CATEGORIES
LINKS
<< ■ グラスホッパー 伊坂幸太郎  | main | ロスト・メビウス 上遠野浩平 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
■ いつかパラソルの下で 森絵都 
4048735896いつかパラソルの下で
森 絵都
角川書店 2005-04-26

by G-Tools

本人は大真面目なんだけど、傍から見るとそこがどうにもこうにも面白い。最初は微笑ましいという程度なんだけど、何度も「クスッ」を繰り返しているうちに、腹を抱えて大笑いしたくなってしまう。でも、本人は大真面目だし、何を笑われているかもわからない。非常に愛すべき人物なので、周りも一生懸命笑うのを我慢する。でも、我慢すれば我慢するほど、おかしい。

この本は、私にとっては、そういう本でした。そういう性格の登場人物がいるということではありません。この本が、そういう性格の本だったんです。人に性格があるように、本にも性格ってありますよね。

いえ、全然、コメディではないんですよ。文学です。真面目な本なんです。

病的なまでに潔癖で厳格な父親に育てられた3人の兄妹は、その父の死後、父親の浮気という意外な事実を知ることになります。母親はすっかり元気をなくします。3人の兄妹は、父親の真実や過去を理解しようと、調査を始めます。家族愛、兄弟愛、恋愛、その中での価値観のすれ違い、生と死、人生、過去、トラウマ、などなどなど、真面目なテーマのてんこもりで、考えさせられたり、感動したりする本です。

でも、なんでかなあ。私は、かなり色んなところで笑わせてもらいました。主人公の長女・野々ちゃんは能天気なふりをして、かなり悩み多き人。現実逃避体質なんだけど、優柔不断な性格ゆえに、いつも逃げられない。だから彼女の独白はかなり面白かったです。精神年齢が実年齢に追いついていないというか、どこか地に足のつかない3兄妹の会話にも笑ってしまった。彼らの、周囲の人たちや、親戚とのぎこちない交流も笑えるし、色んなところで、どうでもいいディティールが笑いを誘う。

これは、作者、天然かな?確信犯かな?後者だといいなあ。プロの作家さんが、重いテーマをすんなり読めるように、作品の雰囲気を壊さないギリギリのところまで笑わせてくれた結果、ものすごいバランスで、この素敵な本ができた。そうだといいなあ。

正直なところ、野々ちゃんの恋愛に関しては、結末が不満です。できれば自立するなり、できなければ新しい恋人の家に転がり込むなりして欲しかった。単なる棚ボタのハッピーエンドで、あまりにもご都合主義で・・・最後の最後でさめました。お兄ちゃんに関しては、とっても素直に祝福できたんだけど。できちゃった婚なんて、らしくていい!

まあ、とにかく、お母さんが立ち直って良かったし、3兄妹も、やっとまっとうに人生と取り組みはじめた感じがして、読後感は良かったです。

児童文学の森絵都さんを好きな方には、前半の重さや、セックスシーンが受け入れられないような気もします。私もああいうどろどろ、特に好きじゃないけど、「大人の本」として頑張ってる感じが出ていて、微笑ましい感じがしました。児童文学でも、大人向けでも、森さんは森さん。家族との快適な距離を探ったり、自立を目指したり、扱っているテーマは同じだと思いました。
| ま行(森絵都) | 23:22 | - | - |
スポンサーサイト
| - | 23:22 | - | - |