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■ 私という運命について 白石一文
4048736078私という運命について
白石 一文
角川書店 2005-04-26

by G-Tools

人は、ほんとうにみずからの意志で自分の人生を選び取ることができるのだろうか―。恋愛、仕事、結婚、出産、家族、死・・・大手企業に勤務するキャリア女性の29歳から40歳までの10年を、社会的な出来事を交えて描いています。

「運命」の不可思議とその意味が、繰り返し問いかけられます。「運命」については、私はアンチ運命論者なので、失笑ものの描写が多かったんですが、「人生」については、考えさせられる事が、たくさんある本でした。四つの章で構成されているのですが、それぞれに小道具として出てくる「手紙」が興味深く、先を読もうという気になります。
選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもないのです。未来など何一つ決まってはいません。
運命というのは、たとえ瞬時に察知したとしても受け入れるだけでは足りず、めぐり合ったそれを我が手に掴み取り、必死の思いで守り通してこそ初めて自らのものとなるのだ。
前半部分は、どこにでもいそうな独身OLの心情を描いています。「運命」という響きから想像するような、ドラマティックな展開はありません。恋愛や仕事に、何かを求めたり、何かを諦めたり、結婚に踏み切れなかったり、・・・本当にどこにでもあるような物語です。

働く女性の考え方も、気持ちも、行動も、びっくりするほどリアルなのに、「共感してください」オーラをまったく感じなくて、読みやすかったです。恋愛に対する姿勢や、恋人に対する心情も、男の人が書いたとは思えないくらい、上手い。というよりは、著者が男性(しかも大人)だからこそ、上手いのかもしれません。客観的で、抑えるところが抑えられた文章だったから、読みやすかったんだと思います。

著者の持論というか、いまどきの若者に対する苛立ちのような主張には、共感できる部分もありました。純平や、亜紀や、達哉に対してするお説教の中に、そして、康のセリフや、四つの手紙の中に。正論だと思うし、私も賛成です、と、言えます。

さて。後半に入ると、いきなり展開がドラマティックになってきます。朝の連続テレビ小説か、昼メロ的な波乱万丈です。そして、前半の上手さが嘘のように、この小説、腹立たしくなってくるんです。
男は否応なしに男同士の競争を強いられるが、女は女同士で争うこともないし、また男と争う必要もない。男と女はパートナーにはなり得ても、本来ライバルにはなり得ない。要するに女性はいかなる競争からも自立していられるのだ。そこが女性の最大の強みなのではなかろうか。
こんな文章は、女を敵に回すよねー。わかっていて書いたなら、勇気ある!

それに、主役の亜紀ですが、男性に好まれるタイプの、都合のいい女性に変わっていきます。っていうか、キャラクター設定的には、もともとそうだったんでしょうね。でも前半は「理性が勝ってしまって、恋にのめりこめない女」という側面が強調されていたので、目立ちませんでした。後半になって「運命」を掴んでから、「男に都合のいい女」の部分がどんどん目立ってきます。

美人で、スタイルが良くて、料理が上手で、貯金もしっかりしていて、バリバリ仕事をする才能もある。けれど恋人に頼まれたり、彼が病気になったりすれば、お金も仕事も生活も、すべてを捨てて彼を支える。愛する人の子供を産んで育てて、次の世代へ繋げていくことが、私の最大の幸せだ。

これが、後半の亜紀です。ここまで理想的ではなくても、こういう考えの女性もいるとは思います。でも、出てくる脇役の女性が、みんな結婚して子供を生む事が幸せだと亜紀に力説し、最後に亜紀もこの「運命」にたどりつくのですから、著者の頭の中、古いっ!と、思わずにはいられません。

それに後半に入ってすぐ、ラストまでのだいたいの展開が読めてしまうのもどうかと・・・。長い小説で、あと200ページはあるのに。

誉めてるんだか、けなしてるんだか、わからない感想文になってしまいましたが・・・。この本の私の評価は、全体として高いです。文章も構成も綺麗にまとまってて、読みやすいし、読み応えもある本でした。

でも、好きじゃない。
| さ行(その他の作家) | 22:05 | - | - |
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