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■ 余命 谷村志穂
余命余命
谷村 志穂

新潮社 2006-05-30

外科医の滴は、自分が結婚10年目にしてやっと妊娠したことを知りました。しかし同じころ、14年間恐れ続けてきた乳がんの再発にも気がついてしまいます。妊娠は、体のホルモンバランスに影響を与えるため、がんを進行させてしまう可能性があります。高齢出産であることもあり、誰からも出産を反対されることは必至。でも、滴は、どうしても産みたいと考えます。

って、もう、出だしを書いただけで、泣けるじゃないですか。ついでに、ストーリーもだいたいわかるでしょう?泣くに決まってるじゃないですか。ええ、私も泣きましたよ。号泣。

ファンタジーぬきの市川拓司さんって感じです。「いま、会いにゆきます。」系が好きな人は、きっとこの本も好きだと思います。(性別の違う作家さんなのに、2人の作家さんの、セックスシーンの雰囲気が似てるなあ、と、感じるのは不思議ですね。)

でもね。一晩たって、冷静になるとね。そんな名作ってわけでもないっていうか、なんで昨日はあんなに泣けたんだろう、と、思うような本です。(たぶん、飲み会で摂取したアルコールが残っていたせいでしょう。けして、年のせいではなく。)

もちろん、自分の命を削ってでも、新しい命を生み出そうとする滴の思いは感動的なんです。滴と、生まれてきた子供を守っていく夫、良介との絆も素敵なんです。滴が胎児やがんをエコーで見るシーン、がんの花が咲くシーンなど、描写力に圧倒される力強いシーンも印象的なんです。この本の良さは、良さとして、あるんです。

でも、どうしても納得できないことが2つあって。

まず、妊娠中の検診も、乳がんの検査も、自分でできる立場の滴ならではのことではあるけれど、なんで乳がんを治療しないで放置するわけ?

そもそも滴は医者で、乳がんの経験がある。妊娠中にもできる治療があることくらい知っていたはずだと思うし、知らなかったとしても簡単に調べられる立場にあった。もしかしたら、こっそり自分を治療することくらいはできたかもしれない。そうしようと思えば協力してくれそうな友人の医師もいる。なんで、出産したいからって、自分の治療を放棄しなくちゃいけなかったの?治療しろよ!子供に命を託すって言ったって、自分の命をあきらめる理由にはならない!納得できません。

結局、夫、良介を自立させるために、すれ違いエピソードが欲しくて、そのために彼に病気を秘密にする必要があったってことなのかなあ・・・?。いや、まさかそんな流暢な・・・。そうそう、そういえば、この、滴の秘密主義も、2つめの納得できない点なんだよなあ。誰に反対されたって、産むって決めてたんだから、良介には言わなきゃだめじゃん。こんなに大事なことを、妻に秘密にされた良介に、ひたすら同情してしまう。この物語、夫婦の強い愛の物語として成立しちゃっているんですけれど、こんな大きな嘘と秘密が夫婦の間にあったら、後々まで感情的な亀裂をひきずってしまってもおかしくはないと思う。そうならなくてよかったけど・・・良介の寛大さに拍手。

それに、こんな言い方は冷酷なようですが・・・余命、長すぎ。予想より余命が長かったなんて、よくある話ですが、だからこそ、ここまで延ばされると・・・私の涙を半分返してって感じで・・・。そのあたりのロマンチストぶりも市川拓司さんを思い出しました。

というわけで、忘れたころに冷静に再読し、もう一度ちゃんと感じたり評価したりしたいなあという一冊です。
| た行(谷村志穂) | 20:41 | - | - |
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