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オール讀物3月号 直木賞選評の感想 「容疑者Xの献身」 東野圭吾 編
私はこれから、直木賞選考委員の方々の選評の、自分の感想を書きます。それにあたっては、選評の内容をばらしたり、最低限の引用をしたりしますが、それは「最低限」にとどめるつもりです。つまり、前後の文脈がないわけですから、内容が正確ではない可能性がありますし、書いた人の意図に沿わない引用をしているかもしれません。選評に興味がある方は、ちゃんと自分で読んでくださいね。

オール読物3月号は、選評以外にも、東野さんの素敵なエッセイや、京極夏彦さんとの爆笑対談など、東野ファンにはたまらない内容が盛りだくさんでオススメです。ついでに・・・と言ってはなんですが、石田衣良さんの「IWGP」の新作ものってました。ラッキー。

さて、「容疑者Xの献身」の直木賞選評ですが、まずは、北方健三さんの、この言葉から。

「今回は、受賞作一作に丸をつけて臨んだ。大方の選考委員の支持があり、準備した事の半分も喋る必要がなかったのが、燃え足りない気分であった。」北方さん

というわけで、選評全体を通して、受賞作「容疑者Xの献身」に対しては絶賛の嵐で、東野ファンにとっては読んでいて実に気分がいいです。どうやら敵は1人だったようですね。言わずと知れた、渡辺淳一さんです。まあ、今までと同じような事を言っておられますが、ポイントを引用すると、こんな感じ。

「問題は人物造形で、最後の謎解きにいたるにつれて、主人公の石神がいかにもつくりものじみて、リアリティーに欠ける。・・・人間を描くという姿勢はいささか安易で物足りない。」渡辺さん

うーん。そういう意見もあるんですね。でも、そもそも小説というのはつくりものです。リアリティーがない事が、欠点でしかないのなら、小説を読むのも書くのも、みんなでやめてしまいましょう。この点に関しては、林真理子さんと、北方健三さんの選評が、実に効果的な反論だと思いました。

「わが身を捨ててまで、愛するものを救おうとする、などという筋書きは所詮小説の世界だけのことかもしれない。けれどもその「所詮」の世界だからこそ、結末に驚愕させられ、読者は激しく心を揺さぶられるのである。小説だけの醍醐味を味わわせてもらった。」林さん

「純愛であれ、ストーカー的な偏執愛であれ、情念を結晶させ、小説でしか表現し得ない強さで、人間の根源を垣間見させた力量は、十二分に受賞に価すると私は確信した。」北方さん

渡辺淳一さん以外にも、五木寛之さんがこのように書いておられます。

「犯行を偽装するために殺されたホームレスの描きかたと、男たちを惹きつける何かを持った靖子という女のオーラが伝わってこないのと、その二点が私にとっては不満だった。」五木さん

この点では、私も賛成ですし、まあ普通に考えて、読者の大半が賛成なんじゃないかなあ。それでも五木さんは、この点を「いわば推理小説的手法で人間を描く場合の宿命なのかもしれない。」と書き、「推理小説として、ほとんど非の打ち所のない秀作である。」「他の作品を引き離しての、堂々の受賞であったことはまちがいない。」と、絶賛しておられます。

五木さんと、同じようなスタンスらしいのが、阿刀田高さんと、井上ひさしさん。

「あえて言えば、私はなぞ解きミステリーとしてのすばらしさだけでも受賞に価する、と考えた。東野さんはすでにいろいろなタイプの作品を書いて多くの読者を楽しませている作家である。受賞作がなぞ解きに強く傾いていても、この先はきっと多彩だ。人間を描き、愛を訴えるタイプの作品にも大いに期待が出来るだろう。」阿刀田さん

「他人の生命を踏みつけにしておいて愛もへったくれもないではないか・・・しかし、作者の力量は疑いもなく十分、そこで最後の一票を東野作品に投じた。」井上さん

平岩弓枝さん、津本陽さんのお二人は、文句なしの絶賛。宮城谷晶光さんは「あの日にドライブ」を推したそうですが、「容疑者Xの献身」に対しても、「他の候補作品は力感において東野氏のそれに及ばなかった」と、やはり絶賛です。

北方さんの言葉ではありませんが、ここまで絶賛されると、逆に盛り上がらないなあ。
| 雑文 | 21:45 | - | - |
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