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★ ベルカ、吠えないのか? 古川日出男 
4163239103ベルカ、吠えないのか?
古川 日出男
文藝春秋 2005-04-22

by G-Tools

戦争の世紀であった20世紀を、撤退する日本軍に置き去りにされた、4頭の軍用犬からはじまる、「犬の歴史」として描いてしまった作品。この発想がすでにただものではありません。開き直りとも思えるこんな言葉から、この小説ははじまります。
これはフィクションだってあなたたちは言うだろう。
おれもそれは認めるだろう。でも、あなたたち、
この世にフィクション以外の何があると思ってるんだ?
第二次大戦・米ソの対立・朝鮮戦争・東西冷戦・ベトナム戦争・アフガニスタン侵攻・そしてソ連崩壊。4頭の軍用犬の子孫は、世界中に広まり、戦いの中で、数奇な運命をたどります。国同士の大きな戦争だけでなく、マフィアの抗争や、革命にも利用されます。

犬たちに「お前」と呼びかけて進む二人称の文章が、硬質で、突き放した印象を与えつつ、現在形や進行形を多用して臨場感を出す。計算されつくした独特の文体が、この一歩間違えればキワモノになってしまう発想を、直木賞候補にまでしたんだと思います。

とにかく、表紙が恐い。そして、この表紙は、いい!この本は、犬を、人間に忠実で、利用されるだけの動物としては、描いていないのです。使命感や、独自の矜持や理念を持った、高貴な生き物として描いています。たくさんの犬たちが、人間同士の醜い争いの中で死んでいきますが、「泣かせよう」的な部分は、まったくありません。あくまでも硬くて、骨太で、かっこいい小説です。

・・・と、言いましたが、ユーモラスな部分もあります。表現がユーモラスとかいう細かい部分だけでなく、「動物の本能」として描かれているものが、とっても人間らしい、情緒とか倫理の問題だったりするので笑えるんです。犬という動物に対して、こういう幻想を持つという手があったか!と、思いました。日ごろ、かわいいペット(しかも猫に比べると、人なつこくて従順なイメージだし)としてしか犬を見ていないので、新鮮でした。

面白い?と聞かれると、ちょっと困ります。私は面白かったけど・・・現代史が嫌いな人には、オススメできません。超個性的な価値観を持つ先生から、世界史の授業を受けているような気分になる本でしたし、予備知識がないと頭が痛くなると思うから。
| は行(古川日出男) | 01:22 | - | - |
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