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★ 白夜行 東野圭吾 [原作] 
4087744000白夜行
東野 圭吾
集英社 1999-08

by G-Tools

ネタバレあり!

ネタバレ警報を出すのが、ひじょーにむなしーのですが。

ドラマを見ている人だけでなく、CMや記者発表を見た人、もしかしたらポスターを見ただけの人も、予備知識がなく原作を読んだ人たちが得た感動や、「読書の喜び」のようなものは、味わえないと思います。

物語の第一章は、大阪で起きた質屋殺しです。笹垣刑事が主役の、警察小説のような雰囲気です。この段階では、読者には、誰が主役で、何が謎なのかすら、さだかではありません。もちろん数々の伏線ははられています。(特に鈴の音の伏線には、しびれました。)でも、伏線は、伏線のまま、物語は淡々と進んでいきます。

第二章では、質屋の息子・亮司のクラスメートが、暴行事件で警察に疑われるエピソードと、加害者として自殺した女性の娘・雪穂のクラスメートが暴行を受けたエピソードが語られます。この二つが結びついて、やっと読者は主役が誰であるかに気がつくことになります。

このあとは、亮司と雪穂の人生が、その時代背景と共に交互に描かれていきます。二人はそれぞれに、様々な犯罪を重ね、成功への階段を上っていくのですが、それは常に二人に関わった他者の視点で描かれます。二人に利用された被害者の視点で描かれることも多く、卑劣な犯罪が起こるたびに、読者は被害者たちに同情します。そして同時に、二人がなぜこんなにも犯罪を重ね続けるのか、という最大の謎に気がつくのです。

二人はなぜこんな人生を送っているのか。そもそも、二人の接点はどこにあったのか。二人はどの程度関わってきたのか。それを知りたい。そして、この二人の犯罪者が、迎える結末を知りたい。中盤で、質屋殺しの真相は、わかってしまいます。でもそのときには、読者の前に、さらに大きな謎が提示されている、というしかけです。

結局最後まで、二人が会うシーンはなく、二人が胸の内を語ることもありません。最後の章で語られる笹垣刑事の「推測」と、それを裏付けるいくつかの「証言」が、読者に与えられる答えのすべてです。だから、読者は、語られなかった部分を想像し、彼らについて思い巡らし、様々な自分だけの結論を抱く事になるのです。

二人の犯罪者の必死さに、哀愁を感じる人もいるでしょう。二人の過酷な運命に同情する人も、これを二人の純愛だと感じる人もいるでしょう。ある人は亮司にだけ同情し、雪穂を男を手玉にとる悪女だと感じるかもしれません。雪穂の強さとたくましさに憧れる人もいれば、雪穂のように愛されたいと思う人もいるでしょう。笹垣刑事の執念に打たれる人もいるでしょう。正義感の強い人は、許せない、と言うかもしれません。後味の悪いラストだ、という人もいれば、感動のラストだという人も、いるでしょう。

そんな風に、読んでいる最中は、謎解きに没頭できて、能動的な読書に夢中になれる。読み終えた後は、自分だけの感動を体験できる。それが「白夜行」という本で、そこが私は好きでした。



ドラマ化に対して、原作ファンの立場から、さんざん文句を言ったからには、原作の感想を書かなくちゃなあ、って、思ったんです。でも、今は、この本をオススメしません。読まないで欲しいです。ドラマの宣伝を見て、あるいはドラマを見て、良さそうだから原作も読もう、という人たちが出てくるのは・・・嫌です。(ドラマ化なんかしなくても、もう十分売れたし、売れてるし、これからも売れそうだしね・・・。)

ドラマ版「白夜行」は、時代や場所の設定がかなり違うものの、物語的には原作から大きくそれている、というわけではありません。ただ、アプローチが違いすぎるのです。「白夜行」が、亮司と雪穂の純愛物語であるというドラマ化による先入観は、この本を読む楽しみを、半分以上奪います。

純愛物語としては、そういう演出が徹底的に行われているドラマ版に、負けているように見えるのではないかと思います。「ドラマのほうがよかった」と、言われてしまいそうな気がして、それがとても悲しいのです。

まあ、例によって、東野さん本人は、頓着していないんでしょうけど・・・。

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| は行(東野圭吾) | 17:09 | - | - |
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