CATEGORIES
LINKS
<< ■ ジャンピング・ベイビー 野中柊 | main | ▲ ロスト・ストーリー 伊藤たかみ >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
● 雨のち晴れ、ところにより虹 吉野万理子
雨のち晴れ、ところにより虹雨のち晴れ、ところにより虹
吉野 万理子

新潮社 2006-07-20

すっごく良かった!超、好き!特に女性にはオススメ!男性でも、好きな人は好きだと思う。

もしかしたら、ミステリィ以外で、ものすごく好きになれる作家さんを、久しぶりに発見しちゃったかもしれません。この本がいいだけではなく、この本から著者の才能も、将来性も、ひしひしと感じます。ワクワクします。完全に若者向けだった前作「秋の大三角」からは、ずいぶんジャンプアップしています。

わたしはこの本を、図書館の新刊本コーナーでたまたま見つけて、ジャケットの美しさにひかれて借りてきました。でも、うちの近所の何軒かの本屋さんには、この本はおいてありませんでした。もしかして、まだあんまり売れてないのかなあ?もったいない!すごく、いい本ですよ!騙されたと思って、読んでみてください!「号○する準備はできていた」や「風に○いあがる○ニールシート」が、直木賞をもらえるなら、この本にも、直木賞をあげたい!と、思うくらい、いい出来だと思います。全国の本屋さん、この本をもっと売りましょう!ぜひ、本屋さん大賞を!

帯に、
いつかは壊れるものなら、最初からいらないと思っていた。
同じ想いにならないのなら、
この人を好きになることはないとおもっていた。
と、あったので、恋愛小説かと思ったのですが、それだけではありませんでした。夫婦、親子、友人など、色んな人間関係がテーマになった、短編集です。どの短編も、湘南が舞台、という共通点はありますが、とくに連作になっているとかいうことはありません。(追記:いや、連作だ。それも、長編と言っていいほどの連作だ。というご意見が多いようです。実は、今では私もそう思ってます。この感想を書いた時点では、全然読めていなかったんですねー。長編とまでは思わないけど、これは見事な連作短編集です。詳しくは、本を読む女。改訂版+ChekoaLibraly+のブログの記事をご覧ください。2006.08.24)それぞれの短編が、それぞれの色を主張している、バラエティにとんだ、読み応えのある短編集でした。基本的には「ちょっといい話」が多く、やさしくて、さわやかで、気持ちのいい、癒される本です。強烈なインパクトがあるストーリーではありませんが、とにかく、いい本です!

これから、私自身の備忘録として、各短編のあらすじを、さわりだけ書きますが、ぜひこんなものは読まないで、本のほうを読みましょう!ぜひ!本屋になくてもamazonへ!



□ なぎさ通りで待ち合わせ
渉と美也子の夫婦は、現在ケンカをして別居中。出て行くときに美也子が残した言葉は「本質的に私たちって合わないのよ。味覚だってなんだって。」でした。肩のこらないチェーン店と、ジャンクフードが好きな渉。雰囲気のいい店で、オシャレに食事を楽しみたい美也子。洋食でも箸で食事をしたい渉と、自宅でもバカラのグラスでワインを飲みたい美也子。2人の食事に対する感覚はあまりにもかけ離れていて、2人は「味覚の不一致」による離婚の危機に直面しているのです。

2人とも真面目に悩んでいるんだけど、どこかユーモラス。現実に生活していくうえで「味覚の不一致」って確かに一大事なんだけど、小説になると、やっぱりクスッと笑えます。この問題を、解決しようと、渉の父、勝弘が乗り出してくるのですが、このお父さんがとても素敵です。いい話でした。

○ こころ三分咲き
予備校教師の母親、多香子に、女手1つで育てられた優花。この作品は、親子関係がテーマになっています。優花と多香子の関係はしごく良好ですが、登場するもう1つの親子関係は悲惨です。近所の人たちが心配するほどの、ひどい児童虐待が行われているのです。ある日、あまりにひどい暴力が行われていることに気がついた多香子が、子供たちを助けに飛び込もうとしたとき、恐ろしくなった優花は、多香子を引き止めてしまいます。そして、その後ずっと、そのことに罪悪感を抱き、子供たちと関わっていくようになります。

2つの親子が、どんな結末をむかえるのか、優花がどんな成長を見せるのか、短編とは思えない内容の濃さでした。良かった!

□ ガッツ厄年
いわゆる、30代のワーキングガール小説です。由衣は、今まで順調にキャリアを重ねてきましたが、上司の立場になった今、後輩OLからパワハラで訴えられて、窮地に陥っています。由衣の先輩や、同僚や、後輩など、たくさんの働く女性が彼女を励ます言葉に、いちいち共感できます。でも、押し付けがましい「共感ください小説」にはなってなくて、楽しく読めました。由衣と、後輩OLとの対決は、見ごたえがあります。いやー、女って怖いわ。でも、女の友情は、ありがたいわ。

由衣の彼氏、という存在が、物語の展開に、大きな役割を果たしているのですが、この男が本当にもう、実際にどこかにいそうなリアルなダメ男で、憎めない感じでした。笑わせてもらいました。

☆ 雨のち晴れ、ところにより虹
30代で末期ガンの宣告を受けた須藤は、今、ホスピスで暮しています。84キロの巨体の看護婦、いつも明るく、素直で、さっぱりした常盤さんが彼の担当で、彼女との会話を須藤は楽しみにしています。ところがあるときから、常盤さんは、顔色が悪くなり、他の看護婦にも心配されるほど痩せ始めました。その理由とは?

ホスピスで死を見つめる須藤の心の動きには読み応えがありましたし、須藤と常盤さんの温かい関係は、感動的でした。これ以上長いストーリーになってしまうと、ベタで鼻につくような物語なのですが、短くまとめたことで成功していると思います。ラストシーンは最高!いいお話でした。

☆ ブルーホール
素潜りをして魚を取っていた時代から数えれば、60年のベテランダイバーのオジイ。息子もオジイのあとをついで、ダイバーショップを経営しています。オジイは孫の雄貴にも、海の男になって欲しいと願っています。しかし、雄貴の憧れは空へ向けられています。彼の夢は、パイロットになることなのです。でも、オジイの気持ちを知っている雄貴は、そのことをなかなか口に出せません。

ストーリーはほぼ、オジイと雄貴、そして2人が釣りをしているところにあらわれた、パイロットのおじさんの、3人の会話だけで進みます。海の男のプライドも傷つけず、少年の空への夢も壊さない、おじさんの話術は見事です。見習いたい!パイロットより、営業マンとかカウンセラーとか、人と話す仕事にむいてるんじゃ?

3人の会話が終る頃、雄貴の夢が変わります。これがまたいいんだ!素敵なんだ!

□ 幸せの青いハンカチ
大学で友達があまりできず、職場にも馴染めずにいる、佳苗の一番の親友は、大学時代の友人、佐和子。その佐和子が結婚することになりました。佳苗は、寂しさを感じながらも、佐和子を祝福しようとしています。スピーチも頼まれ、緊張しています。佐和子が披露宴の会場に選んだ逗子マリーナは、佳苗と佐和子の思い出の土地です。ところが披露宴の途中で、佳苗は、逗子マリーナが、佐和子と新郎との思い出の土地であることを知ってしまいます。

自分と佐和子の思い出の土地が、佐和子にとっては夫との思い出の地。佳苗はすっかり落ち込んでしまうのですが・・・。女友だちが結婚してしまうときの、悪意でも嫉妬でもないけれど、祝福だけでもない、寂しさや羨ましさを見事に描いた良作。エンディングの爽やかさも、リアルじゃないけど、いいです。いいお話でした。佳苗も幸せになれますように。
| や行(その他の作家) | 14:58 | - | - |
スポンサーサイト
| - | 14:58 | - | - |