同じ施設の何人もの患者がこの手術を受け始めます。

正直言って、序盤、文章が下手だな、と、感じました。少なくとも、小説の文章ではない。素人の書いたノンフィクションのような文章だと思いました。それに「医療ミステリー」とあるのに、まるっきりノンフィクション調で、それがずっと続いたので、どういうことだろう?と、思いました。しかし、そのことが、こんな伏線になっていたとは!すっかりやられました!

確かにこの本は、医療ミステリィでした。中盤からは、やられっぱなし。構成もすごく上手いし、物語の展開も波乱万丈で、一気に読んでしまいます。Aケアが老人たちに、そして、漆原医師にもたらしたものは何だったのか。中盤以降の怒濤の展開には、言葉もありませんでした。これでもか、というくらい、ショッキングな本でした。

好き嫌いの問題ではなく、一読の価値がある本でした。すごかった!

現在の老人介護の悲惨な実態を知り、要介護者がどんどん増えていく将来の、超高齢化社会に対する危機感を、もっと持つべきなのだと訴えている、社会派の問題提起小説なのだと思います。

しかし、それだけではない本です。人間が心のどこかに持っている残虐性や、ある種の人の異形や奇形に対する憧れ、そんなものについても迫ろうとしています。サディズムとか、フリークスとか、そのあたり。医療ミステリィという性格上、そのあたりは突き詰めきれていないところが残念ですが、これも文学の1ジャンルとして、あり、ですよね。
| か行(久坂部羊) | 09:33 | - | - |
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