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● 天使のナイフ 薬丸岳
4062130556天使のナイフ
薬丸 岳
講談社 2005-08

by G-Tools

少年犯罪をテーマにした、社会派推理小説。オススメ!

主人公の桧山は4年前、妻の祥子を殺されました。犯人は13歳の少年でした。それぞれ更生施設へ送られたり、保護観察処分になったりはしましたが、少年法に守られて3人ともすでに社会復帰しています。

その3人の少年のうちの1人が殺されたところから、事件は始まります。「国家が罰を与えないなら、自分の手で犯人を殺してやりたい」とマスコミに発言した事のある桧山は、警察からも、地域の人たちからも疑われることになります。

その後の展開は、本当に予想外です。3人の少年が犯罪を起こした真の理由や、少年たちが本当に反省していたのかが明らかになる、という意味では予想通りなのですが、それだけでは終りません。次から次へ事件が起き、次から次へ新しい事実が発覚する、ドラマティックな展開。退屈することなくぐいぐい読まされました。

登場人物が多く、様々な過去と現在が交錯する、この複雑なプロットを、よく組み立てたなあと、感心します。伏線があちこちに張り巡らされていて、すごいです。真相にも、あっとおどろかされました。サスペンス&ミステリーとしては、文句なしに面白かったです。新人さんとは思えません!

章タイトルが「罪」「更生」「罰」「告白」「贖罪」となっています。少年でありさえすれば「更生」が可能だというのは正しいのか。本当に「更生」するとはどういうことなのか。「更生」することと、「罰」を受けることは、どちらが優先されるべきなのか。失われた命は戻らないのに、どうやって「贖罪」をすれば良いのか。「少年犯罪」や「被害者の人権」という難しい問題に、かなりがんばって深く踏み込んだ、意欲作だったと思います。

ただ、そういうテーマのわりには、登場人物の背景や、それによって培われた人格や、職業選択が、あまりに型通りでご都合主義だったのが、不自然な気がしました。そのせいで、それぞれの内面に踏み込んでいるようで・・・たいして踏み込んでいなかったような・・・。その1点が惜しいです。

第51回江戸川乱歩賞受賞作





さて。この本は、はてなで日記をつけていたころに、「さまよう刃」東野圭吾 の感想をUPしたら、みなさんにオススメをいただいた本でした。

「さまよう刃」と「天使のナイフ」。確かに、少年犯罪を扱っているという点や、被害者の家族である中年男性が主人公であるところは、似ていますね。それに、タイトルも似てる。

でも、テーマと視点が全然違いますね。「さまよう刃」は、終始被害者の視点で話が進む、「国家が裁いてくれない場合、復讐や私刑は許されるのか」、というのがテーマの本でした。主人公の復讐は犯罪だけど、彼の傷の深さや、生身の人間らしさを感じることができて、切ない本でした。

「天使のナイフ」は被害者と加害者の双方の事情を説明する形になっていて、視点が動きます。テーマは、「加害者の更生と贖罪」です。主人公は最終的にはむしろ加害者側ですが、真面目すぎて、いい人すぎて、ちょっと印象が薄かった。

というわけで、比べなくてもいい本でした。良かった・・・。私は、東野ファンなので、あまりにも彼の作品に似ているものに出会うと、点が辛くなってしまうのです。
| や行(その他の作家) | 11:48 | - | - |
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