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▲ 凍りのくじら 辻村深月 
4061824589凍りのくじら
辻村 深月
講談社 2005-11

by G-Tools

1・2作目よりミステリー部分が弱くなり、心理描写がメインになってきた3作目。タイトルと装丁はものすごく好きです。

辻村さんの作品の、主役をつとめる女の子を、好きになれたためしがありません。今までの2作は、それでも物語が面白かったので、まだ作品としては好きだったんだけど。今回は、「主人公嫌い度」が、「物語が上手い度」を超えてしまったようです。

とりあえず「物語が上手い度」のほうから書きますが、ドラえもんワールドの小道具との絡みは、すごく面白かったし、無理がなくて上手い!それだけでも読む価値はあります。それから、プライドを打ち砕かれて、壊れていく元カレの描写はリアルで、繊細で、すごかったです。それだけでサイコサスペンスとして本が一冊できそうです。

で、もうあとは、「主人公嫌い度」の話になってしまうのですが・・・。

理帆子は、「自分は頭が良くて、顔もいい。だから、どこにも居場所がない」と言い切り、周囲の人々を馬鹿にし、見下し、1人1人にレッテルをはって分類し、人と話すとき自覚的に手を抜く。基本的な性格がそんな風に鼻持ちならない上に、高校生にしては、精神年齢がびっくりするくらい低い。その事には無自覚。実際には、本人が言うほど賢くないし、大人でもないし、浮いてもない。ごく普通の、青臭い、自意識過剰の十代女子です。

こんなやつに共感する読者は、いったいどれくらいいるのかなあ・・・と、考えて、読書人間の中には意外とたくさんいそうな気もして、それがまた嫌でした。周囲との違和感に悩む、というのは、思春期にはありがちな事で、そんな経験はきっと誰にでもあります。「読書量」とか「頭の良さ」とかには、まったく関係ないんです。でも、読書人間は頭でっかちになりがちで、自分だけが特別なのだと思い込みやすい。

私も読書人間なので、彼女を嫌いなのは、たぶん近親憎悪ですね。私は、彼女ほど性格悪くない(と思いたい・・・)し、子供じゃなかった(と思いたい・・・)ですけど、本質的に同じタイプの若者だったのでしょう。もう、記憶が薄れるほど、昔のことになってしまいましたが。

理帆子は典型的なACで、過去も、現在も、親との縁が薄くて、本当にかわいそうです。こんな風に人と深く付き合うことを避けたがるのは、弱さの証拠だし、自分よりさらに「ダメ」人間の元彼から離れられないのは、自信がない証拠でしょう。だから、同情はできました。でも、共感はできないし、しつこいようだけど、嫌い(笑)。

まあ、この物語は、その辺の事に、彼女自身も気づいて変化する、成長ストーリーだったりもするので、10代独特の痛々しさを、きっちり描いた、という意味では上手いのかもしれません。だけど・・・やっぱり、何かが足りない。やたら心理描写が丁寧なのが、悪い意味でイタイ。

おばさんくさい感想ですが・・・著者もやはり、まだ若いのだな、と、思いました。そこが惜しいです。若い人には「傑作」と評価されるのかもしれません。それから、元カレの描写はすごいし、藤子不二雄レスペクト全開だし、理帆子のキャラは、男性の共感のほうを呼ぶような気がするので、この本は女子向けに見えて、男子受けのほうがいいかもしれません。

辻村さんは、もう少し年をとったら、心理描写メインの本で傑作を書いてくれそうな気がします。でも今はまだ、きちんとしたミステリーの世界にいたほうがいいと思います。
| た行(辻村深月) | 02:29 | - | - |
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