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★ 容疑者Xの献身 東野圭吾 
4163238603容疑者Xの献身
東野 圭吾
文藝春秋 2005-08-25

by G-Tools

ネタバレあり!でもラストだけは言わない!

高校の数学教師・石神は、隣人・靖子に思いをよせています。毎日彼女の顔を見に、彼女の働くお弁当屋さんに、弁当を買いに行くのが日課です。ある夜、石神は、靖子と娘の美里が、やむを得ない事情で、靖子につきまとっていた別れた夫・富樫を殺害してしまったのを知り、彼女たちに協力を申し出ます。

タイトルと帯によると、純愛犯罪小説、といったところでしょうか。彼の深い思いには、感動より先に、驚愕で声もでない、といった感じでした。途中(ベンツを尾行するシーン)で一瞬、彼はこの先ストーカー化して、これをネタに靖子を支配しようとするんだろうか?と、私は疑ってしまったのですが、違いました。石神は、純粋でした(私は、不純でした(笑)。本当に、純愛でしたよ・・・。しかも相手が病気じゃないし死んでない!やられましたねー。

最後の50ページくらいは、本当に感動で、何度も読んでしまいました。ちなみに、BGMにレミオロメンの「粉雪」がかかってたんですよねー。泣ける・・・。

ただ、純粋とはいえ片想いなわけで。石神の気持ちは異常に重いし、特に女性は、キモい!って思うかも。しかもその対象である靖子がね・・・。同性に嫌われるタイプだと思います。だから、引いちゃう人は、引いちゃうかも。その辺で評価が分かれるかもしれません。

でも、それだけじゃなくて、トリッキーなミステリーとしてもきっちり楽しませてくれるんです。トリックであっと驚いたのなんて、久しぶりです。

草薙刑事と、湯川助教授が活躍する、探偵ガリレオのシリーズです。物理学の天才・湯川VS数学の天才・石神の思考の対決。倒叙式で、ストーリーの初めに、読者には殺人のシーンが見せられています。(刑事コロンボ&古畑任三郎形式ですね。)読者には、富樫を殺したのは靖子と美里、石神は、その事件の隠蔽工作をしている、と、わかってしまっているわけです。

この状況で東野さんが、どうやって読者をあっと驚かせてくれるのかなあ?と、読みながら、心配と期待が半々になったのですが(まあ、途中からはそんな事を考える余裕もないくらい、ストーリーに引き込まれてしまったのですが)。いやあ、そんな心配はまったく無用でした。そして、期待以上にあっと言わされました。なんと!そうきたか!東野さん、天才です。

そして。石神の行為を、賞賛するだけにとどめなかった所を、私は一番買います。「この世に無駄な歯車なんかないし、その使い道を決められるのは歯車自身だけ」ですよね。最近の純愛小説では、色んなパターンで、この部分を抜かす作品が多すぎる。私は、東野さんが、この部分をいつも絶対抜かさないから、好きです。この言葉を書かなかったら、東野さんじゃない。

でも、旧友であり、好敵手として認めた相手に対して、この言葉を言わざるを得なかった、湯川の気持ちを考えると・・・とても悲しい。草薙と湯川の関係も含めて、男の友情本としても、読み応えがありました。

今日は12月3日ですが、間違いなく、私の今月No.1本です。私の今年No.1ミステリーであることも間違いないです。それくらいは傑作でした。この本のおかげで、ようやく、賞レースも気になってきました。
| は行(東野圭吾) | 12:20 | - | - |
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