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● 魔王 伊坂幸太郎 
4062131463魔王
伊坂 幸太郎
講談社 2005-10-20

by G-Tools

ネタバレあり!

超能力兄弟が、ファシストと戦う!
じゃないな。
超能力兄弟が、ファシストと戦おうとする・・・。
ですね。あらすじとしてはそういう物語です。

あとがきで“ファシズム”や“政治”がテーマではない、と著者が書いているのですが、本当にその通りの本です。作中に、憲法改正・日米問題・歴史問題などが登場するだけで、それに対する伊坂さんなりの主張や、なんらかの答えが用意されているわけではありません。

しいて言えば、第1話「魔王」の中で、超能力兄弟の兄・安藤さんが繰り返す、「考えろ、考えろ」という言葉が、主張らしい主張でしょうか。安藤さんは、最近若者たちに人気の、小さな野党の党首・犬養と、ムッソリーニとの類似点に気がつきます。そして、犬養に簡単に踊らされていく大衆に危機感を覚え、犬養をとめなければならない、と、考えるようになります。

安藤さんは、政治家でも、社会運動家でもないので、本来なら犬養と対決しなければならない立場にはいません。ごく普通の、善良で不器用な若いサラリーマンです。ただ、いわゆる衆愚(この言葉は私は嫌いですが・・・)になりきれなかった事、そして、他人に自分の思ったとおりの言葉を言わせることができる「腹話術」という能力を持ってしまった事で、犬養に敵対する事になってしまいます。しかし、この「腹話術」は、30m以内の範囲にいる、見える人にしか使えないという、かなりしょぼいものなので・・・。

第2話の「呼吸」は、「魔王」の5年後の物語です。世間では憲法改正の国民投票が行われようとしており、安藤さんの弟の妻・詩織ちゃんの視点でその5年後の日本が描かれます。安藤さんの弟、潤也君にも超能力が現れています。こちらはさらにしょぼくて、なんと「じゃんけんに負けない能力」。正確には「十分の一以下の確率なら、賭けには負けない能力」なのですが、それでもやっぱり、小説の中の超能力としては、かなりしょぼいですよね。でも、潤也君もやはり衆愚にはなりきれず、そのしょぼい能力を利用して、何かをしようとするのです。

結局、目に見えない大きな力で歴史や、大衆が動いていくとき、市井の一個人に、いったい何が出来るのか、という事を考えさせられるストーリーになっています。「スカートを直す」のエピソードが印象的でした。
大きな洪水は止められなくても、でも、その中でも大事な事は忘れない
ラストが好きです。物足りないと思う人もいるような気がしますが、これ以上書けば、政治的な主張をしなければならなくなり、エンターテイメントとしてはダメになってしまうと思います。ここしかない、というピンポイントで、物語をしめた伊坂さん、うまい!

テンポのいい会話、しょぼすぎる超能力、ちらちらと登場する他の作品のエッセンス「グラスホッパー」「長身の調査員」など、クスッと笑える場面も満載で、いつもの伊坂節もちゃんと楽しめました。

こういう本が読みたかった。と、思った一冊。


http://books.yahoo.co.jp/interview/detail/31608523/01.html

http://shop.kodansha.jp/bc/magazines/hon/0511/index04.html
| あ行(伊坂幸太郎) | 00:09 | - | - |
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