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■ 愚行録 貫井徳朗
愚行録愚行録
貫井 徳郎

東京創元社 2006-03-22

重要なネタバレはなくす努力をしましたが、保証はできません!
一家を惨殺した「怪物」はどこに潜んでいたのか? さまざまな証言から浮かび上がる、人間たちの愚行のカタログ。人間という生き物は、こんなにも愚かで、哀しい−。痛烈にして哀切、「慟哭」「プリズム」に続く、第3の衝撃。
プロローグとして、ネグレクトによる3歳女児衰弱死の事件が扱われます。物語の中心になるのは、6人の関係者へのインタビューによって語られる、エリートサラリーマン一家四人の惨殺事件です。その合間に、「ねえ、お兄ちゃん」という、少女の語りが挿入されます。この3つがどう絡み、どんな真相があぶりだされるのか?というミステリィ。

・・・と、書くと、いかにもショッキングな内容のように思われそうですが、心理描写メインの、どちらかというと地味な小説です。「慟哭」「プリズム」に続く、第三の衝撃、それは言いすぎなんじゃないかと・・・。貫井さんで衝撃といえば、なにかすごいトリックを期待してしまうじゃないですか!(わたしだけ?)全然そういう本ではありませんでした。

基本的に内容は、後味の悪い嫌な感じの本なので、せめて何か、トリックがあって、その謎解きがあって、カタルシスがあって、という快感があれば良かったのに、と、思ってしまいました。とりたてて「衝撃」というほどのものは、何もなかったですねー。ネタバレはしていないつもりのこの感想文ですが、これを読んだだけでも、真相が分かる人には分かってしまうような気がします。

わかりやすい私利私欲に安易に流され、表面だけを取り繕って生きてきた、エリートサラリーマンと、美人妻の、自己中心的な真実の顔。それが死後、周囲の人々によって、赤裸々に語られてしまう。「死者をそこまで悪く言う?生きているときは友達だったんじゃ・・・」って感じです。二人も、周囲の人も、だんだん悪い人に見えてくる。確かに人間の嫌な部分を描いた、後味の悪い本です。(慶応出身の人の感想が聞きたいなあ。本当にああなんでしょうか?)。

でも・・・意外にこの夫婦、底が浅かった・・・残念。哀愁に満ちた愚かさではなく、単に愚か、という感じ。周囲の人もね。だから後味の悪さが、中途半端です。桐野夏生さんあたりの、本物の後味の悪さとは、比べものになりません。

それに、このインタビューという手法、直木賞がらみでは、恩田陸さんが「ユージニア」で落ちて、宮部みゆきさんは「理由」でとってるんですよね。「理由」クラスの大作でないと、直木賞は無理かなあ、と、思います。だって、インタビューが続くという事は、作家の文章力で勝負!という、使い方によっては有力な武器を封印してるんだもんね・・・。不利だと思います。貫井さんのことだから、そこに何かしかけ(叙述トリックとか・・・)があるのかと思ったら、特にそんなこともなかったし。

うーん。この本、貫井作品の中では、はずしちゃったほうだと思うのは、私だけでしょうか。貫井さんの作品には、もっとすごいものがたくさんある!

結局、東野圭吾さんの後釜として、これから直木賞としては、本格ミステリィ畑からは、貫井さんをフューチャーしていきます、って事かな?また何度も候補になっては、落とされるんなら可哀想だな。貫井さんが本当にすごい作品を出してくれたときにはもちろん候補にしていただいて、いつか貫井さんに直木賞作家になって欲しい。でも、広い視点で、色んなミステリィ作家さんに、ちゃんと注目してもらって、ちゃんと認めてもらいたいです。今、ブームじゃないのはわかってるけどさ。



えー。直木賞候補になったので、あわてて読みました。直木賞候補作品連続3作目だったりします。ですから、不当に評価が辛くなっている自覚はあります。それなりに、読み応えはある本です。

| な行(貫井徳郎) | 00:59 | - | - |
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