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● カタブツ 沢村凛
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カタブツ
沢村 凛
講談社 2004-07

by G-Tools , 2006/05/07

ものすごく良かったです。この本は大好きです。もうちょっと表紙が好みだったら、もっと早く手にとっていたんじゃないかと思います。

まじめすぎるぐらいまじめに生きる人々を描いた短編集。著者があとがきで、「書いているうちに自分でもだんだんと、まじめな人たちに声援を送っているのか、その滑稽さをあぶり出しているのか、わからなくなってきてしまいました。」と、書いておられるのですが、本当にそんな微妙な雰囲気の本です。

一つ一つの短編の「ネタ」や「オチ」「シカケ」などは、特に目新しくはありません。でもこの微妙な、温かさ、優しさ、おかしさ、悲しさ、そしてほんの少しの恐さの入り混じった雰囲気は、1冊の本として、確かに「世界に例のないテイスト」かもしれません。わたしはとても好きな雰囲気でした。

・バクのみた夢
「ふたりが二度と会わないためには、どちらかが死ぬしかないと、結論がでた。」こんな書き出しで始まる、ラブストーリー。誠実すぎるぐらい誠実で、まじめすぎるぐらいまじめな男女が、結婚して家庭を持ったあとで、ベターハーフを見つけてしまったら・・・。

・袋のカンガルー
いつでも他人の世話を焼いてばかり、頼まれた事はけして断れない、お人よしの「ぼく」と、双子の妹である亜子の物語。この作品は、昔の少女漫画っぽい感じで、なつかしかったです。吉野朔美さんを思い出しました。

・駅で待つ人
改札口の前で誰かを待っている人を、観察するのが趣味、という男の物語。彼の考えによると、駅で誰かを待つというのは、不安に打ち克ち、誰かを、そして未来を信じるという、崇高な行為なのです。さて、いつものように、待つ人を観察していた彼におこった事件とは?

・とっさの場合
「私」は、反射神経に自信がなく、息子が死ぬかもしれない、そして、その時に自分が身動き1つできないかもしれない、そんな強迫観念にかられています。「とっさの場合の行動にこそ人間の本当の気持ちが出る、などという神話をつくったのは、いったいどこの誰だろう。」という言葉に、同じく反射神経に自信のないわたしは大いに共感しました。予想外の素敵なラストで、とてもいいお話でした。

・マリッジブルー・マリングレー
事故にあい、その前の数日間の記憶を失っている昌樹。その間に、自分は何かをしでかしたのではないだろうか、と、不安にかられます。これは、いわゆる、「奇妙な味」の小説だと思います。

・無言電話の向こう側
女性がマンション内で殺されたのに、悲鳴を聞いていたはずの住人が、誰も助けなかった、という事件がありましたよね。あの事件がモチーフになった作品。人間関係に関してとってもまじめな「俺」と、こちらもあまりにまじめすぎて、どうしようもなく不器用な「俺」の友人の物語。爽やかな読後感でした。
| さ行(沢村凛) | 23:09 | - | - |
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