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★ 東野圭吾 手紙 
4620106674手紙
東野 圭吾
毎日新聞社 2003-03

by G-Tools

昨日「幻夜」が良かったので、今日は「手紙」を再読しました。

この本のテーマは、犯罪加害者の家族に対する、差別問題です。本人は全然悪くないのに、そんな差別は、悪いことだ。ひどい・・・・・・なーんて。この本を読み始めたときには、素直に思っていたのですが。
「君が今受けている苦難もひっくるめて、君のお兄さんが犯した罪の刑なんだ」

「我々は君のことを差別しなきゃならないんだ。自分が罪を犯せば、家族をも苦しめる事になる−すべての犯罪者にそう思い知らせるためにもね」
こんな文章にでくわすと、反論できない気がしてきます。感情論としてだけでなく、善悪という基本的なところからして、事はそんなに単純ではなく、差別をなくすのは難しいんですね。自分の中に、そういった差別意識があるのかないのか。それすらも、この本を読んだら、わからなくなってしまいました。

だから、まずは読んでみてください、と言うしかないと思います。上記のような重いテーマのわりには、ストーリーは面白いし、読みやすいし、エンターテイメント性のある本で、読んで損はないと思いますから。少なくとも、私は、感動しました。泣けます。





さて、この先は、未読の人には読まないでいただきたいんですが。

わたしの読後直後の感想は、すごい!名作だ!感動だ!涙ぼろぼろだ!というものでした。手放しで、感動しました。たどりついた結末も、最大限に、前向きだったし。登場人物がみんな可哀想で、哀しくて、泣けました。

ただ、今回は再読ですし、この文を書くにあたって多少冷静になってます。

この小説は、少しあざといですよねー。読者がちょっと先を読めるように、あらかじめヒントをくれてて、そのヒントを読んだ読者が、主人公はこんな風に不幸になっちゃうんだろうなあ、と、思いつつ、必死でそうならないように、って祈ってると、やっぱり予想どうりの悪いほうに、ストーリーは進んでいく。そのたびに、主人公と一緒に、読者もがっかりして、主人公への同情心とか、共感が、ぐいぐいと強まるんです。その繰り返し。けして文章はうまくないんですが、つかみがうまい、っていうのかなあ。なんだか、著者の手の上で、読者が(私が)転がされている感じです。

あ、でも。ネット上で拾った、「弟のために犯罪を犯すような健気な兄なんていない」とか、「身分が違うなんていって、交際を反対されるなんて時代錯誤」とか、「悲劇を背負った女性とめぐり合うなんて有り得ない」とか、「身寄りがなくても、高校生を一人暮らしさせるわけがない」とか、この手の批判には、ノーノー、それは違うよ、と、言いたいです。

まず、いつの時代だろうと、「健気な兄」は、いるとこにはいます。同じように、「時代錯誤」な差別意識を持っている人も歴然といます。それから、明るく笑って生きている、超不幸な人も、腐るほどいます。そういう人に出会わない人は、よっぽど狭い世界で生きていて、非常に限られた、恵まれた人としか出会っていないのか、よほど表面的な付き合いしか、他人としていないのでしょう。実際、中学生・高校生の一人暮らしなんて、私はいっぱい知ってます。役所なんて、書類さえ整っていれば、文句は言いませんから。

まあ、でも、この小説はあまりにもベタすぎて、二度は泣けません。だから、難しい事を考えずに、一気に読んで、一気に感動して欲しい。そんな本です。

だから今回、この本が新聞連載だったんだと気がついた時、驚いたんです。書下ろしじゃないんだ!連載で、ここまで計算高く(いい意味でだよ)、完成度高く仕上げたんだ。東野圭吾先生、すごすぎます・・・・。
| は行(東野圭吾) | 23:31 | - | - |
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