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● 魂萌え! 桐野夏生 
4620106909魂萌え !
桐野 夏生
毎日新聞社 2005-04-21

by G-Tools

関口敏子、59歳、専業主婦。夫婦2人で建てた家もある。貯金もある。年金ももらえる。贅沢さえしなければ、夫と2人で平穏な老後を送れると思っていた。でも、夫が心臓麻痺で急死し、彼女は突然世間の荒波に放り出される事になる・・・。

8年ぶりにあらわれた息子・彰之は、アメリカで事業に失敗し、妻子と共に敏子の家に転がり込もうと、強引に同居を迫る。これからの敏子の生活に必要な貯金も、遺産として分割するように要求する。この彰之というどうしようもない男の身勝手さには、読んでいて本当に腹が立った。娘・美保は、彰之よりは少しまし。でも、自己中心的なところは変わらない。兄への反感と、自分の将来のために、父親の財産を狙う。

思いもよらなかった相続をめぐる争いに戸惑うばかりの敏子に、追い討ちをかけるように、生前の夫の10年にわたる不倫という事実が発覚する。ただの浮気ではない。夫は500万円を出資して、彼女と共に蕎麦屋を営み、彼女の家族とも親しく交流していたのだ。

敏子が頼ろうとする、古くからの女友達も、夫の死後知り合った人たちも、それぞれに自分の事で手一杯で、親身に敏子に寄り添うものなどいない(あたりまえだ)。女友達それぞれの描写が興味深い。何歳になっても、女の友情って、やっぱりちょっと複雑。騙されたり、裏切られたり、人の本性を知ったり、そんな事を繰り返して、敏子は変わり始める。

強く、たくましく変わっていく、敏子の再生の物語。前半は、世間知らずで、流されたり騙されたりするばかりの敏子に、腹が立って仕方なかった。どうしてそこで黙る!どうしてそこで金を払う!って感じで。でも、後半の彼女は、彼女なりに、かっこよく見えてきた。私には夫はいないし、敏子よりだいぶ若い。だから、この本の真髄を理解したとは言えないだろう。でも世間と老いと孤独に立ち向かい、前向きに生きようとする、最後の敏子の姿は、とても素敵だと思う。こんなに後味のいい桐野作品が読めるとは思わなかった。

でも・・・敏子は恵まれてるよねー。まず家があるし、かなり貯金があるってだけで恵まれてる。親とか、舅・姑などの、面倒を見なくてもいいってのも大きい。勝手な子供たちは「もう大人なんだから」と突き放せても、介護の必要な年寄りがいたら、魂萌え!なんて言ってられないもんね〜。

(よく考えたら、うちの親はもうあと数年で、敏子の年になるんだよなあ。常々思っていることだが、二人揃って長生きして欲しい。片方だけ残されたら本当にかわいそうだ。うーん。母親が残った場合は、敏子のように、第二の人生をたくましく生きてくれそうな気がする。父親が残った場合のほうが心配だなあ。さいわい我が家には、相続問題はありえないので、それだけは安心だけど。)

| か行(桐野夏生) | 09:40 | - | - |
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