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▲ ロスト・ストーリー 伊藤たかみ
ロスト・ストーリーロスト・ストーリー
伊藤 たかみ

河出書房新社 1999-02

僕と、兄(アニー)と、アニーのかつての恋人、ナオミは、微妙な距離を保って、3人で暮していました。しかし、ある日ナオミは、恋人と僕に書置きを残して失踪してしまいます。「失くした自分の物語を探す」ために。そして僕は、そのナオミを探すことになります。

読み始めてすぐにわかる、このややこしい人間関係も、謎が多くて物語に引き込まれる上手い導入でした。ここに、ナオミの妹だという人物が、ナオミのいない部屋を使わせてくれと言い出し、人間関係はさらにややこしいことになってきます。ナオミの行方と、失踪の理由だけでなく、僕、アニー、ナオミ、ナオミの恋人、ナオミの妹、登場人物すべてが、誰が誰の事をどう思っていて、何を探して何をしているのか、そのすべてが謎につつまれていて、読ませます。

文章の、湿り気を帯びた不思議な雰囲気が、恐いようで、哀しいようで、寂しいようで・・・なんとも言えずいい感じ。雰囲気だけなら、かなり好きな本です。でも、ただ、雰囲気だけを楽しんで読むには・・・長すぎる本です。

ストーリーは、謎が謎を呼ぶ前半、とても面白かったんです。ただ、その謎の解決編である後半が、よくわからない。たんにわたしが馬鹿なだけという可能性もあるのですが、解決したのか、していないのか、それさえわかりませんでした。ミステリィだと思って読んでいたものが、実は心象風景描写文学だった、という感じです。

ミステリィだと思って読んでいたら、ファンタジーやホラーだった、というのは、個人的に嫌いなパターンですが、それでも一応の回答はもらえるので、納得はする。するしかない。この本の場合、答えはどこにもなく、もやもや感だけが残ってしまいます。そもそも、無理やりジャンルわけするなら、これはミステリィではなく、初めからファンタジーだと思って読むべきだったんでしょうねー。うん。そうすれば、答えがないことを、余韻として、いいほうに感じられたかもしれません。読み方を間違えました。

「これは、何の写真でしょう?」と、言われて、その写真を色んな方向から見たり、遠くから見たり近くから見たりして、一生懸命考えていたら、答えは、「天才画家の抽象画を写真に撮ったもの」だった・・・みたいな本でした。

雰囲気が好きなだけに、前半が面白かっただけに、わりと残念でした。哲学とか、純文学が好きな人には、楽しく読めるのかもしれないし、わけがわかるのかもしれません。
| あ行(伊藤たかみ) | 12:44 | - | - |
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