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● 夜のピクニック 恩田陸
4103971053夜のピクニック
恩田 陸
新潮社 2004-07-31

by G-Tools

★★★★☆

私は恩田陸さんのファンですし、この作品は本屋さん大賞受賞作品でもありますし、恩田陸作品のあちこちのランキング投票でも上位ですし、面白いのはわかっていました。読むのをずっと楽しみにしていました。

だからこそ、あえて、どこの書評も誰のブログも読まずに感想を書いてみます。

ある高校の「歩行祭」という行事を描いた、青春ロードノベルズです。80キロの距離をただひたすら歩きます。それぞれが、それぞれの思惑を抱えてこの行事に参加し、ちょっとした事件が起こったり、秘密が明らかになったり、誤解が解けて友情が深まったりします。

すごく良かった!期待を裏切らない面白さでした。読後感も爽やかで、素敵な本です。恋愛メインにならなかったところも、私好みでした。それに、小説として完成度も高かったと思う。恩田陸さんの作品にたびたび感じる、尻切れとんぼ感や、大風呂敷たためなかった感がなくて、きちんと仕上がった作品だと思いました。高校生活のたった一晩の行事を描いただけで、彼らの高校3年間を、また主役クラスの二人の人生を描ききったというのはすごい!実力発揮ですねー。

それから、私は主役の一人である貴子さんに、自分の性格が似ている気がして、そのあたりも面白かったです。感じたことが意識の表層に上ってきて、表情に表れるまでに時差があるんだよね。それでよく「やさしい」とか「寛大」とか誤解されるんだけど、実はちゃんと、怒ったり、憎んだりしてるんですよねー…いつも遅いんだけど(笑

気に入らない点をあえてあげるとすれば、杏奈さんはともかく、順弥くんはうざい。本の中で邪魔な存在でした。杏奈さんには、おまじないに何か他の手を使ってほしかったです。なーんて思っているのに、ラストシーンが順弥くんだし…。

でも、この本に、自分の高校生活を重ねられる人って、そんなにたくさんいるのかな?と、ちょっと疑問に思いました。私にとっては、これはテレビドラマのようにリアリティのない、爽やかすぎる、憧れではあっても、ありえない青春です。

地方の、共学の、トップクラスの学力の進学校に通った女性には、自分の事のように感じられるのかもしれない。でも、そうじゃない人にはどうなんだろう?とりあえず単純なところから言うと、高校生の男の子って、こんな感じじゃないよね…。女の子たちにわりとリアリティがあるのに、男の子のキャラクターがみんな「少女漫画に出てくる憧れの先輩」みたいで、なんだかなあ…と思っちゃいました。

それに、この本に出てくる高校生は、みんな経済的な余裕のある家に生まれて、刺激や危険の多い都会で育ったわけでもなくて、基本的に育ちのいい感じがする。みんな勉強ができて、大学を私立にするか国立にするかくらいしか、次の選択肢がない。なんだかんだ言っても「いい子」で、世間知らずで頭でっかち。家庭と学校と、狭い地元の町と、それだけで完結しているような、閉じられた高校生活のイメージを行間から感じました。それは少なくとも、私の高校生活とは、まったく重なりませんでした。

高校生活ってもっとバラバラしてた気がする。恋愛にかける人、バイトを優先する人、スポーツや音楽にかける人、受験生、それに人生投げちゃっている人(笑)と、本当にバラバラ。それでも、とりあえず同じ建物に押し込められた同士、仲良くしたり喧嘩したりはしてて…悪く言えば、すれていたし、良く言えば、大人だった。

あえて重ねるとしたら、中学時代と、大学の文学サークル内、かなあ。中学は公立だったのでみんな受験を意識していて、「その前に思い出を作りたい」という追われるような雰囲気があって、学校行事は大イベントでした。学校行事をどの友達とすごすか、が、大問題だったりもしました。「恋に恋を」してる人もいたし、修学旅行で誰かが告白するらしいなんて噂で盛り上がりました。それこそ、都市伝説だとばかり思っていた、「中絶費用をカンパする」というのが現実になったのも、中学時代です。

大学の文学サークルには、高校時代にトップクラスの進学校にいたような人たちが集まってきていたので、この作品のキャラクター達に、雰囲気がかぶる気がするのも、当然かと。(当然、そこでは、私は浮きまくってましたよ〜っ笑。)

というわけで、個人的な「ノスタルジー」とかはあんまり感じなかったんですけど、恩田さんらしいノスタルジックな雰囲気は好きだった。そして、ストーリーが面白かった。まあ、これだけ不満があるのに、★は1つしか減っていない、というあたりで、どんなに私がこの本を好きか、面白かったかがわかるだろう、というものです。っていうか、この文章の長さでわかりますよね。

遅ればせながら、エンターテイメントとしてはオススメです。
| あ行(恩田陸) | 11:49 | - | - |
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