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● 追憶のかけら 貫井徳郎
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追憶のかけら
貫井 徳郎
実業之日本社 2004-07

by G-Tools , 2006/04/15




うん、いい本でした。この厚さで、上下ニ段組、そして一部旧仮名遣い、というところで、読むのを躊躇している方がおられたら、大丈夫だから読んでみましょう!と言いたいです。読み始めてしまえば、面白いし、テンポもいいし、最後まで一気に引っ張ってもらえます。

主人公は、国文学の研究者である大学講師・松嶋。いい人なんだけど・・・。お人よしで、騙されやすくて、流されてばかりの、情けない男なんですよね。でも、とにかく一生懸命ではあって、好きなタイプの主人公でした。

彼は、上司である教授の娘と結婚していたのですが、自分の浮気が原因で夫婦喧嘩をし、妻はちょうど実家に戻っているときに事故で亡くなりました。その結果、妻の両親とは冷戦中で、娘もとられてしまっています。娘と一緒に暮したい。仕事もできれば失いたくない。けれど、義父には冷たくあしらわれるばかり・・・。

そんな絶体絶命の松嶋のところに、戦後間もなく自殺を遂げた作家・佐脇依彦の、50年前の未発表手記が持ち込まれます。手記には、佐脇が死を決意するにいたったいきさつが克明に描かれていました。この手記を発表することができれば松嶋は、画期的な業績を上げることができ、大学に残ることができるかもしれません。

手記の中で、佐脇を追い詰めた犯人についてはわからないままになっていました。佐脇の知り合いだったという手記の提供者から、佐脇の死の謎を解くことが資料を提供する条件である、と言われ、松嶋は、過去の事件を調べはじめます。

小道具となっている、佐脇の「手記」がとてもよかったです。これだけで、単独の青春小説にして欲しいくらい、いけてます。敗戦直後の日本に、生き残ってしまった若い男性は、それぞれ複雑な心情を抱えて生きています。戦争に行ったものは行ったことで苦しみ、行かなかったものは行かなかったことで苦しむ。女性も生きるために、毎日が闘いの連続です。貧困と飢餓の続く中で、若者たちは、それでもまっすぐに生きていますね。ちょっと感動的でした。それに、終盤、佐脇がじわじわと追い詰められていく様子も怖かったです。

手記の謎を探る松嶋もまた、何者かによって追い詰められていきます。学会誌に発表した後、「手記」が偽者であることが発覚。「手記」を持ち込んだ人とも連絡がとれなくなります。しかし、「手記」の内容を裏付けるような関係者は次々に現れ、手記の内容は本物らしいことがわかります。それでは、誰が何のために、松嶋に偽の手記をつかませ、松嶋を破滅させようとしたのか・・・二転三転する展開に、はらはらです。

そして、結末。

とうとう明らかになった「黒幕」の、純粋な悪意、その残酷さと理不尽さには、恐ろしいものがありました。怖いなあ〜。

そして・・・しまった・・・。これは感動本だったか・・・。

わたしったら、勝手に最後の最後まで大どんでん返しを警戒していて、泣きそびれてしまいました。最後まで来たら、警戒心は解いて、家族や夫婦の愛の物語として、素直に感動できるはずだったんですね。「慟哭」の著者ということで、やたら警戒してしまって、失敗でした。

素直な気持ちで読みましょう。とってもいい本です
| な行(貫井徳郎) | 07:26 | - | - |
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