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▲ アンダーソン家のヨメ 野中柊
アンダーソン家のヨメアンダーソン家のヨメ
野中 柊

福武書店 1992-09

△ ヨモギ・アイス
これが、野中さんのデビュー作。国際結婚をして、アメリカで夫と暮らすヨモギの日常を描いています。ヨモギは「doing nothing」をモットーに、できるだけ何もしないで生きようとしているのですが、アメリカでそうすることは、逆に疲れる生き方なんだそうです。確かに、アメリカ人って、社交的で活動的、エネルギッシュ、っていうイメージがありますもんね。その中で、「doing nothing」なんてものをモットーにしようと考え、それをつらぬくヨモギは、ある意味とても、強い人だと思いました。こういう強さがないと、国際結婚とか、海外暮らしとか、無理なんだろうなあ。

でも、この作品の中でヨモギは、「強い人」として描かれているわけではありません。もっと力の抜けたキャラクターです。ホワホワした、少女のような、可愛らしさのある女性で、ひきつけられる主人公でした。でも、著者の、その「力の抜けた感」を出すことに気合を入れました!っていう感じが滲み出ていて、ああ、やっぱりデビュー作なんだなあと思いました。素人くさくも、下手でもないんですけど。

登場するアメリカのアイスクリームがおいしそうでしたね〜。私もアメリカのアイスクリームのチェーン店には、ついつい吸い込まれてしまいます。

第10回海燕新人文学賞受賞

△ アンダーソン家のヨメ
やはりアメリカにも、「嫁」という概念はあるんですね。家制度の中で、ある意味完璧な型があり、儒教的な上下関係で行動のすべてが規制され、従っていればそれで楽、という日本の「嫁」も大変ですが。個人主義の国であってもやっぱり「ヨメ」は自由じゃない。家族としての結束が固い、アメリカという国だからこそ、しがらみは強烈です。

彼を愛しているというだけで、アンダーソン家に嫁いだマドコは、「自由」の国であるはずのアメリカで、数々のしがらみに苦労することになります。日米の文化の違いという大きな壁もあって、主人公マドコは本当に大変です。でも、ヨモギよりずっと元気で、生き生きとした、マドコのキャラクターが良くて、苦労話という感じではなく、楽しく読めました。



ちょっと、時代を感じる本でした。今、アメリカのイメージって、別に「自由」の国とか、カラフルでポップな憧れの国っていう感じではないですよね。10年やそこらで、アメリカのイメージが変わった気がします。強引で、プライドの高い、戦う国というイメージ。自己主張をしなくちゃいけなくて、勝たなければいけない、暮らすには大変そうな国というイメージ。このイメージの変化は、私だけでしょうか・・・。

2作とも主人公の考えることに、野中さんご本人の感想が投影されている感じも、ものすごく滲み出ています。あとがきによると、どうやら猫にも、野中さんの亡くなった愛猫が投影されているらしいです。

野中さんの最近の本とは、ずいぶん印象がちがったのですが、この作品はおそらく私小説というか、エッセイ的で(野中さんは実際に国際結婚をされて、海外在住中のデビューであったと、著者紹介に書いてありましたし)。最近の野中さんの作品は、「プロの作家の想像力が生み出した世界」なのだと思います。

もちろん、この本はこの本として、最近の本は最近の本として、魅力的です。
| な行(野中柊) | 22:07 | - | - |
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