「すきま」にふと落ちたときにだけ会える女の子と、私の、友情の物語。過去を積み重ねていくのに、成長することのない少女の、「過去の思い出って淋しいのね」という言葉は印象的でした。帯に書かれるだけある!
「すきま」に落ちてしまう人の物語は、よくありますが、たいてい「すきま」に落ちていない現実の時間についても、多くが語られ、主人公が「すきま」で起きた出来事に、どんな影響を受けたか、という事がテーマになってくる。でも、この本は、そこにはほとんどページがさかれていない。「すきま」の世界の魅力、「すきま」で暮らす少女の魅力、それをメインに成立している本。説教くささが全くなくて、そこがとても素敵。
歩いていったほうが近い海に、街をぐるっとまわる鉄道に乗っていく、というエピソードが好き。それから「お皿」というキャラクターがすごく好きでした。お皿を糊付けする女の子のシーンも好きだなあ。
捨てられずに傷がふえていくことは、お皿に言わせると愛されたしるし、お皿の名誉なんですって
江國さんの作品では、恋愛小説も好きですが、一番好きなのは「ホテルカクタス」です。この本もその次ぐらいに好きかも。