基本的にわたしは、チェンバロという楽器が好きです。弦をはじく楽器で、音色が一番近いのは・・・ハープかなあ思いますが、ハープより丸い音色がします。その音色が本当に素敵で・・・。「モーツアルトをチェンバロで聞こう」なんていうイベントやコンサートがあると、つい行ってしまいます。
見た目や演奏法はピアノの小型版みたいな感じ。でも、猫足だったりたくさん絵が描いてあったりして、デコラティブで無駄の多い外観の楽器です。そんな華やかな外観の割には、表現力という点で、後年の楽器には圧倒的に劣っているし、繊細すぎて扱いが難しいし、なんだか・・・サリエリみたいな楽器です。そんなところも好き(笑)
ピアノは手が小さくて腱が弱いので向いていない私ですが、チェンバロなら多少は扱えそうな気がする。いつか大金持ちになったら、チェンバロを個人所有したいです。
というわけで、チェンバロが影の主役になった、この本の雰囲気には惹かれるものを感じています。
まあ、ストーリーとしてはドロドロの三角関係+不倫の話なんで・・・。私は、好きじゃないんですけど。
でも、こういうストーリーを、チェンバロという楽器、登場する数々の楽曲、カリグラフィーや、それによってつむがれる物語、別荘の周囲の自然、そういうディティールによって、穏やかで生臭さのない、前向きな癒しのストーリーに仕上げてあるという部分で、小川さんらしい上手さだなあ、と、思いました。