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● 死神の精度 伊坂幸太郎 
4163239804死神の精度
伊坂 幸太郎
文藝春秋 2005-06-28

by G-Tools

連作短編集。読みやすいけれど、軽い本ではありません。なにせテーマは「死」で、主人公は「死神」ですから。

今回もキャラクターが面白いです。主役の死神・千葉は黒いマントも着ていないし、鎌も持っていません。ごく普通の人間の姿になりすまし、音楽をこよなく愛しています。人間界の言葉や常識にうとくて、人と会話がかみ合わず「おもしろい人」だと思われてしまいます。(このかみ合わない会話がまた面白い!)本人としては真面目なつもりなので、「おもしろい」と言われると、不本意だ、と、思います。千葉は、そんな“天然”系の憎めない死神なんです。

死神の仕事は、不慮の事故などで死ぬかもしれない人に関して、死ぬべきか、生かすべきか、「可」「見送り」の書類を出し、「可」を出した場合には、相手の死を見届けるというものです。第1話「死神の精度」で、主人公の死神・千葉は、1人の女性の死に関して、彼女の歌手としての将来性にかけて「見送り」の書類を出します。この段階で思ったんです。ずっとこんな風に、死神が人間に同情して、「見送り」にする、単なるハートウォーミング小説だったら、嫌だな、って。

でも、そうはなりませんでした。第2話目から第5話目までで、やはり彼は死神であって、人間とは違う視点を持っている事が描かれていきます。人間と同じ感覚や感情はもたないし、生死に対する考えも根本的に違う。まじめに仕事をして、容赦なく「可」の書類を書き、死を見届けて去っていく。すべての事態を淡々と見つめ、淡々と受け止め、音楽だけを愛して生きています。

でも。それでも。はっきりと書かれてはいないけれど、彼は人間が心の底では好きなんだと思います。最終的には死なせる事になる相手に対してでも、彼の視線が温かいような気がするのです。音楽を愛する人に、悪い人はいない・・・というのは、私の偏見でしょうけれど。だから、読みやすくて、素敵な本でした。

最終話「死神対老女」が一番好きです。やられましたねー。本当によかった。(次に好きなのは、第四話「恋愛と死神」)伊坂さんらしさが出ていました。あー!つながった!っていう、あの快感です。でも、これまでのほかの作品に比べると、そのあたりはちょっと弱いかな〜。

ファンの方たちは、この本でぜひ直木賞を!と、思っておられるようですね。私もその可能性は否定しません。伊坂さんはいい加減に直木賞を取ってもいい頃です。でも、作品だけを比べれば・・・。「チルドレン」で取れなくて、これで取れちゃったら、納得できないかも、というのが本心。
| あ行(伊坂幸太郎) | 03:17 | - | - |
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