山岳ミステリーの中編集。NHKのドラマ「氷壁」を見ていたら、タイトルだけは知っていたこの本を読んでみたくなりました。
・黒部の羆
大学の山岳サークルで、お互いをライバル視していた2人が遭難します。「羆」と呼ばれる元山岳警備隊の男性が、彼らを助けに向かいます。山男たちの信頼や、葛藤について、じっくり描かれています。この本の中で一番迫力のある作品。謎は何もないのに、ラストでどんでん返しが味わえます。びっくりです。
・灰色の北壁
世界のクライマーから「ホワイト・タワー」と呼ばれ、恐れられた山、カスール・ベーラ。死と背中合わせのその北壁の、単独登頂に成功した男がいました。しかし、彼が山頂で撮影した記録写真は合成ではないかという疑惑が、あるノンフィクション作品によって提示され、彼は糾弾されることになります。彼が沈黙を守り続ける理由とは?
お涙ちょうだいではないけれど、感動的な作品でした。
・雪の慰霊碑
息子を雪山で亡くした父親は、息子が命を落とした山に、死を覚悟して登ります。その真意は?彼の甥と、亡くなった息子の婚約者が登場します。それぞれの思いが切ないです。
ミステリー的には「灰色の北壁」がオススメ。ヒューマンドラマとしては「黒部の羆」がお気に入りです。