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● バッテリー(1〜6) あさのあつこ
4774606367バッテリー〈6〉 教育画劇の創作文学
あさの あつこ 佐藤 真紀子
教育画劇 2005-01-07

by G-Tools

完結したので感想を・・・と思いつつ、少し時間がたってしまいました。

「バッテリー」というタイトルどおり、ピッチャー巧と、キャッチャー豪の物語です。小学6年生にして野球一筋の天才ピッチャー巧。その巧の球に魅せられ、小学校卒業を機にやめるつもりだった野球を、中学でも続けることにした豪。二人が自分と、あるいはお互いと、また教師や、家族や、仲間や、ライバルと、戦って戦って戦って、ピリピリキリキリと成長していく物語です。

でもこれは、野球小説ではありません。その戦いは、あくまでも人間同士の心理戦であって、野球ではないんです。作中で野球の試合とか、勝負は、ほとんどありません。爽やかな野球小説を期待すると裏切られます。

私はこの本が好きです。何か問題が起きたり、二人の気持ちがすれ違ったりするたびにハラハラ、ドキドキさせてもらいました。おじいちゃんの含蓄のある言葉にうならされ、巧の弟青波の存在に癒され、1つのエピソードが終わるたび、1冊読み終えるたび、何かを考えさせられたり、何かを懐かしく思い出したりするような、素敵な本でした。確かに、児童文学の棚に入れておくだけではもったいない、大人向けの文庫が出るのももっともだ、と思える、よみごたえのある本でした。




でも。 でも、って言っちゃっていいですか?

私はこのシリーズに、ちょっとした違和感をずっと感じてきました。それは、ノドにささった小骨みたいな感じで。かすかだけど、心地よくはない違和感。

わたしが知っている野球ものって、小説でもマンガでもノンフィクションでも、主役が一人か一チームである物語。あるいは、ピッチャーとバッターがライバルである物語、でした。でもこの「バッテリー」は、バッテリーを描いているんですよねー。そこが新鮮で、魅力的でもあるわけですが、そこら辺をうじうじ考えていたら、違和感の正体がわかった気がしました。

たぶん「著者が女性だから」だと思うんです。少女という人種は「2人の世界」ってやつが大好きです。恋愛に関してはもちろんですが、それ以外でも、友達同士でも、先生や先輩とでも、母娘でも、擬似恋愛的な「2人の世界」を作る事が嬉しくて仕方のない人種です。少年は人間関係の作り方が、少女とはどこか違うはずだし、野球は9人でするはずなのに、恋愛と同じ感覚でバッテリーを描いている…のが、ちょっと違和感。

女性が、いて欲しいなあと思うかっこいい少年、あるいは自分を仮託する事ができる、実際には存在し得ない理想の少年が、2人の世界を作って、そこでお互いによって、お互いのために煩悶している小説。こう書くとなんだかとっても…BLな感じでしょ?もちろん、「バッテリー」はBLじゃないんだけど、こう書くと、少なくともBLの親か祖父母くらいの位置にある世界にみえてくるでしょう?男の子や男の人が読んだら、物足りない部分があるんじゃないのかな。せめてもうちょっと試合をして、戦って負けたり、勝ち進んだりしてくれないと、ねえ。

普通に文学として読もうとしても。バッテリーの2人の性格は、自信過剰で傲岸不遜な天才、という設定の巧はもちろん、温厚なキャッチャーの豪も、12、3歳にしては老成しすぎていて、とても非現実的です。その非現実ぶりが、純文学によくある、いい意味でのご都合主義、ではなくて、単なる「妄想の産物」に見えてきてしまった事が…わたしのノドの小骨の正体だと思います。

だからといって、いささかも、この作品の私的な評価は下がるわけではありません。それに、巧の家族や、学校の先生など、BL的ではなくて魅力的なキャラクターもきちんと描きこまれているので、色んな読み方ができることはわかります。反抗期で、友達がとても大事な時期の子供が、巧と豪に共感していくのも想像がつきます。

それでもこの本が、「児童文学」「青春小説」「野球小説」というような爽やかな衣装をまとっている事には、個人的に違和感を覚えるのです。BLとして書かれたのであれば、「超名作!」って思ったかもしれない。でも、BLじゃないのに・・・どう見てもBLなんだもの。なんか変。そんな事を考えていたので、感想を書くのが遅れました。

まあ、ここだけの話にしておきましょう。

この本が好きなのは本当です。誰にでも、自信を持ってオススメできる健全で、読み応えのある、いい本だと思っています。
| あ行(あさのあつこ) | 23:35 | - | - |
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