してないとは思うけど、一応、ネタバレ警報は出しておこう
あいかわらず石持さんは、閉鎖的な空間や、登場人物が限定的な作品が好きなんだなあ。この本では、7人の大学時代の旧友が、高級ペンションで同窓会を開きます。
リーダー格の伏見は、後輩の新山を、密室状態の客室で、事故を装って殺害します。集合時間になっても新山が起きてこないので、メンバーは心配しますが、鍵のかかった現場に侵入する手段はありません。扉を壊す、窓を割るなどの方法で、新山の状態を確認しようとするメンバーを、伏見はたくみに誘導して、死体の発見時間を遅らせようとします。
他の4人が伏見にいいようにコントロールされる中、一番年下の優佳だけが、わずかな手がかりから、伏見の計画をくずしていきます。犯人・伏見の視点で描かれるので、どのシーンにも、すごく緊張感がありました。
過去のいきさつ、2人の性格、賛否両論あるであろうラストシーン、すべてを含めて、伏見と優佳の頭脳戦・心理戦は、読み応えがありました。私はこのラストはけっこう好きです。ピタっと決まった感じがしました。女って恐いわ〜。(っていうか・・・伏見なら、メンバーに優佳が入っている事を知った時点で、計画を先送りにしそうですけどね。それだけ急いでたのかな。)
トリック的には、言いたい事がたくさんありますが、そこはつっこんじゃいけないんだろうなあ、という作品なので、まあいい事にします。ただ・・・。
動機は納得できません!弱すぎです。でも「ただなんとなく」殺人が起こる時代に、動機の弱さなんてミステリーの欠点ではないのかもしれませんね。だから、もうひと言つけたしますが、弱いだけじゃなくて、矛盾してる気がするんです。優佳いわく「高潔」で、こんなに正義感だか、人間愛だかに溢れちゃっている人物が、殺人?しかも後輩を?この矛盾は・・・納得できない。
という感じですが、かなり面白かったです。ミステリー好きなら、読んで損はないと思います。
館ミステリーの様式美を踏襲しているようで、していない設定。それに「扉を叩き壊すというのが、本格ミステリの世界にはよくあるシーンなので、そうでない話を書こうと思った」という、著者のことば。いわゆる「本格ミステリ」というジャンルに対する、チャレンジ精神というか、客観性というか、そのあたりが、東野圭吾さんっぽかったです。
2人を比べてしまえばもちろん、現時点では、東野さんの圧勝です。(同じ倒叙ミステリーの「容疑者Xの献身」とこの本を比べれば、一目瞭然です!あくまでも私見・・・つまりファンのひいき目ですが)でも、石持さんがいつか書くであろう傑作が、とても楽しみです。